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ジャンク屋メグの紡ぎ歌  作者: 六人部彰彦
閑話 年末のささやかなお祝い

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01 年末のお祝いを、今年はおもてなしに

本日は三話同時投降です。

当話はその一話目。


メグ視点です。タイミングは20-21の後から。


体調不良で、一日だけ間に合わなかった……。

 ひとしきり再会を喜び合った後、私は小父さんに訊いた。


「それじゃあ、共和国の艦の方に戻ろうよ」


「トッド侯爵からは、今日はこっちでゆっくりしてくれと言われているんだが」


 グンター小父さんがそう答えて、少し首を傾げる。


「だって年末だよ? アレをしないと」


「そうか、アレか……そういや、そうだったな」


 グンター小父さんは納得したように頷き、セイン小父さんやライト小父さんと顔を見合わせた。


「ランドルさんとナナさんは?」


「こっちの船にいるらしい。呼んでもらうか?」


 ライト小父さんが居場所を知ってる様子。


「うん、お願い」


「じゃあ、俺が伝えてくる」


 ライト小父さんが部屋の隅にある端末へ向かう。


「メグちゃん、アレって何のこと?」


 マルヴィラさんが首をかしげて尋ねてくる。


「毎年、今年も無事に過ごせたねっていうお祝いを、年末にしてるの。

 折角だから、今年はみんなで一緒にやりたいなって思って」


「3区での生活は毎日が大変で、しかも季節の移ろいが分からない場所だったからね。

 何もしないと、時間の感覚が薄れてしまうんだ。

 だから、節目としてこういう集まりを大事にしていたんだよ」


 私の言葉を、セイン小父さんが補ってくれる。


「今年は本当にいろんなことがあったけど、こうして皆がそろったし。

 せっかくだから、ちゃんとお祝いしたいの」


「そういうことなら、ぜひ私たちも参加させてちょうだい」


 そう言いながら、ナナさんが部屋に入ってきた。ランドルさんも一緒だ。


「ナタリーさん……メグちゃんのお祖母様は?」


 ケイトお姉さんが尋ねる。


「お祖母様は、向こう――歌謡祭の会場で、私が不在の間の対応をしてくれてるの。

 だから今日は来られないけど、落ち着いたらまた会う予定」


 歌謡祭で注目を集めた後、私が行方不明になったこと。

 その後始末と、私に関するマスコミ対応のために、祖母はしばらく商都に残ることになっていた。

 それは、作戦が始まる前から決まっていたことだ。


「そうなのね……。

 私もあの方にはとてもお世話になったから、またご挨拶しないと」


「3区の会がなくなったわけでも、ケイトがあそこを辞めたわけでもないんだから。

 また近いうちに会えるわよ」


 少し寂しそうなケイトお姉さんを、マルヴィラお姉さんがやさしく諭す。


 そのとき、部屋の通信端末が鳴った。


 ライト小父さんが応対し、少ししてこちらを振り返る。


「メグ。スクリーンに出すぞ。トッド侯爵からだ」


 壁面に映像が投影され、ケイトお姉さんとマルヴィラお姉さんが思わず姿勢を正す。


「やあ、マーガレット君たち。

 共和国の船に戻りたいと聞いたが、今日はここに泊まっても構わないんだぞ。

 どうしてもというなら、送り届けるが」


 画面越しに、トッド侯爵が穏やかに語りかけてくる。


「今日は年末ですし、3区で過ごしていた時みたいに、無事を祝う会を開きたくて。

 特にお世話になった共和国の皆さんとも一緒にできたらと思っています」


「……歌謡祭の後で疲れているだろうから、ゆっくり休んでもらえればと思っていたが。

 まあ、帝室側の干渉も、今はそれほどないようだしな。

 君たちが望むなら向こうの船へ送ろう。共和国側への連絡もこちらでしておく」


「お願いします」


 私の言葉に、トッド侯爵は小さく頷いた。


「分かった。すぐ手配しよう。迎えを向かわせる」


 そう言って、通信は切れた。



 しばらくして、部屋の扉がノックされる。


 開けると、そこに立っていたのは見知った顔だった。


「ファレルさん! こっちに来てたんですか」


「やあ、久しぶりだね。――“ミゲーラ”さん」


 そう言って、ファレルさんは軽くウインクする。

 彼が私を呼ぶ呼び名は、あの視察の時に使っていた偽名だ。


「私が案内するよ。共和国の人たちとも顔なじみだしね。

 向こうに行くのは、ここにいる全員かい?」


 私が振り返ると、部屋にいる全員が頷いた。


「そうですね。全員で行きます」


「分かった。じゃあ、ついてきて」


 ファレルさんを先頭に、私たちは部屋を出た。


「ねえ、メグちゃん。あの方はどなた?」


 歩きながら、ケイトお姉さんが小声で尋ねてくる。


「あの人は、トッド侯爵の次男のファレル・トッドさん。

 共和国の船でクセナキス星系に来た時、いろいろお世話になったの」


 私の答えに、ケイトお姉さんは目を見開いた。


