20-22 密録されていた真相――暴かれる帝室の闇、観客の震撼
歌謡祭を観客席で見ていた、とある観客視点。
アングラサイトでは、出るんじゃないかって言われてたけど。
ホントに星姫ちゃんが来た!
いやあ、チケット頑張って取った甲斐があったわ。
途中途中で挟まれた映像。
そして演目が全て終わった後の、シークレットステージ。
そこで示されていたのは……星姫ちゃんの半生と、その生き様。
見捨てられたコロニーで生まれて。
ずっと、食糧も十分にない、死と隣り合わせの環境で。
3区から捨てられたゴミから、食糧と必需品を漁りながら生きて来た、星姫ちゃん。
3区を脱出する時のラジオ放送の内容から、『クーロイの反抗の象徴』として、祭り上げられていたみたいだけど。
星姫ちゃんの半生は、とてもそんな物じゃなかった。
ただ必死に、生きて来ただけ。
それだけで、生きてるだけで帝国に狙われて。
難を逃れてどこかへ逃げていた。
でも、星姫ちゃんは、帰って来たんだ。
今度は逃げるだけじゃなく、“帝室と戦うため”。
……帝室?
このダイダロス帝国の、一番偉い人と!?
最後の、星姫ちゃんの初めて聞く歌は……。
今までは、ただ偶然性の中で生きて来た彼女。
でもそれが、戦って自分の望む未来を手に入れる決意。
そんな、歌だった。
でも――帝室と戦うって、正気なの?
正直、そんなことを思ってた。
ところが、ステージが終わって、拍手の中。
突如、ホールに宇宙船がぶつかって来た。
なんで!?
軍は何をしてんの?
「やっぱり”クロップス宙賊団”を連れて来たのね、リオンさん……いえ、マクベス大佐と呼べばいいのかしら」
宇宙船から出て来た男に向かって、星姫ちゃんはそんなことを言っていた。
……ちょっと待って。“クロップス宙賊団”?
どこかで聞いたような。
そう思う間に、星姫ちゃんは天井から落ちて来た何かに抱えられ、ステージを出て行く。
宇宙船から出て来た男は、物凄いスピードでそれを追っていく。
「観客の皆さん!
ここは危ないので、スタッフの指示に従って避難をおねがいします!」
スタッフが何人も観客席にやってきて、観客を誘導して大ホールから連れ出していく。
建物の外には出ずに、別の小ホールに向けて誘導される。
その中で、歩きながら私は携帯端末を取り出し、クロップス宙賊団について調べる。
出て来たサイトの中から、情報が細かいと評判の所を選んで目を通す。
一昔前にあった、スパニダス星系の惨劇。
それを引き起こしたのが、クロップス宙賊団といわれているようだ。
ただ、その惨劇以降、幾つかの星系を襲った後、しばらくして姿を消した。
今に至るまで、行方がわかってない。
……ちょっと待って。理解が追い付かない。
星姫ちゃんは“帝室と戦う”って、言ってたよね。
そんな彼女を捕まえに来たのが、“クロップス宙賊団”。
ってことは――クロップス宙賊団は、帝室の差し金で動いてたって事なの?
えっと、そうすると――あのスパニダス星系の惨劇と言われていた大事件も、帝室の差し金で引き起こされたって、ことになる、わよね?
……マジなの!?
これは、拡散しないと。
個人の情報板を開いて、書き込もう。
『星姫ちゃんのステージ終了の時に、突っ込んできた宇宙船。
中から出て来た人に、リオン、あるいはマクベス大佐と、星姫ちゃんは呼んでた。
そして突入した彼等のことを“クロップス宙賊団”とも』
書き込むのは、事実だけ。
ちょっと調べただけの内容から思った憶測は、不確かだから書き込まない。
これなら何かあっても、私の責任にはならないと思う。
でも、内容的にはかなりインパクトがある。
あとは、これを見た人が勝手に調べて、拡散してくれるだろう。
誘導されて小ホールに入ると、既に人がごった返していた。
でも、その隅でスタッフはどうして、大きいスピーカーを用意してんの?
やがて、そのスピーカーから、音声が流れだす。
その衝撃的な内容に、小ホールは静まり返る。
『嬢ちゃん、なんで帝国に戻ってきた!
船も渡してもらったから、ちったあお前のことは信用してた。
なんでそれを裏切ったんだ!』
『貴方は裏工作なんてできなさそうだし、とりあえずの交渉相手としては信用してたわ。
もしあなたが全部采配をしていたんだったら、私が帝国に帰って来る必要もなかった。
本当の交渉相手があなただったら、ちゃんとお姉さんを帰してくれたでしょう』
女性の声は、明らかに先ほどの――星姫ちゃんの声だった。
これは、まさか……。
どこかで繰り広げられている、星姫ちゃんと、追手の男との、会話?
慌てて携帯端末を操作し、いま流れている音声を録音する。
もしかして、ここのスタッフ……。
この音声を私達に聞かせて。
現場の“生の声”を、拡散して欲しいってこと、なの?
