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『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』  作者: 月神世一


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EP 6

開戦! 響き渡る戦神の歌と、限界突破のバフ

「ゴォォォォォォォォォォォォッッ!!!」

ポポロ村の上空で、紅竜クリムゾン・ドラゴンが耳を劈くような咆哮を上げた。

空を覆い尽くすほどの巨大な翼が羽ばたくたびに、突風が巻き起こり、村の屋根瓦が吹き飛ばされる。

「くそっ、なんてデカさだ……! まるで空飛ぶ重爆撃機ガンシップじゃねぇか!」

優太は『ワスプ薙刀』を構えながら、上空の脅威を睨みつけた。

元特殊部隊の教官としての戦術眼が、現在の絶望的な状況を瞬時に弾き出す。

相手は遥か上空。こちらの近接攻撃(CQC)は一切届かず、向こうは一方的に火炎のブレス(絨毯爆撃)を撃ち下ろしてくる。

生存確率は、限りなくゼロに近い。

「優太! 来るわよ!!」

真紅のワンピース姿のキャルルが叫んだ。

紅竜が大きく息を吸い込み、その喉の奥でマグマのような灼熱の光が膨れ上がっていく。

(……チッ! 広範囲の火炎放射ナパームか! キャルルたちを庇って躱しきれるか……!?)

優太が歯を食いしばり、決死の覚悟で前へ出ようとした、その時だった。

「――私! 歌います!!」

一歩前へ躍り出たのは、普段は「タダ飯」と「小銭」のことしか頭にない魚人族のアイドル・リーザだった。

彼女は両手を広げ、大きく、深く、ポポロ村の空気を肺の底まで吸い込んだ。

「ルナキン(ファミレス)のハンバーグを燃やそうなんて……絶対に許さない! 聴きなさい、トカゲ! そして優太様たち! これが、私の故郷シーランに伝わる『戦神の歌』よ!!」

リーザの口から放たれたのは、武道館で歌った『LOVE&Money』のようなポップで可愛いメロディではなかった。

『――暁の空を裂き、戦野に散るは紅き血潮』

ドズゥゥゥンッ……!!

歌い出しの第一声。マイクを通していないにも関わらず、その重低音のソプラノボイスは、大気を物理的に震わせた。

魚人族の驚異的な肺活量と、特殊な発声法。それは単なる歌ではなく、マナ(魔力)を直接音声変換して広範囲に叩きつける『広域支援魔法』そのものであった。

『――我が声はつるぎ、我が息吹は盾! 恐れよ、そして立ち上がれ! 闘神の加護は、今ここに!!』

「こ、これは……ッ!?」

リーザの歌声が響き渡った瞬間。

優太の足元に、黄金に輝く巨大な魔法陣が浮かび上がった。キャルルやルナの足元にも同じものが展開されている。

ドクンッ、と。

優太の心臓が、力強く、そして異常なほどの効率で血液を全身に送り出し始めた。

(なんだ……この感覚は!? アドレナリンとエンドルフィンが強制的に分泌されている……いや、それだけじゃない! 筋繊維の密度が一時的に跳ね上がり、神経伝達速度が極限まで加速している!)

医学生である優太の脳が、自身の身体に起きている『異常な医学的変化』に戦慄した。

人間の身体には、筋肉が断裂しないためのリミッター(安全装置)が備わっている。しかし、リーザの『戦神の歌』は、そのリミッターを完全に解除し、さらに魔力によって肉体を外側から補強する、いわば「生体機能の強制オーバークロック」だった。

「すごい……! 体が、羽みたいに軽い……っ!!」

キャルルが驚きの声を上げた。

重いはずの鋼鉄のトンファーが、まるで小枝のように軽く感じられる。

「ルゥゥゥゥオォォォォォォッ!!」

上空の紅竜が、ついに火炎のブレスを吐き出した。

家屋を一瞬で灰にする、直径数十メートルの巨大な火球が、優太たちを目掛けて一直線に落下してくる。

「キャルル、ルナ! 飛べ!!」

優太が叫んだ。

戦神のバフ(身体強化)を受けた優太の脚力は、すでに人間の限界を遥かに超えていた。

ダンッ!! と彼が地を蹴っただけで、アスファルト代わりの石畳がクレーターのように陥没する。

ゴアァァァァァァァッ!!!

火球が着弾し、村の広場の一部が爆炎に包まれた。

しかし、その爆心地に優太たちの姿はない。

「……すげぇ。これが『戦神の歌』のバフ効果か」

爆炎から二十メートル以上離れた屋根の上に、優太はキャルルを抱えたまま、無傷で着地していた。

普段の脚力なら、絶対に逃げ切れずに消し炭になっていたはずの広範囲攻撃。だが今の彼らは、コンマ一秒でその攻撃範囲外へと離脱する神速の反射神経を手に入れていた。

「これなら……戦える。どんな重装甲のバケモノでも、近づいて急所(関節)さえ断ち切れば落とせる!!」

優太はワスプ薙刀を構え直し、ギラリと猛禽類のような目で上空の紅竜を睨みつけた。

リーザの歌声は、今も途切れることなく村中に響き渡り、彼らの体に無限の闘気マナを供給し続けている。

「だが、相手は空だ! 俺とキャルルのCQC(近接格闘)を叩き込むためには、あのデカいトカゲを地上に引きずり下ろす必要がある!」

優太が視線を向けた先。

村の広場の端で、ハイエルフのルナが、静かに世界樹の杖を両手で握りしめていた。

彼女の足元からも、リーザの歌による黄金のバフの光が立ち昇っている。

「任せてちょうだい、優太。……私の大切な『ふぁみれす』を壊そうとする害獣は、森の精霊たちが許さないわ」

ルナの周囲で、凄まじい密度の『緑色のマナ』が渦を巻き始めた。

最強のバッファー(リーザ)のお膳立ては整った。次は、ハイエルフによる規格外の『対空迎撃』が火を噴く番である。

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