「共和国との窓口役を父に任されていましてね。

 その時に、何度かお話しする機会があったんです」


 前を歩きながら、ファレルさんが振り返って言う。


「今まで、貴族の方とお会いする機会なんてなかったのに……。

 今年だけで、何人の方に会ったことか」


 ケイトお姉さんが小さく呟いたが、声は廊下に吸い込まれていった。


「ファレルさんにも色々お世話になったし、せっかくだから一緒に参加する?」


「ペドロ議長と少し話があってね。その後で顔を出せそうなら、ぜひ」


 そう言って、彼は少し考えるような表情を見せた。


 ファレルさんの先導で船の格納庫へと降りる。

 そこには、以前共和国のコロニーで乗ったものとよく似た、比較的大型の車両が待機していた。

 運転席には既に、軍服姿の人物が座っている。


 全員が乗り込むと、車は静かに発進し、格納庫のハッチを抜けて、別の場所に停泊している共和国の船へと向かった。



 共和国の船に到着してハッチを上がると、そこにはセルジオさんとアイちゃんの姿があった。


「ファレルさんは、私がご案内します。

 マーガレットさん達は、アイーシャさんが」


 車を降りた私たちに、セルジオさんがそう説明する。

 どうやら事前に連絡が入っていたらしく、二人とも待っていてくれたようだ。


 アイちゃんの案内で、あの場所――予備格納庫へと向かう。


 かつての管理エリアはもうなく、その代わりに、あの船より一回り小さな区画が用意されていた。


 中へ足を踏み入れると――


「わあ……結構、再現されてるのね」


 ナナさんが思わず声を漏らす。


「あの船はリオンさんに引き渡すことになっちゃったけど。

 やっぱり、あの家がないと落ち着かなくて。

 少し無理を言って、居住区画の雰囲気だけ再現してもらったの」


 調理スペースは綺麗に整えられ、コックピットや重力訓練室、ラジオ放送設備は無いものの。

 あの管理エリアとほぼ同じ間取りと、生活感のある配置がなされている。


 正直なところ、かなり無理を言った自覚はある。

 ペドロ議長も難色を示していたが、最終的にはファレルさんを通じてトッド侯爵が手配してくれたのだった。


「元の居住区画のほうは再現しなかったの?」


「確かに、あっちに居た時間のほうが長いんだけど……。

 でもなんだか、こっちの方が“家”って感じがして。落ち着くんだよ」


 マルヴィラお姉さんの問いに、そう答える。


「それじゃあ、私はここで」


 案内してくれたアイちゃんが、帰ろうとしたのを呼び止めた。


「待って。せっかくだから、アイちゃんも参加してよ。

 お世話になったし、みんなでお礼もしたいし。

 クレトさんやセルジオさんも、都合がつけば呼びたいな。

 体調が大丈夫なら、ドクも……それに、ペドロさんも」


「……分かったわ。私も部屋に戻るだけだったし。

 みんなに声をかけてみる。

 あ、チャロも呼んでいい?」


「あ、そうだ! チャロさんもぜひ!」


 私がそう言うと、アイちゃんは軽く手を振って、通信端末の方へ歩いていった。


「今年は、大人数になりそうだな」


 ライト小父さんがぽつりと言う。


「そうだね。それじゃあ、会議室を使おうか」


「十数人入るとなると、あそこしかないな。

 ……となると、今度は食べ物が足りないか?」


「だったら私が何か作るよ。小父さんたちは、場所の準備をお願い」


 セイン小父さんとグンター小父さんも交えて、自然と役割分担が決まっていく。


「これだけ人数が増えるなら、一人で作るのは大変でしょう。

 私も手伝うわ」


「私も」


 マルヴィラお姉さんとナナさんが、すぐに申し出てくれた。


「私も――」


「ケイトは座ってて」


 ケイトお姉さんが名乗り出たところを、マルヴィラお姉さんがやさしく制する。


「お姉さんは、きっと疲れてるから。

 それに、今日は無理しなくていいのよ」


「……わかった。どうせ、料理は戦力外だし」


 少し拗ねたように言って、ケイトお姉さんは小父さんたちの後についていった。


「やっぱり、疲れてるんじゃない?」


「料理しながらメグちゃんと話したかったんだと思うよ。

 でも、あの人数じゃ台所は大忙しだもの。

 あとで、ゆっくり話してあげて。今はちょっと余裕がなさそうだし」


「……うん、分かった」


 私はマルヴィラさんに頷いた。


 三人で台所へ向かい、まずはありったけの食材を並べる。


「メグちゃん。夜も遅くなるし、そんなにたくさん作らなくてもいい?」

「それとも、しっかりおもてなしする感じ?」


「お祝いだし、できるだけ出したいかな。

 食べきれなかったら真空保存できるし、材料も補充してくれるって言ってたから」


「了解。それじゃあ、献立を考えようか」


 煮込み料理は時間が足りない。

 その代わり、炒め物や揚げ物、さっぱりした副菜をいくつか作ることにした。




いつもお読み頂きありがとうございます。


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