表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『5階にトラック突撃!?ポンコツ女神の使役権と地球通販を得た医学生、辺境の村でワスプ薙刀と現代医療を駆使し最強防衛ライフを始める』  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/113

EP 10

敗北を知る内政官と、唐揚げ大宴会!

ルナミス帝都、内政省の最上階。

冷徹なる内政官ユリウスは、デスクの上に叩きつけられた報告書と、その横に添えられた『一枚の写し(コピー)』を無言で見つめていた。

「……特別査察官の二人は、重度の敗北感により帝都病院の精神科サナトリウムに入院。国境の守備隊は完全に骨抜きにされ、商人たちは堂々と関税を無視して屋台に群がっている、か」

報告書を読み上げるユリウスの声は、氷のように冷たい。

彼の視線の先にあるのは、グリムが命懸けで持ち帰った『厨房のATP拭き取り検査の数値(無菌の証明)』と、ゼニヤが震える手で書き写した『リーザの完璧すぎる複式簿記の一部』であった。

軍事力ロボットではなく、経済と法で包囲したはずだった。しかし……あの村には、帝国最高の衛生基準を嘲笑う【医療技術】と、帝国銀行すら凌駕する狂気的な【金銭管理能力】が存在したというのか」

ユリウスは銀縁の片眼鏡モノクルを中指でスッと押し上げ、小さく、だが確かに「フッ」と自嘲気味な笑みをこぼした。

「よもや、衛生と帳簿でこの私が敗北するとはな。……ポポロ村、ただの武力集団ではない。法とシステムの恐ろしさを理解した上で、それを上回る『執念』でねじ伏せてくる異常特異点イレギュラーか」

ユリウスは万年筆を手に取り、ポポロ村への『取引禁止令』の書類に、自らバツ印を書き込んだ。

「これ以上の封鎖は無意味だ。むしろ、我が帝国の法と規律が内側から腐敗する。……禁止令は解除する。第一幕は、奴らの完全勝利ドローというわけだ」

ユリウスは窓の外、ポポロ村のある西の空を見つめる。

「だが、忘れるな。国家というシステムは、一度や二度の敗北で揺らぐほど脆弱ではない。次は、息継ぐ暇も与えぬ『資本の濁流』で飲み込んでやろう……」

冷徹なる官僚の宣戦布告は、静寂の執務室にひっそりと溶けていった。

   ***

その日の夜。異世界ファミレス『ルナキン』は、かつてない熱気と歓声に包まれていた。

「カンパーーーーイッ!! ポポロ村と、アタシの帳簿の大勝利にィッ!!」

リーザの音頭と共に、大量のジョッキが高らかに突き上げられる。

テーブルの上に山のように積まれているのは、地球のB級グルメの王様『究極の唐揚げ』と『フライドポテト』。そして、帝国の商人からドサクサに紛れて巻き上げた(買い叩いた)極上のエール酒である。

「ぷはぁーッ! やっぱり仕事のあとのビール(※魔法のコタツ入り)は最高ね♡」

ルチアナがジョッキを空にして、だらしない笑顔を浮かべる。

「特定班のみんなぁ! 今日は祝勝会配信だよぉっ★ スパチャもいーっぱいありがとねっ! キュララ、みんなのおかげで勝てたよぉ!」

キュララがドローンに向かって満面のアイドルスマイルを振りまき、チャット欄には『我らが天使に栄光あれ!』という祝福のコメントが滝のように流れている。

「んっふふふふ〜〜♡ 見なさいよキャルル! この金貨の山! 屋台の売上だけで、ルナミスデパートの試食品なんて一生食べ放題の金額よォッ!」

リーザは金貨の詰まった麻袋に顔を埋め、歓喜の涙を流している。

「もう、リーザちゃんったら汚いわよ! ちゃんと村の復興資金にも入れるんだからね!」

大騒ぎするヒロインたちから少し離れた厨房で。

優太は白衣の袖をまくり上げ、最後の一皿となる特大の唐揚げにレモンを搾っていた。

「……たく。兵糧攻めを食い破ったと思ったら、今度は祝勝会のフル稼働か。俺の休日オフはいったいいつ来るんだよ……」

愚痴をこぼしながら、優太は常備している胃薬を水で流し込む。

しかし、その口元は、これまでにないほど穏やかに緩んでいた。

「優太! 早く来なさいよ! アンタが揚げた唐揚げ、最高に美味しいんだから!」

「ほら、主役の席が空いてるわよ♡」

リーザやルナたちが、優太に向かって大きく手を振る。

その笑顔を見て、優太はふっと息を吐き、山盛りの唐揚げの大皿を持ち上げた。

(……まあ、いいか。外科医ってのは、患者の笑顔を見るのが一番の報酬だからな)

「ほらよ! 揚げたてのおかわりだ! 火傷しないように食えよ!」

理不尽な異世界で、理不尽な国家権力に狙われながらも。

現代の知識と底辺の執念で勝利をもぎ取った彼らの夜は、笑い声と唐揚げの美味そうな匂いと共に、賑やかに更けていくのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