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20.脅迫

 


 上空一万メートルから本陣に転移すると、下位神や天使たちの戸惑った顔が僕たちを迎えた。



「あ、龍神様。一体どこに行っておられたので……?」


「敵がいたので上空に。敵は排除済みだ」


「な、なんと。ではさっきの魔窟の方で起こった爆発は……」


「ああ、それは……僕の攻撃だ。敵が手ごわくて少してこずったんだ」



 僕がそう口から出まかせを言うと、下位神フスカの顔が強張った。最高神が手ごわいと言う相手が敵側にいたことへの驚きだろうか。魔窟の方には今もなお立ち上る黒いキノコ雲の姿が。あるいはその破壊の跡に相当する敵そのものへの恐怖からかもしれない。



「まだ帝国側にあれと同等の強さの敵が残っている可能性がある。君らも下手に手出ししないようにね。後は僕らでやっておくから」


「は、はい。了解いたしました!」


「じゃあ僕は少しイースたちと話し合ってくるから」



 敬礼したフスカを一瞥し、僕はイースらとともに元居たテントに戻る。最高神のために特別に用意されたテント。入口に立っていた護衛の天使を外に出すと、その中はイース、エレーナと僕の三人だけになった。



「……さて、そろそろいいんじゃない?エレーナ」


「ええ。そうね」


「……?エル様何を――」



 イースがそう怪訝に問いかけると、エレーナはにっと笑って彼女の後ろを指さした。首を傾げながらもイースが後ろを向くと、今までどこに隠れていたのか、そこにはヒカリの姿があった。



「――ッ!?!?」


「……初めまして。神様」



 気配も魔力も一切感じず、唐突にそこに現れたとしか思えないヒカリの姿にイースは目を見開くと、瞬間、魔法を展開しながら大きくヒカリから距離を取る。しかし「……危ない」と両手を上げるヒカリの姿や、そして何より僕やエレーナの態度を見て危険がないことを察したのか、イースは大きく息を吐きながら発動しかけていた魔法を解除した。



