EP 6
空の刺客、死蜂型を撃墜せよ!
「バ、バカな……ッ! 俺様の特製の糸を、一瞬で……ッ!?」
ポポロ村の広場。
人間の盾として操っていた村人たちを傷ひとつなく解放され、魔人ギアンは不気味な仮面を歪めて後ずさった。
ゴードンたち村人は、自警団によって無事に安全な場所へと避難していく。
「ヒャハハって笑うの、忘れてるぜ? 三流ピエロ」
メカライオン・ガオンのスピーカーから、優太の冷酷な声が響き渡る。
「……チィッ! ナメるんじゃねェぞ、人間どもがァ! 地上の肉壁がダメなら、空からまとめて酸の海に沈めてやるゥ!! 出でよ、死蜂型どもッ!!」
ギアンが大鎌を天に掲げて絶叫した瞬間。
ブゥゥゥゥゥゥンッ……!! という、空気を震わせる不気味な重低音が上空から響き渡った。
「なんだ!?」
優太がコックピットのメインモニターを見上げる。
ポポロ村の空を真っ黒に覆い尽くしていたのは、戦闘機ほどの大きさを持つ蜂型の機械化怪物――『死蜂型』の大群だった。
「空から来るわよ! みんな、しっかり掴まってなさい!」
脚部制御を担当するキャルルが、ガオンを素早くステップさせて村の建物の陰へと退避させる。
直後、上空の死蜂型の腹部から、無数の『致死性の毒針』がミサイルのように射出された。
ドドドドドドドッ!!
地面に突き刺さった毒針が炸裂し、周囲の石畳や建物をシュウシュウと音を立てて溶かしていく。
「ちょっと! さすがにこの数の絨毯爆撃じゃ、私のシールドでも魔力消費が激しすぎるわよ!」
後部シートでジェネレーターに魔力を供給するルナが、悲鳴を上げる。
「ウォォォォンッ! 優太、空を飛ばれちゃ分が悪いぜ! 俺様の白兵戦じゃ届かねえ!」
ガオンが歯噛みする。ファンタジー世界の魔物や機械兵器に対し、制空権を取られることは絶対的な死を意味するのだ。
だが、コックピットのメインシートに座る優太の目は、決して絶望していなかった。
元SEALsの教官から叩き込まれた現代戦術において、「対空防衛」は最も基本的なオペレーションの一つである。
「空を飛んでるからって、無敵だと思うなよ。……キュララ! 上空の死蜂型全ての座標を、お前のドローンで三次元(3D)マッピングしろ! 軌道を予測して全機ロックオンだ!」
「りょーかいだよぉ★ ふふんっ、配信の『スパチャ(投げ銭)自動追尾システム』を応用して、全部の蜂さんに赤枠つけちゃうよぉ!」
助手席のキュララが魔導端末を高速タイピングすると、上空を飛び回る無数の魔法ドローンがレーダー(FCS:火器管制システム)として機能し始めた。
ピピピピピッ! と、優太の目の前のメインモニターに、上空の死蜂型すべてに『赤いロックオンマーカー』が付与されていく。
「よし、特定完了! ガオン! 対空射撃用の兵装はあるか!?」
「へっ、ナメんな人間! 俺様のたてがみから放つ光刃『獅子王連爪』があるぜ! ルナの無限魔力があれば、弾切れはねえ!」
「上等だ! リーザ、そのまま歌い続けろ! バフで弾速と威力を限界まで引き上げるぞ!」
「任せなさいッ! 『♪ 穴の数だけ幸せあげるゥゥッ!!』」
リーザの『戦神の凱歌』がコックピット内に鳴り響き、ガオンのシステムが異常な数値を叩き出す。
優太は操縦桿のトリガーに指をかけ、鋭い眼光でモニターのロックオン数を確認した。
「(……対象、214機。全弾マルチロックオン完了。……対空掃射(CIWS)、開始!)」
「――一匹残らず、叩き落とせッ!! ファイア!!」
優太がトリガーを深く引いた瞬間。
ズドドドドドドドドォォォォォォォォッ!!!
ガオンの黄金のたてがみから、ルナの魔力とリーザのバフによって強化された無数の『光の爪(対空追尾ミサイル)』が、夜空に向かって一斉に打ち上げられた。
光の弾幕は、キュララのドローンがはじき出した予測軌道に沿って、変態的な軌道を描きながら死蜂型の群れへと殺到していく。
「な、なんだァあれは!?」
ギアンが上空を見上げて絶叫する。
回避不可能な光の豪雨が、死蜂型に次々と直撃した。
ドガァァァァァァァンッ!! チュドォォォォンッ!!
空中で大爆発の連鎖が起こり、ポポロ村の夜空に、まるで無数の花火が打ち上がったかのように眩い光の花が咲き乱れる。
わずか数秒の間に、空を黒く染めていた200機以上の航空戦力が、文字通り「一匹残らず」撃墜され、鉄屑となって地上に降り注いだ。
「バ、バカな……ッ! 俺様の航空戦力が、たった数秒で……ッ!?」
ギアンが仮面を押さえ、恐怖でその場に膝をつく。
「ヒャハハって笑えよ。次はお前の番だ」
炎と黒煙が晴れた後、黄金のメカライオンが、圧倒的な威圧感を放ちながらギアンを見下ろしていた。
人間の盾も、航空戦力も失った魔人。
反撃の狼煙は、ついに決定的な勝利へのカウントダウンへと変わったのであった。




