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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
閑話 年末のささやかなお祝い

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02 戻ってきた場所で、メグちゃんは少し大人になって

本日は三話同時投降です。

当話はその二話目。


ケイト視点に変わります。

 私は料理を手伝うのを諦めて、小父さんたちを手伝うためについて行く。


「ケイトさんは、戻ってきたばかりだろう?

 体力もまだ戻ってないはずだし、ここで休んでいていいんだぞ」


 グンターさんがそう言った。


「監禁されていた間も、できるだけ体力を落とさないように、部屋の中で運動はしていたんです。

 だから、じっとしていると落ち着かなくて……。

 だから最初、メグちゃん達を手伝おうとしたんです」


「数人分ならともかく、パーティー料理を短時間でつくるとなったら厨房は忙しいだろう。

 忙しくて話をする余裕は余り無いかもしれんな」


 グンターさんの答えに納得した。

 そうだったのね。さっきは、てっきり料理はできないから、邪険にされたのかと……。

 でも足手まといになるのは間違いなさそう。


「それなら、こっちを手伝ってください。

 ……無理はしないでくださいね。疲れたら、すぐ椅子に座って」


 少し頬を赤らめ、若干視線を私から逸らしながらセインさんが言う。

 本当に、この人は分かりやすい。


「それじゃあ、まず人数を確認しようか。

 食事をしない人もいるとしても、ニシュとクロの分は必要だろう。

 メグの料理を食べられるとなれば、セルジオも来るだろうし……」


「ざっと十五人は下らないな」


 グンターさんとライトさんの言葉に、私も頭の中でざっと数えてみる。

 メグちゃんと小父さんたち、ニシュ、私とマルヴィラ、モートンさんとカービーさんで九人。

 そこに共和国側の人たちを足せば、確かにそのくらいになる。


 3区を脱出してから、ずいぶん一気にメグちゃんの交友関係が広がったものだ。


「多めに見積もって二十人として、この広さじゃ立食になるわね。

 中央に大きなテーブルを一つ置くより、二つに分けた方が取りやすいかも」


「ああ、そうだな。椅子は壁際に並べよう」


 四人で相談しながら、机と椅子の配置を決めていく。


「他には……クロス代わりになるものはありますか?」


 パーティーといえば定番のフライとか脂っぽいものも、マルヴィラは作って出してくるだろう。

 何もなしに並べれば、後で机がベタベタになってしまう。


「このサイズのテーブルクロスは無いな……ブルーシートならあるが、さすがにパーティーの雰囲気じゃなくなるな」


「そもそも、カトラリーが人数分足りないぞ」


「俺がアイーシャさんに聞いてくる」


「儂はメグたちに、部屋の配置を伝えてくる。それで料理の出し方も考えやすくなるだろう」


 ライトさんとグンターさんが部屋を出て行く。

 残されたのは、私とセインさん。


 一瞬、静寂が落ちる。


「……ケイトさん」


 呼ばれて振り向く。


「本当に、無事でよかったです」


「……はい。いろんな人に助けてもらいました」


 それ以上、言葉が続かない。

 彼の視線に含まれるものを、はっきり意識してしまって、胸の奥が少しだけざわつく。


 私たちはそれ以上何も言わず、机と椅子を動かし始めた。


「……グンターさんたち、遅いですね」


「ええ。もう戻ってきてもおかしくない頃ですが……」



 ふと、扉の方を見ると、わずかに隙間が空いている。

 嫌な予感がして、足音を殺して近づいた。


「うわっ!」


「おおっ!?」


 扉を開けた瞬間、二人分の重みがもたれかかってきた。


「グンターさん、ライトさん……何をしてるんですか」


 どう見ても、覗いていたとしか思えない。


 ―——まだ、そんな関係じゃないのに。


 ……いや、だから「まだ」って何よ。