「――……エレーナ、あなたの能力ですね。心臓に悪いです、二度としないでください」


「あら、じゃあ彼女が堂々と本陣を歩いてきた方が都合がよかったってことかしら?」


「そうではなく。もっと普通に紹介してくださいと言う事です。こんな驚かす様ではなく」



 口をへの字にしてそう言うイースに、エレーナは「ごめんなさい?」と言って、



「でも――彼女が自分からあなたの後ろに立ったのよ?私にはあなたを驚かす気なんてなかったんだけれど」


「はぁ?」


「――ドッキリ大成功」


「ど、ドッキリ……?なんですか、それは」



 無表情のままピースしてそう言って見せるヒカリに、イースが戸惑った声を出す。

 ……意外とヒカリはお茶目だったりするのだろうか、あの雰囲気で。



「まあ、という訳で懐柔には成功したって感じだね」


「……の、ようですね。対価は何を?」


「エルには衣食住と贅沢を約束してもらった。これから私は天界で贅沢三昧」


「はぁ?そんなことであなたは帝国を裏切ったのですか?」



 イースの問いにヒカリは「うん」と頷く。



「……エル様、本当にこいつ大丈夫なんですか。性格に問題があるように思えますが」


「む、失礼。私はちゃんとしてる」


「うーん、まあ大丈夫なんじゃない?みんなそんなもんだよ、きっと。それに――彼女強いしね。さっきの爆発もヒカリの攻撃だよ」


「えっ?あんな大規模な爆発、私だってできないのに――」



 イースが驚いたようにヒカリを見ると、ヒカリはニヤッと小さく笑うとふっ、と浅く息を吐いた。



「……エル様、私こいつ嫌いです」


「これから仲間になるんだから仲良くね。あ、彼女たちはイースの家に匿ってあげて」


「ぐっ……かしこまりました――って、彼女達?」



 渋い顔で頷きかけたイースが、僕の言葉にそう質問した。



「ああ、うん。どうやら帝国側には亜神がもっと居るみたいだから。そいつらも捕まえて仲間にしようかと」


「そうですか。何人ぐらい来る予定なんです?」


「それは――……帝国陣にいる君の仲間は何人?ヒカリ」


「三十人」


「じゃあそんぐらいかな。――……それにしても三十人か。ヒカリみたいのがそんなにいるとなると、大変だ」



 まあ首輪の解除をすれば、ヒカリのように攻撃をやめてくれることを期待しよう。そうでなければ何人かケガさせてしまうかもしれないけど――

 と、そう僕が口にすると、ヒカリが「それはない」と言った。



「帝国陣に居る人の中では私が一番強い。他は雑魚」


「あ、そうなんだ。じゃあもしかして君が帝国軍の指揮官だったの?」


「そうじゃない。部隊の指揮官ではあったけど――軍の指揮官は帝国の人間」


「ああ、まあそうか。一番強い人間が一番偉いわけではないもんね」



 天界でも下界でも、この世界では軍は大抵一番強い人間が一番偉い。しかし今回の帝国軍では事情が違い、一番強いヒカリたちは隷属の首輪で支配されている立場である。だから別の人間を軍の指揮官に据えたのだろう。



「よし、じゃあイースは僕と一緒に帝国陣に乗り込んで、彼らを捕まえるのを手伝ってくれ」


「あら、私がいないと首輪の解除ができないわよ?」


「いや、それは僕もできる。君が解析した首輪の情報を送ってくれさえすれば。それよりも君はここに居てヒカリに隠蔽の魔法をかけて置いてくれないと」


「そうね。……ちょっと待って?なら新しく捕まえてくる亜神たちの隠蔽はどうするの?まさか三十人の集団と共にここに飛んでくるわけにはいかないでしょう?」


「ああ、それなら、捕まえた亜神はここに転移させるよ。テントには誰も入れないようにすれば、彼らの存在が誰かに知られることもない」


「分かったわ。そうしましょう」



 そう言うとエレーナは僕に首輪の情報を送る。頭に情報が直接流れてくる、あの変な感じ。僕は頭を押さえると、「じゃあ行ってくる」とテントを出た。イースが後に続く。



「……ああ、そうだ」


「なんですか?エル様」


「イースの魔法ってものを作る魔法だったよね。こういうもの作れるかな」



 そう言って僕は、幻影魔法を使い「それ」の姿をイースに見せる。イースはその姿を少し眺めた後、「……ええ、できますが」と頷いた。



「しかし外見だけですと……」


「ああ、中身はいいよ。適当になんか――適当な重さの鉄とか詰めておけば」


「そうですか。しかし……何ですか?これ」


「ま、彼らの懐柔に使えるかと思ってね。皆が皆、ヒカリみたいじゃない可能性もあるし」



 僕は答えをはぐらかすと下位神に挨拶を済ませ、帝国陣へと飛び立った。



 ■



「では、報告会を始める」



 帝国軍、前線の塹壕近くに設置されたテントの中。特殊魔法を扱える彼ら達に用意されたテントの中には、総勢三十人ほどの仲間たち。発した声で、全員の視線が自分に集まったのを確認して、この戦場を任されたリーダー――タツキは再び口を開く。



「まず、皆よく頑張ってくれた。第二次攻撃の後、天界側に特段動きは見られない。帝国軍は、あれが天界軍の総戦力だったのではないかと予想している。この戦いにおいて僕らの勝利は確実――と、帝国軍の考えはそうらしい」



 タツキがそう告げると、テント内に「おー」とか「よかった」とかいった声が上がった。その声が控えめなのは、彼らがさほど働いていないからだろう。天界の第一次攻撃はほとんど通常戦力だけで撃退できてしまったからである。

 しかし、そんな中で一人だけ、疲れたように地面に座り込む者の姿があった。天界の第二次攻撃を受けた、イチカである。



「――特にイチカ。君たちの部隊は天界の第一次攻撃で押し込まれたのにもかかわらず、その数倍の人数だった第二次攻撃も凌いで見せた。軍の中には神もいたと聞く。よく撃退できたな」


