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20.イースの魔法2

「わ!できましたよ、エル!これ魔法ですよね、ね!」

「え?あ、うん……。そうだね……」


 イースがはしゃいだ様子を見せているが僕はそれにかまう余裕もなく、目の前の現象を茫然と見ていた。


 イースが龍の魔力を吸収していたことは何となくわかっていたが、まさか特殊魔法まで受け継いでいるとは思わなかった。

 というか、普通は龍を倒した僕が能力を獲得するもんだと思うが、何でイース何だろう。

 特殊魔法は一人一個というルールでもあるのだろうか。


 僕がそんなことを考えている間にも、イースは魔法が使えたことがうれしかったのか次々と炎を出している。

 まだ能力に慣れていないからか、不安定な炎が、一瞬現れるだけだが。

 しばらくすると、さすがに飽きたのか、イースは炎を出すのをやめて僕にキラキラした視線を送ってきた。


「エル!魔法が使えました!これって魔力の制御ができるようになったってことですよね!」


 見たことのないほどに興奮している。


「い、いや……。イースちょっと落ち着いて。まだできてないから……」

「でも魔法は使えましたよ?」

「魔力の操作はちょっとできるようになったんだろうけど……。まだ常に魔力の漏出を抑え解くことなんてできないでしょ?」


 僕の言葉にイースは少ししょんぼりして、頷いた。


「まあ、それはそうですね……」

「そう。それにイースが今使ったのは普通の魔法じゃない。特殊魔法の一種だよ」


 特殊魔法は使用者自身の体に定着しているものなので比較的扱いやすい傾向にある。

 一方普通の魔法は、世界の法則を利用しているものなので、特殊魔法よりも魔力の扱いが難しいのだ。

 まあ特殊魔法が使えるような大物は魔法なんて極めまくっている人が多いので、そんなことは知られてないだろうが。


「特殊魔法ですか!?あの、神様が使っているという……」


 イースは自分が特殊魔法を使ったということを聞いて、驚いたように言う。


「うん。たぶん創造の魔法だね。あの龍が使っていた能力がどういうわけかイースに移ったみたい」

「特殊魔法……」


 自分が特殊魔法を手に入れたというあまりの驚きに、イースは口をパクパクしながら固まっている。

 まあそうなってしまうのも仕方がないか。

 なんせ忌み子だと思っていた自分が、急に神様が使っているような魔法を使えるようになったのだから。


「試しに別のものとか作ってみたらどう?例えば、そこら辺にある石みたいなものとか」

「石、ですか。どうやって……」

「念じてみればできるんじゃない?なんかこう、石が出てくるようなイメージで」


 我ながら何とも曖昧なアドバイスだが、実際そうなので仕方がない。

 僕の場合そうだったというだけで、イースもそうだとは限らないのだが。


「はあ……、まあやってみますね」


 そう言ってイースは目を閉じ、石、石、とつぶやき始める。

 イメージを作り出すことに集中したいのだろうが、なんか怪しい人みたいになってしまっている。


「あー、無理しなくてもいいんだよ。そんな初日からできるようになるわけでもないし」


 いたたまれなくなって僕はそう言うが、イースは目を閉じたままそれに答えた。


「大丈夫です。なんかできそうなので。……あ、できました」


 イースのそんな言葉とともに、目の前に握りこぶし大の石が現れる。

 何の変哲もない、ただの石だ。


「できましたよ、エル!この調子でどんどん作っていきましょうよ!」


 特殊魔法が着々と使えるようになっているという達成感があるのか、イースが興奮気味に言う。

 しかし僕は、別のものを作り出そうとするイースを止めた。


「いや、今日はこのくらいにした方がいいかな。慣れてないうちから魔力を使いすぎると危険だからね」

「そうなんですか……」


 イースはまだやりたがっているが、そこは譲れない。

 魔力は生命力と言い換えてもいいものだ。

 魔力を使いすぎて魔力欠乏に陥ってしまうと、意識が遠のいて気絶、最悪の場合は死に至ることもあり得る。

 特殊魔法の使い過ぎでもそうなるのかはよくわからないが、ただでさえイースは魔力に慣れていない身。

 魔法を使っているときにも魔力を無駄に使ってしまっているし、注意するのは越したことがない。


 そういうわけなので、僕はまだ不満そうなイースに向かって注意をする。


「隠れて勝手に、魔法の練習とかもしないようにね。変な使い方を覚えてもよくないし、何より危険だ。見つけたらもう訓練はしないから」

「はい!わかりましたよ、エル」


 僕の、訓練はしないという脅しを聞いて、イースは慌てて返事をした。

 ちゃんとわかってくれたみたいだ。


「まあ、イースは呑み込みも早いみたいだし、毎日訓練してればきっとすぐに魔力の制御ができるようになるよ。そしたら街にでも行って魔法を教えてもらうこともできるから」


 軽く入れた励ましのつもりだったが、イースは僕の言葉に不思議そうに首を傾けた。


「あの、さっきも言ってたんですが街に行くって……。私、忌み子なんですよ?街に入れるわけが……」

「いや、だって魔力感じるし、魔法使えるし。どこからどう見ても、忌み子には見えないよ。魔力の制御ができるようになったら、それこそ常人と変わらないと思うけど」

「そういえば……。じ、じゃあもしかして私も、街に行けるんですか?」

「さっきからそう言ってるって。というかこんな洞窟暮らしも嫌でしょ?魔法の訓練が終わったら、街に行って暮らすのもいいと思うけど」


 僕の提案に、イースはぱあっと顔を明るくさせる。


「街で、町で暮らせる……。まるで夢を見ているみたいですよ」


 喜んでくれて何よりだ。

 ずっとここで暮らしたいっていったらどうしようかと思っていたが、それは杞憂だったようだ。


 よっぽどうれしかったのか、イースは上機嫌でスキップしながら僕を追い抜くと、くるりと振り返って僕の方へ向く。

 そして


「それじゃあ、訓練頑張らなくちゃですね!」


 そう言って、満面の笑みを浮かべた。


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