EP 7
四神帰還! 温泉土産は勝利の鍵
ブゥゥゥゥゥゥンッ……!! チュドォォォォォンッ!!
ポポロ村の夜空を埋め尽くした死蜂型の群れが、優太とガオン、そしてヒロインたちの完璧な連携による対空掃射(CIWS)によって、一匹残らず鉄屑となって地上に降り注いだ。
「バ、バカな……ッ! 俺様の航空戦力が、たった数秒で……ッ!?」
魔人ギアンは、燃え盛る死蜂機の残骸を見上げ、恐怖でその場に膝をついた。
人間の盾(村人)も、空の刺客も失った。卑劣な狡猾さでポポロ村を絶望に染めようとしたピエロは、今、自らが絶望の淵に立たされていた。
「ヒャハハって笑えよ。……次はお前の番だ」
黄金のメカライオン・ガオンのスピーカーから、優太の冷酷な声が響き渡る。
ガオンは、リーザのバフ(戦神の凱歌)とルナの無限魔力によって、眩いほどの黄金の闘気を全身から迸らせ、ギアンに向かってゆっくりと歩を進めた。
「く、くそォッ……! サルバロス様ァァッ! 俺様に、俺様にさらなる力をォォォッ!!」
ギアンが大鎌を握り直し、天に向かって絶叫した、その時だった。
『――あー、極楽、極楽。やっぱり、登別の硫黄泉は、骨の髄まで染み渡るぜぇ』
突如として、ポポロ村の上空に、場違いなほどリラックスした、重々しい金属音が響き渡った。
「「「…………は?」」」
優太(コックピット内)、ギアン、そして村人たちの時間が、同時に止まった。
空を見上げると、そこには――。
温泉マーク(♨)が描かれた『湯桶』を頭に乗せた白銀のメカタイガー(白虎)。
首に『手拭い』を巻いた青緑のメカドラゴン(青龍)。
背中に『土産物の袋』を大量にぶら下げた朱色のメカバード(朱雀)。
そして、甲羅の上に『地酒の瓶』を並べた黒いメカクレーン(玄武)。
世界の調停者たる【四神】たちが、この世の春を謳歌したかのような、のんきな姿で空中から降りてきたのである。
「テ、テメェらァァァァァァァァッ!! 今までどこ行ってやがったァァァァッ!!」
コックピットの中で、優太に制御されていたガオンのAIが、過労と怒りで限界突破し、スピーカーから鼓膜を破らんばかりの絶叫を上げた。
「俺様が! たった一機で! 死蟲軍と三日三晩ぶっ通しで戦って! ボロボロになって! WD-40とダクトテープで応急処置される屈辱(感謝)を味わってる時に!! お前らはッ、温泉旅行だとォォォォッ!!?」
「おー、ガオン。元気そうだな」
メカタイガー(白虎)が、湯桶をカラリと鳴らし、肉球で挨拶する。
「いやー、すまんすまん。登別の地獄谷が、あまりに居心地が良くてなぁ。土産に『温泉饅頭』買ってきたぞ」
メカバード(朱雀)が、背中の袋から『ルナミス温泉名物・木箱入り饅頭』を取り出し、ガオンに向かって放り投げた。
「饅頭じゃねえッ!! 敵だッ! 目の前に魔人がいるだろうがァァッ!!」
「ん? おお、本当だ。なんかピエロがいるな。……ガオン、お前、 WD-40で関節がすごくスムーズになってるじゃねえか。良かったな」
メカドラゴン(青龍)が、手拭いで顔を拭きながら、のんきにコメントした。
「な、何奴ッ!? 四神だと!? なぜ、世界の調停者が、このような辺境の村に……ッ!?」
ギアンが驚愕と混乱で、大鎌を取り落としそうになる。
四神たちの、戦場の空気を1ミリも読まない温泉トーク。
優太はコックピット内で、これまで経験したどんな戦場よりも激しい胃痛と、背筋が凍るような脱力を感じていた。
(……狂ってる。この世界の神話(守護獣)は、どいつもこいつも、責任感という文字を知らないのか……?)
「あー、めんどくさいわね。ギアン、あんたしつこい」
突然、ポポロ村の上空が、神々しい(?)虹色の光に包まれた。
その光の中から、芋ジャージ姿で、片手に『缶ビール(350ml)』を持った女神ルチアナが、コタツごと(※魔法で浮遊)降臨してきた。
「女神ルチアナ様ァァッ!!」
村人たちがその場に平伏する。
「ルチアナ!? お前、コタツごと……ッ!?」
優太が絶叫する。
ルチアナはプシュッ! とビールを開け、豪快に一口煽ると、空からギアンと四神を見下ろして、神託(面倒くさそうな指示)を下した。
「四神、ガオン! 温泉旅行は終わり! とっとと合体して、あいつ(ギアン)を更地(平和)にしなさい! ――ガオガオンに!」
「「「「「おーぅ!!」」」」」
四神とガオンが、一斉に威勢よく返事をした。
「おい待て! 合体って、四神がいなきゃできないんじゃなかったのか!?」
優太が操縦桿を握りながらツッコミを入れる。
「ふふっ、優太。朱雀が持ってきた『お土産』……あの饅頭の箱の中に、勝利の鍵(合体アイテム)が入ってるわ♡」
コックピット後方で魔力を供給していたルナが、扇子を広げて腹黒い笑みを浮かべた。
優太がモニターを見ると、地面に転がった『ルナミス温泉名物・饅頭の木箱』が、突如として眩い黄金の光を放ち始めた。
木箱が弾け飛び、中から現れたのは、饅頭ではなく、五つの眩い『聖獣石(合体アイテム)』であった。
「な、なにィッ!? 温泉饅頭の中に、合体アイテムが隠されてたっていうのかッ!?」
「ガハハハッ!! 登別の温泉のマナをたっぷり吸い込んだ聖獣石だぜ! 優太、操縦桿を中央のソケットに差し込め! 合体シーケンス(作詞作曲:ルチアナ)を開始するッ!!」
『♪ ガオッ! ガオッ! ガオッ! ガオガオオオオン!!』
ルチアナの神力(BGM強制再生魔法)によって、世界中にルチアナ作詞作曲のテーマソングが大音量で響き渡った。
「お前ら……! 最後まで、温泉饅頭かよォォォォッ!!」
優太の胃痛(HP)がゴリゴリと削られていく中、ポポロ村の広場で、黄金のメカライオンと四神たちが、奇跡の合体に向けて光を放ち始めた。
勝利の鍵は、温泉饅頭の箱の中にあった。
最凶の勇者一行と、過労死寸前の守護獣、そして温泉帰りの四神たちによる、終わりの見えない『聖獣合体』という名の地獄のオペレーションが、今まさに幕を開けたのであった。