「んにゃー、褒められるのは悪い気はしないけど、でも全部が私の功績でもないかなー」


「もちろんだ。ここにはいないヒカリの功績が大きい事も理解している。――さて、本題はそのことについてだ」



 タツキはそこで、視線をテントの皆に戻す。



「今日はじめ、天界による第一次攻撃が行われたことは皆の知るところだろう。総勢二千ほどの天使たちで構成された五つの部隊が、塹壕を襲撃した。帝国軍はほとんど損害なくこれを撃退。しかし唯一、ヒカリとイチカの担当する区間が被害を受けた。そしてそこに、天界は第二次攻撃を仕掛けて来た」



 タツキの言葉にイチカはそれを思い出したのか大きく息を吐いた。



「第二次攻撃の様子は僕も詳しく知らない。イチカ、それを今ここで報告してくれるか?」


「んー、分かったにゃ」



 イチカはよっこらしょと腰を上げると、タツキと入れ替わるようにして前に立つ。



「――……んん、じゃ、報告するにゃ。ごほん」



 と、イチカは咳払いをして、



「第一次攻撃から一時間後ぐらい、前とは比べ物にならないぐらいの天使たちの軍勢が塹壕を襲った。第一次攻撃でうちが被害を受けたのを知ってたのかにゃ。でも数はそれほど問題じゃないかった。問題だったのは――その軍勢の中に、神や高位天使たちがいたことにゃ。神が居ることで天使軍の士気は高く、また、高位天使たちの高機動な攻撃にも対処できなったことで、通常戦力は大きく損害を受けたにゃ」


「報告によれば、第三歩兵は全滅。迫撃砲部隊は半壊で、機関銃も半数に近い数が減らされたらしいな」


「うん。空をものすごい速さで飛ぶ高位天使に機関銃を当てるのは難しかったらしいにゃ。おまけに天使たちも対策を考えていたらしくて、土が盛り上がる魔法を使って銃撃を防いで近づいてきてた。だから私たちが戦うことになったにゃ。ヒカリが後ろにいる神を、私が高位天使たちを相手にして――まあ、私は問題なく勝てたにゃ。高位天使たちは硬さが取り柄だけど、私の能力はほとんどそれを無視できるからにゃ。問題はヒカリの方だけど――」


「ああ、それは僕の方が知っている」


「私は能力使ったら周りの様子が分からなくなるし。じゃ、後はお願いするにゃ」


「分かった。イチカ、ありがとう」



 ふーとイチカは息を吹くと、説明をタツキと変わる。



「さて、ヒカリの戦いは僕の見たことと、後、帝国兵たちの情報を基に報告させてもらう。まあ、と言っても皆見えていたと思うが」



 ヒカリと神の戦いは、空中で行われた。その姿はレーゲンタールのどの塹壕からも見えたはずだ。

 タツキの言葉に皆が頷く。



「ヒカリと神は空中で激しい戦いを繰り広げていた。ヒカリは機関銃やミサイルで応戦していたみたいだが、神はどうやってかそれを防いでいるように見えた。全く恐ろしいね。でもひときわ大きな機関銃の銃声の後に、一方が地面に落ちて言った。多分戦いは、ヒカリが勝ったんだと思う」


「――でもヒカリ、まだ帰ってきてないよね。それにあの爆発も。どうしちゃったの?」



 そう声を上げたのは、ヒカリとも仲の良かった少女。タツキは「今から説明するから」と言った。



「戦いに勝った後、ヒカリは少しの間そこで止まってたらしいんだけど、どこかに飛び去った。帝国兵の報告だと、レーゲンタールの向こう側――天界軍の本陣の方向に」


「えー、じゃあヒカリちゃんは一人で敵陣に乗り込んでいったってこと?」


「そうっぽいにゃ。まあヒカリちゃんの事だから大丈夫だと思うけど――あの爆発、核爆発でしょ?そんなことできるのヒカリちゃんしかいないにゃ」


「そうだね。僕が考えるに――ヒカリは天界の本陣に乗り込んでいったが、そこで何者かと交戦になった。多分神だろうね。で、同じように空中で戦いながら移動して、あの場所で攻撃を仕掛けた。それがあの爆発だと思うんだ」


