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『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』  作者: 月神世一


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EP 8

最悪のコピペ! 貧乏神スキルの感染

「も・や・しィィィィッ!! 豚バラァァァァッ!!」

ズドォォォォォォォォンッ!!!

ルナミス王国からはるか西、荒涼とした大地にそびえ立つ『魔王城』。

その堅牢なはずの城門が、凄まじい轟音と共に内側へと吹き飛んだ。

電気(魔力供給)を止められ、水道も止まり、ただでさえ薄暗く寒々しい城内に、赤黒い禍々しいオーラを纏った小柄な影が、弾丸のような速度で突入してくる。

「もやし炒め定食(ご飯特盛り)を食うために! さっさとアンタをぶっ倒してクリア(現実へ帰還)するわよォォォォッ!!」

商人(裏ジョブ:貧乏神)のリーザである。

現実世界のファミレス店員という立場から、バーチャルの大富豪へと成り上がった彼女だったが、優太の「俺の手料理」という超庶民的な報酬によって、極貧時代のサバイバル魂が完全に覚醒。その執念は、システムエラーで付与された『貧乏神』のスキルと共鳴し、魔王すらドン引きするほどのド黒いプレッシャー(闘気)を放っていた。

「な、何奴ッ!?」

「ひぃぃっ! ゆ、勇者だ! ポポロ村の勇者が攻めてきたぞォォッ!」

インフラ未納で給料スライムゼリーも支払われず、すっかり士気の落ちていたオークの衛兵たちが、リーザの放つ異常なオーラにあっさりと道を開ける。

「どきなさいッ! アタシは5分で優太の元(台所)に帰るのよォォッ!」

リーザは衛兵たちを無視し、一直線に最上階の玉座の間へと駆け上がっていった。

   ***

「はぁ、はぁ……っ! 待て、リーザ! 突っ走るな!」

遅れて魔王城に到着した優太(医者)、ルチアナ(飲んだくれ勇者)、キャルル(武道家)、ルナ(魔法使い)、キュララ(配信者)の5人。

「……うわぁ。本当に真っ暗ね、このお城」

ルチアナがパチパチと瞬きをしながら、ロウソクの火だけが頼りの城内を見回す。

「キュララがインフラ企業を買収してライフライン止めたからねぇ★ 魔王軍、お風呂にも入れなくて臭そうだよぉ」

「ふふっ、地下資源もすっからかんだし、このお城の資産価値(不動産価格)はもうゼロね」

ヒロインたちがゲスい会話を交わす中、優太はメスを握りしめ、胃の痛みに耐えながら玉座の間へと続く大階段を駆け上がった。

(……頼む! これ以上、世界観を壊すような真似はしないでくれよ……ッ!)

   ***

そして、玉座の間。

「……ついに、来たか。ポポロ村の勇者よ」

ボロボロのマントを羽織ったラスボス・魔王(NPC)が、玉座からゆっくりと立ち上がった。

自国の経済は崩壊し、資源は強奪され、インフラは停止。物理的なダメージはゼロのはずなのに、その顔は過労死寸前のブラック企業社員のようにゲッソリと痩せこけている。

「長かった……。何もせぬまま国が滅びる恐怖に怯える日々……。だが、ついに貴様らと直接剣を交える時が来たのだな……ッ!!」

魔王は残された最後の魔力を振り絞り、威厳ある声(裏返り気味)で叫んだ。

その視線の先には、扉を蹴り破って現れたリーザの姿があった。

「も・や・し……ッ! 魔王、覚悟しなさいッ!!」

「――――ッ!?」

魔王は、リーザの全身から立ち昇るド黒いオーラを見て、息を呑んだ。

(な、なんだこの恐るべき闘気プレッシャーは……ッ!? バーチャルの富を捨て、現実の『モヤシ』とやらに執着する、あの底知れぬ飢餓感……!)

魔王のNPCAIが、瞬時にリーザの脅威度を「世界崩壊レベル」と算出した。

(間違いない……。あの小柄な女こそが、我が国を経済崩壊に追い込んだ『最強の戦士(勇者)』に違いないッ!! 剣や魔法ではない、あのド黒い力(概念)こそが、あやつの強さの源泉……!!)

魔王は大きく後ろに跳び退き、必殺の構えをとった。

「ふはははっ! 見事な闘気だ! だが、予には『最強の奥義』がある! 貴様のその底知れぬ力、そっくりそのまま予の力として使わせてもらうぞッ!!」

駆けつけてきた優太たちが、玉座の間の入り口で足を止める。

「おい、魔王の奴、何を……」

「リスナーのみんな〜、魔王がなんかチートスキル使うみたいだよぉ★」

「我が深淵の魔眼よ! 目の前の最強の戦士の能力ステータスを、完全に複製コピーせよッ!!【完全模倣パーフェクト・コピー】!!」

カッ!!

魔王の瞳が怪しく光り、リーザを凄まじい光が包み込んだ。

これは、相対した敵のステータス、スキル、ジョブを完全に自身に上書きする、魔王専用の反則級チート魔法である。

「うおおおおおぉぉぉッ!! 力が……! 最強の戦士の力が、予の体に満ちていくぅぅぅッ!!」

光が収まり、魔王の全身から、リーザと全く同じ『ド黒いオーラ』が立ち昇り始めた。

「よし! コピー完了だ! これで予も、貴様と同じ最強の力を……ん?」

魔王が、自身の目の前に浮かび上がったステータス画面(コピー結果)を確認して、動きを止めた。

【魔王のステータス(上書き完了)】

・ジョブ:商人 / 裏ジョブ:貧乏神

・所持金:0ゴールド(強制リセット)

・固有スキル:『財産消滅パッシブ』『株価暴落(広範囲)』『終わりのない不運(確定)』

・モチベーション:もやし炒め定食

「……」

「……」

玉座の間に、重苦しい沈黙が降りた。

「……び、びんぼう、がみ……? 財産、消滅……? カブカ、ボウラク……?」

魔王のゲッソリした顔が、さらに青ざめていく。

彼は勘違いしていたのだ。リーザの放っていた凄まじいオーラは「最強の戦士の闘気」などではない。

「もやし炒め定食への異常な執着」と、システムエラーによって付与された「裏ジョブ:貧乏神」の呪いが混ざり合った、ただの『極貧の業』に過ぎないということを。

「あーあ。やっちゃったわね、あのおじさん」

ルチアナが一升瓶を傾けながら、呆れたように呟いた。

「バ、バカな……ッ! 予がコピーしたのは、世界を滅ぼす最強の力では……ッ!? なぜ、予の個人口座の残高が、猛スピードでマイナス(借金)に切り替わっていくのだァァァッ!!?」

魔王の悲鳴が、真っ暗な玉座の間に響き渡る。

最悪の能力(貧乏神)を自らコピーしてしまった魔王の身に、ゲームシステムすら予測不能な『究極の不運』が降りかかろうとしていた。

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