「……すまん。悪かった」


「出来心だ」


 二人とも、ばつが悪そうに視線を逸らす。


「いいですけど……次やったら、メグちゃんとマルヴィラさんに言いますから」


「うっ……それだけは勘弁してくれ」


 渋々立ち上がる二人を見送る。


 グンターさんは観念したように立ち上がり、椅子を運び始めた。


「……マルヴィラさんに知られたら、余計に面白がられそうだな」


 ライトさんの言葉に、そうなった時に彼女にからかわれる未来が目に浮かぶ。


「ライトさん?」


「わ、悪かったって。そんな目で睨まないでくれ……美人に睨まれるのは怖い……」


 ライトさんも観念したのか、慌てて作業に戻っていった。


 ***


 やがてテーブルクロスやカトラリーが届けられて。

 会場の準備が整い、皆を呼びに行く。


 通路の先から、アイーシャさんに先導されて数人がやってきた。

 その中には、アンドロイドに車椅子を押された年配の男性もいる。


 皆を会議室へ案内する。


「あなたが、ケイトさんね」


 私に真っ直ぐな目線で声をかけてきたのは、背の高い女性――先ほどのアイーシャさんだった。


「改めて名乗るわ。ラミレス共和国第一警護隊、アイーシャ・オイバレスよ。

 いろいろあって、メグちゃんたちの世話役をしているの」


「帝国のクーロイ星系で資源回収会社をしている、ケイト・エインズフェローです」


 互いに軽く握手を交わす。


「ここではケイトさんと呼ばせてもらうわね。

 私のことはアイーシャでいいわ。

 メグちゃんから、貴女の話はよく聞いているわ。無事で本当によかった」


「こちらこそ……メグちゃんを助けてくれて、ありがとうございます」


 その横から、一人の男性が進み出てきた。


「私はクレト。アイーシャの弟だ」


 彼女よりさらに背の高い男性だった。

 顔立ちは確かにアイーシャさんと似ている。

 けれど、声は口ではない少し違う場所から聞こえた。


「ああ、これは……」


 彼は、首から下げている装置を指さす。


「以前、訓練中の事故で喉をやられてしまいましてね。

 今は脳波で言葉を変換して、ここから声がでています」


 成程、と頷いて、クレトさんとも握手を交わす。


 さらに、その後ろにはもう一人――アンドロイドに押される車椅子に座る、年配の男性がいた。


「私はドクと名乗っている。長く共和国で技術顧問をしていてね」


 彼と目線を合わせたときに、彼の右脚が義足であることに気づく。


「ああ、これか。昔、ちょっとな」


 私の視線に気づいて、ドクは”気にするな”とでも言う様に、軽く笑った。


「マーガレットさんには、私達も世話になっています」

 

 アンドロイドのクロが、ドクの言葉を補足する。


 クロの姿を見ていると、ふとニシュの姿が頭を過ぎる。

 男性型のクロと、女性型のニシュ……姿形が、どこか似ているように感じた。


 もしかしてクロとニシュって……類似機種なのかしら。

 だとしたら、ドクは――


「私は、共和国の技術顧問だよ。

 ……今は、そういうことにしておいてくれ」


 私の考えを読んだのか。ドクはそう付け加えた。


 深く詮索すべきではないのだと、直感的に理解する。



 深みに陥りかけた思考を、明るい声が遮った。


「さあ、料理を持ってきたよ!」


 その声と共に、メグちゃんとカービーさんがワゴンを押して戻ってきた。


 どうやら、宴の始まりのようだ。


 ――マルヴィラが戻ってこないのは、きっとまだ料理を作っているからだろう。



 ともあれ、メグちゃん達の所に無事に戻って来れた。

 それを皆でお祝いするのだというこの宴に、私は胸の奥の静かな高揚を感じた。



 それにしても――メグちゃんって、こんなにたくさんの人と繋がれるようになっているのね。

 あの子の成長を、まざまざと見せられているようで……なんだか嬉しい。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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