「じゃあヒカリちゃんの勝ちってことかにゃ?」


「それは分からない。分からないけど――爆発からしばらくたつけど、未だにヒカリは帰ってきていない」


「じゃあヒカリちゃんが負けちゃったってこと?」


「それも分からない。少なくともヒカリが核攻撃しかないと判断した相手だ。よほど強い神のはずだから――その可能性も捨てきれないだろうね」



 タツキがそう言うと、テントに動揺が走る。ヒカリは彼らの中で最も強かった。それに勝る神が居るのだとしたら、この中の誰よりも強いと言う事になる。



「んにゃー、それがタツキが皆を集めた理由?」


「そうだ。仮に敵陣にヒカリより強い神が居た場合、僕らが戦わなければいけない。その準備をしてかなければならない、と言う事だ」


「でもヒカリを倒すような相手に俺らが勝てるのかよ。俺はとてもじゃないけどヒカリに勝ないぐらいの強さしかないぞ?」



 ダルそうに座っていた少年がそう声を上げる。しかしそれに、イチカは「そうでもないにゃー」と答えた。



「まあ、ヒカリちゃんは強かったけど、圧倒的ってわけでもなかったにゃ。二、三人が連携取って襲い掛かったら、多分勝てるぐらい。だったらここに居る全員が力を合わせれば、ヒカリちゃんより強い神が居たとしても余裕だにゃ」


「なるほど。イチカがそう言うのならそうなのだろう。しかし連携を取る――それがネックだ。だから今から、その具体的な方法を話し合おうと――」



 と、タツキがそう言いかけたその時だった。テントの外から爆音が聞こえ、兵士たちのざわめきが聞こえてくる。



「――……なんだ?」


「ねえ、タツキ君、これまずいんじゃない――」


「んにゃー、まさかもう来た?」



 テントの外から聞こえて来た「攻撃だ!!」と言う叫び声を聞き、タツキ達は顔をこわばらせる。これから対策を考えようと言う神が、もう襲来してきたのだと知って。

 しかしタツキはすぐに意識を切り替えると、仲間たちに指示を出そうと声を上げる。



「皆!ヒカリを倒した神かもしれない!!戦えるように準備して――」


「――ああ、まとまっててくれたの」


「――ッ!?」



 しかしもう手遅れだった。


 外の喧騒が突然シンと止んだかと思うと、次の瞬間テントの布が頂点から引き裂かれた。広がる切れ目から、明るい太陽の光と何かキラキラしたような障壁の色が飛び込んで来る。あまりの眩しさに目を細めるタツキ――その光の中から、二つの人影が降りて来た。

 地面につくほどの長さのある白い法衣。それを着るものが神であることを示す衣装だ。



「皆さんこんにちは。第二位、龍神と」


「第五位、生成神」


「二人合わせてー」


「……?」



 そんな二人の呑気な掛け合いとは裏腹に、タツキは驚愕から、かすれた声で「第二位と第五位……」と呟いた。

 天界が誇る最高戦力、最高神。その二柱が今、タツキの目の前に降り立った。



 ■



 テントを割いて上から入るという派手な登場をしたのがよかったのか、僕らが彼らのど真ん中に降り立っても攻撃を仕掛けてくるものは居なかった。最高神というネームバリューがそうさせたのかもしれない。やっぱノータイムで攻撃してきたヒカリが異常だったのかな。



「あ、まずは首輪を解除し解こうか」


「――……ッ!」



 彼らが呆けて立っている間に、僕はとっとと首輪にかけられた魔法を解除する。エレーナから魔法の情報をもらっていたから、解除は一瞬だ。彼らの首からパキンという音が聞こえ、皆が混乱したような表情を見せる。



