第3話
「ちょっとウィルス! わたくしを出品するって本当に言っているの?!」
リットが帰ってから、テディがウィルスに言い募る。
ウィルスはもらってきたエントリー用紙に早速記入しながら、テディに言った。
「うん、本当だよ。だって、テディならいけると思うもん」
「一体どういう確証があってそう言うんだか」
テディはため息を吐き出した。
「大体初めに出品しようと思っていたおもちゃと丸きり規模が違い過ぎるじゃない。っていうか、方向性も違うし」
「子供に夢を与えるっていう点では何も変わってないよ」
羽ペンを置いてから、テディの頭を撫でる。
「テディならきっと出来る」
「……ふぅ、どんな結果になっても知らないからね」
テディはどうにでもなれと半ばヤケクソ気味に座り直した。その前でウィルスは意気揚々とエントリー用紙を記入していった。
***
コンクールの予選会当日。国内各地からやってきたおもちゃ職人がおもちゃ協会指定の王立ホールに集まった。王都ではアーティクトとノイスラックの二店しかないおもちゃ屋だったが、国内各地にはまだおもちゃ屋は残っていた。
ウィルスはテディを抱いて指定のブロックに移動すると、王都のブロックということでアーティクトと同じブロックだった。そして、アーティクトが出品してきたおもちゃを見て、ウィルスと一緒に来ていたリットが口を開ける。
「ちょ……あれって、ウィルスが作ってたのと同じじゃない!!」
滑り台からジャングルジムまで、さまざまな機能がついたおもちゃが、アーティクトの枠に出品されている。
「火をつけた時……設計図も一緒に盗んだのか」
盗賊が盗まれるなど失態もいいところだ。ウィルスは親指の爪を噛んだ。
アーティクト三十人のおもちゃ職人を総動員すれば、一週間で作れても不思議ではない。とんだ誤算だ。
その時。
「おや?誰かと思えば、ノイスラックの店主じゃないか」
振り返れば、アーティクトのオーナー……ジョバンニが杖を両手で持ち、得意げな笑みを作っている。ウィルスとリットは表情を厳しくした。
「あんた、自分が何をやったか分かってんの!」
「何の言いがかりを」
ジョバンニは余裕でかわす。そして、ジョバンニの視線はウィルスが抱いているくまのぬいぐるみに行った。
「まさかそのぬいぐるみ一体を出品する気じゃないだろうね?」
「そのまさかだけど、それが悪いのかい」
ウィルスはテディを抱き締める腕に力を込める。
テディは口元では笑っていたけれども、目はジョバンニを睨みつけていた。
火をつけて設計図を盗み……盗んだ設計図で堂々と出品してくるこの極悪非道さ。最早まともな思考回路の人間ではない。
ウィルスの眼光が鋭くなった。
「例え設計図通りに作ったとしても、愛情をこめなければおもちゃに命は吹き込まれない」
ジョバンニは口端を上げた。
「さて、それはどうかな。まぁコンクールの予選など余興にしか過ぎん。貴殿とは本選で会えるかどうかも分からぬ故、こうして挨拶に来てやったのだ。有難く思え」
そして、ジョバンニは高笑いをしながら姿を消す。
「なんっっなのあれ?! ちょーむかつくんだけど?!」
リットが地団駄を踏みながら抗議する。ウィルスはそれすらも呆れ果て、物も言えぬ状態なのか、テディを出品枠の台に置きながらその頭を撫でた。
「ジョバンニの事は放っておこう。今はまず予選を通過することだけを考えなきゃ」
「そうだけど……悔しい!!」
リットはそれからしばらく怒りを露わにしていた。