『でも、実際に決めて貴方に指示をしていたのは……帝国皇帝よね。
あの皇帝の事が、私には到底信じられなかった。
だから私は、自分でお姉さんを取り返すために来たのよ!』
『なんだと!』
星姫ちゃんが戻って来たのは。
“お姉さん”と呼んでいる……恐らく人質に取られている人を、助けるため?
そして人質に取っているのが、皇帝の側。
『どうせあの皇帝は、約束なんて守るつもりなんてない。
最初からお姉さんを帰すつもりなんてなくて、17年前の証拠を回収したら、私達を消すつもりだったんでしょ!』
『俺は、そんなつもりは無かった!』
追手の男は、人質を取り戻したい星姫ちゃんと、直接交渉した人。
でも皇帝を信じられなかった星姫ちゃんが、何らかの形で追手の男を裏切った……のかな。
『じゃあ、あの皇帝が裏で私達とお姉さんを消して、後であなたに『約束は守った』って言ったら、あなたはどう思う?
貴方には確かめようがないから、この件は済んだ事にして忘れるだけだったでしょうよ!』
『それじゃあ、最初から俺をだますつもりだったのか!』
『そうよ。だってあなたとちゃんと交渉したところで、ケイトお姉さんを帰してくれないことは予想できたわ』
つまり今の皇帝は、そう言う人なんだ……。
そして、攫われているのは“ケイト”って人らしい。
なんかこの名前も、聞いたことあるわね。
調べてみると……クーロイに宇宙軍が突っ込んできたとき。
式典を取り仕切っていた『3区の会』の事務局長が、ケイト・エインズフェローという人。
……3区に捨てられたゴミから再利用可能品を回収する、回収業者の社長でもあるらしい。
これ、大当たりかな。
星姫ちゃんと繋がりがありそうな経歴だし。
こんな濃い情報が詰まった会話。
正直、聞いててしんどい。
『だいたい、クロップス宙賊団が起こした二十数年前の惨劇も、十七年前の3区コロニーの事故も。全部あの皇帝が糸をひいているんでしょ?』
『なんだと?』
『二十数年前、スパニダス星系に壊滅的被害を与えたクロップス宙賊団。
そのほとんどが、大暴れした一体のアンドロイドによるものだったそうね。
事件後、宙賊団の恐怖の代名詞となったアンドロイド、つけられたコードネームが『破壊神』。恐らくそれが、貴方だと思ってるわ』
『なっ……嬢ちゃん、お前、どこまで知って』
追手の男が、スパニダス星系の惨劇を起こした犯人。
本人がそれを否定しないという事は、事実なんだろうか。
またまたとんでもない情報が、垂れ流されてる。
『十七年前のクーロイでの事故の前、”クロップス宙賊団”がクーロイ星系の外にある小惑星、トラシュプロスに現れた。あれは、貴方達の仲間だったのでしょう?』
『……逃げてった奴らが居るのは確かだが、俺は別の場所に居たから、詳しい経緯は知らん』
国家レベルの陰謀情報が、続々と垂れ流されてくる。
星姫ちゃんの悲劇の原因となった、十七年前のクーロイ3区コロニーの事故にも、“クロップス宙賊団”が関連してるの?
ってことは、あの皇帝も絡んでくるってこと?
『十七年前の3区の事故当時、コロニー管理者バートマン中佐を暗殺しようとしてた部隊が居たみたいだけど。
その内の一人、リロイ・マックバーン……それが貴方でしょう?』
『き、貴様……どこまで知っている!』
おまけに、コロニー管理者を、暗殺しようとしていた!?
もう、くらくらする……。
『私が歌謡祭に出てきたのは、何のためだと思うの?
中佐が生きていようといまいと。
あの時の事実を明らかにして、事故の再調査を行ってもらうためよ』
『管理エリアはお前たちから回収して、既に処分してある。
残ってた音声記録もろとも消えちまった。
そんな状態で事故の再調査をしたって、なんも出やしねえさ』
『ふふふふ。証拠なら山ほどあるわ。
例えば、貴方達が処分したと思っている音声記録とか』
『なっ……! 馬鹿な!』
えっと、つまり。
星姫ちゃんのいう「あの時の事実」とは、十七年前の3区コロニーの事故の事みたい。
その時の事実……やっぱりあれは単なる事故じゃなかったって事?
それで、それを知るだろうコロニー管理者を暗殺しようとして。
後から事実を知った星姫ちゃんも暗殺しようと、宇宙軍が3区に押し掛けたってこと?
つまりそれは……あの事故には、帝室も絡んだ裏があるってことじゃないの?
『航法コンピュータのロックを解除した私達が、どうして音声記録のプロテクトを解除しないと思ったの?
最後の声紋認証だけはまだ解除できてないけども、音声記録は記録媒体ごと持ち出しているわ。
船に残していたのは、コピーよ。原本はこっち』
で、星姫ちゃんはその証拠の原本をしっかり押さえているって事。
ここから、距離が離れてしまったのか、ノイズが酷く混じって来た。
段々と二人の音声が聴き取りにくくなってくる。
一応録音しておこう。
アップすれば、だれか専門家が解析してくれるかもしれないし。
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