「さて、支配が解けた皆様に改めまして。初めまして、エルです」


「……支配とは何のことだ?」


「またまたー、分かってるくせに。帝国が君たちにかけた、支配の魔法の事だよ。それで君たち、操られてたんだよ」



 そう言って僕は自分の首をちょんちょんと指さす。それにつられるように何人かが首に手を伸ばすと、効力を失った首輪がボロボロと崩れて地面に落ちた。

 僕に話しかけて来た子――仮にリーダー君とでもしようか――は、落ちた首輪をじっと見て、そしてまた僕の方に視線を戻す。



「……確かに僕たちは支配されていたようだ。さっきまであった――命令に従わなければならない、と言う気持ちが嘘のように消え去ってる」


「理解してくれて結構」


「でも――……なんで僕たちの支配を解いたんだ?それが帝国の弱体化につながるからか?それが天界の意志なのか?」


「いやあ、天界は関係ないよ。これはあくまで僕の意志。僕は君たちを救いたかっただけだ。人を異世界からさらって不当に支配するなんて許せない事だしね。うん、許せない」


「異世界、だと?」



 僕の言葉にタツキが眉を顰めた。ついでにイースの表情もわずかに変わる。何を言っているんだろう、みたいな視線。



「あれ、違った?てっきり君たち、ヒカリみたいに異世界の記憶を持っているのかと――」


「いや、そうだが――」


「――ヒカリちゃん?」



 タツキが答えるのを遮って、テントの奥からそんな声が上がる。視線を向けると僕を睨みつける少女の姿が。イースが警戒の構えを取るが、僕はそれを制止した。



「ヒカリちゃんをどうしたのかにゃ。君と戦って、負けたんでしょ」


「負けたって言うか――和解?話し合ったら分かってもらえたから、別に危害は加えてないよ。今も本陣に匿ってる」


「ほんとかにゃ?」


「ホントホント。と言うかそれが本題で――」



 僕は少女から視線を外すと、テントの中をぐるりと見回す。警戒の視線、おびえの視線、僕らに危害を加える意志がないことが伝わったのか、安堵の視線。



「――皆のことは僕が責任をもって守りたいと思ってる。だから一緒に天界に来てくれないかな」


「天界に?」


「うん。ヒカリも納得してくれたけど――僕と一緒に天界に来るなら、住まいと食事は保証しよう。それにある程度の贅沢も可能な暮らしを約束する。プールあり、テニスコートあり、温泉あり、テレビゲームありだ」


「え、行くにゃ」


「……にわかに信じれらないな」



 僕がそう言うと、少女と少年は対照的な反応を見せた。テントの中の反応もそう。少女のように目を輝かせて首を縦に振る者と、懐疑的な目を向けるものだ。

 ま、そうだよね。みんながみんな、ヒカリみたいにちょろいわけでもない、か。


 少女が「すぐ行こう」と口にするのを見て、懐疑的な目を向けた者たちの代表――少年がそれに待ったをかける。



「――皆、こんな甘言に騙されるな。こいつが本当のことを言ってる保証なんてどこにもない!」


「でもヒカリちゃんも納得してるらしいけど?」


「それも嘘かもしれないだろ!ともかく神の事なんて信じられるか!帝国で教えられたことを覚えてるだろ!」


「帝国は私たちを魔法で支配してたんだにゃ?そんな奴らの言う事の方を信じるのかにゃ?」


「それは……、いや、でも少なくとも彼らの言には真実も含まれていたはずだ。天界の悪行の中には到底許すことのできないものも存在する」


「ま、僕たちは天界とは関係ないんだけど」


「関係ないことはないだろ!」



 少年はどうやら僕のことが信じられないようで、何を言っても反論を返してきた。しかし、彼らの中に僕の言葉を信じない者がいることは、予想の内だ。と言うか、僕だったら信じない。こんな怪しい奴の言う事を信じてほいほい付いていく方がどうかしている。



「――分かった。じゃあやり方を変えよう。僕たちは君たちの協力がどうしても欲しい理由があってね。――イース」


「はい」



 パチン!と僕が指を鳴らすと、イースが魔法を発動させ、それがドスンと地面に落ちた。

 全長が人の背丈ほど、直径が一メートルほどもある楕円形の鉄の容器。そして片端についたしっぽのような尾翼。

 地面にめり込んだその爆弾の姿を見て、少年が息をのむ。



「僕はこれに耐えられる。彼女もね。だから――言いたいことは分かるよね?」



 これをここで爆発させても、僕らは無事でいられると言う事。もちろんブラフ、本当に爆発したら無事でいられるかは分からないし、そもそもこれには中身がない。

 だけど彼らにはそんな真実は分からない。だから僕の言葉に少年たちの顔は青ざめた。



「僕と一緒に来てもらうよ。なに、着いてきたって僕の言葉が嘘じゃなかったことが分かるだけだけど」



 そんな僕の言葉に、少年たちは小さく頷いた。




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