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『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』  作者: 月神世一


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EP 8

グランドオープン! 真紅の村長とエスコート

コンコン、コン。

ポポロ村の村長宅。朝の陽光が差し込む中、キャルルの部屋のドアが控えめにノックされた。

「……誰?」

ドアの向こうから、鼻声で少し掠れた声が返ってくる。一晩中泣いていたのが丸わかりの、痛々しい声だった。

「俺だ。優太だ」

「……入ってこないで。優太の顔なんか、今は見たくないわ。ルナキンのオープンには……あとで一人で行くから」

キャルルの拒絶。

しかし、優太はドアノブに手をかけ、静かに、だが確かな意志を持って口を開いた。

「開けるぞ。どうしても、今すぐお前に渡さなきゃいけないものがあるんだ」

ガチャリ、と優太がドアを開けると、ベッドの上で膝を抱え、目を真っ赤に腫らしたキャルルが恨めしそうにこちらを睨みつけた。ウサギ耳は完全にペタンと垂れ下がっている。

「だから、防弾チョッキならもういらないって……」

キャルルが言いかけて、ハッと息を呑んだ。

優太の頬には、昨日まではなかった新しい切り傷がいくつかあり、着替えたばかりのシャツの下からも、微かに湿布の匂い(医療キットのポーションの匂い)が漂っていたのだ。

「優太……その怪我……」

「気にするな。ちょっと夜の森を散歩して転んだだけだ」

優太は照れ隠しのように視線を逸らすと、片膝を床につき、背中に隠し持っていた『大きな包み』をキャルルの目の前にそっと差し出した。

「昨日は……ごめん。俺、戦術とか生存確率ばっかり考えてて、お前の『女の子としての気持ち』を全く分かってなかった」

「優太……」

「でも、これなら……絶対に間違いない。お前を世界一可愛い村長にするって、俺とルナが保証する。開けてみてくれ」

キャルルは戸惑いながらも、優太の真剣な瞳に吸い込まれるように、ゆっくりと包みのリボンを解いた。

パァァァァッ……!

包みが開かれた瞬間、部屋の中に燃えるような、それでいて朝日のように優しい『真紅の光』が溢れ出した。

「……ああっ……!」

キャルルは両手で口元を覆い、絶句した。

そこにあったのは、虹色孔雀の羽毛で織られた、この世のものとは思えないほど美しい真紅のワンピースだった。

シルクのように滑らかな光沢、動くたびに微かに七色に輝く神秘的なコーティング。そして、月影流の武闘派である彼女の動きを一切邪魔しない、完璧なシルエット。

「これ……ルナが、作ってくれたの……?」

「ああ。素材は俺が採ってきた。……幻の魔物、『虹色孔雀』の真紅の羽だ」

優太の言葉に、キャルルの目から再び大粒の涙が溢れ出した。

悲しみの涙ではない。虹色孔雀の討伐がどれほど困難で命懸けのものか、村長である彼女が知らないはずがなかった。

「バカ……優太の、大バカァッ……。こんな素敵なもの……っ、私のために、死んじゃったらどうするつもりだったのよぉ……っ!」

「バーカ。俺がただの鳥コロッケ(孔雀)ごときに負けるかよ」

優太は立ち上がり、優しくキャルルの頭をポンポンと撫でた。

「ほら、早く着替えてこい。村のみんなも、ルナキンの連中も、ポポロ村の『最高に可愛い村長』の登場を待ってるぞ」

「……うんっ!!」

キャルルは真紅のワンピースを胸に抱きしめ、満面の笑みで頷いた。

   ***

数十分後。

村長宅のリビングで待っていた優太、リーザ、ルナ、ルチアナの前に、着替えを終えたキャルルが姿を現した。

「「「…………っ!!」」」

全員が、息を呑んで硬直した。

真紅のワンピースは、キャルルの白い肌と可憐な顔立ちを、これ以上ないほどに引き立てていた。肩口の絶妙な露出と、ふわりと広がるスカート。

そして、嬉しさで限界までピンッと上を向いてピクピクと動くウサギ耳が、圧倒的な「ヒロインのオーラ」を放っている。

「ど、どう……かしら? 変じゃ……ない?」

キャルルは顔を真っ赤にして、スカートの裾を少しだけ摘んでモジモジと尋ねた。

「……ああ。めちゃくちゃ似合ってる」

優太は、嘘偽りのない、心からの言葉を口にした。

「すげぇ綺麗だ、キャルル。……その、昨日は本当に悪かったな」

「ううん……! 私の方こそ、わがまま言ってごめんなさい」

「それにしても驚いたわね。本当に『最強の防具』でもあるなんて」

ルナがクスッと笑う。

キャルルが首を傾げると、優太はニヤリと悪戯っぽく笑った。

「そのドレス、実は昨日俺が渡した『防弾チョッキ』より硬くて魔法耐性もあるんだぜ? つまり、宇宙一可愛くて、宇宙一生存確率が高い『コンバット・ドレス』ってわけだ!」

「もうっ! 優太ってば、やっぱり戦術バカなんだからっ!」

キャルルは呆れたように笑いながらも、その顔は最高に幸せそうだった。

「さあ、村長。エスコートさせてくれ」

優太がスッと右手を差し出すと、キャルルは少しだけはにかんで、その大きな手に自分の小さな手を重ねた。

「……ふふっ。地球の男の『えすこーと』も、捨てたもんじゃないわね」

リーザがみかん箱の上でニヤニヤと笑い、ルチアナは「はいはい、ごちそうさまー。さ、ファミレス行くわよファミレス!」と急かした。

村の広場は、すでに『ルナミスキング』のグランドオープンを祝う村人たちで溢れかえっていた。

歓声の中、真紅のドレスを纏った世界一可愛い村長と、少し照れくさそうな黒服の医学生が、ゆっくりと並んで歩みを進めていく。

二人のすれ違いは、不器用な努力と最高のエスコートによって、見事にハッピーエンドを迎えたのであった。

(……しかし、彼らの真の地獄『12時間耐久ファミレス女子会』は、この直後に待ち受けているのである)

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