再会
「───それで、とりあえずお試しで付き合うことになった訳ねー。良かったじゃない!!」
「え、えへへ~♪」
昨日までとはうって変わり、幸せモードに包まれている私たち。
文香も自分のことのように喜んでくれた。
「お試しの間に、必ず柳田を物にするのよ!?」
「が、頑張りますっ!!」
「───何を頑張るの?」
その声にドキッとして振り返る。
そこには、大好きな柳田くんとニヤニヤしている永瀬くんが立っていた。
「へっ!?あ、いやっ…そのぉ~…。」
「アハハハ!!まじ、愛奈ちゃん可愛いわ!!」
永瀬くんが私を指差して笑う。
「ちょっ、馬鹿にしすぎだよ!?」
顔を真っ赤にして怒る私。
それを見て、柳田くんも微笑んでいた。
「寺岡さん、これ。」
そう言って、柳田くんは私に半分に折った小さな紙を手渡した。
訳も分からず、開いて思わず柳田くんの方をバッと見る。
「俺の連絡先。いつでも連絡してきて。」
「わわ!!ありがとうっ!!」
「あーあ、アタシにもこんなピュアな頃があったはずなのになぁー。」
文香がしみじみと呟いたので、永瀬くんはすぐにいじりモードに入る。
「え?文香ちゃんは常に男を手のひらの上で転がしてるイメージしか無いんすけど?(笑)」
「その言葉、そっくりそのままアンタに返してあげるわ。」
「うわああああああ!!酷い!!!!」
そんな話をしながら、私たちは食堂に向かうために歩き始めた。
私たちの前を歩く二人は、相変わらず言い合いをしている。
「仲良いよねー、あの二人…。」
「でも、お互いに彼氏彼女いるんだよね?」
「いずれ、別れてくっついちゃうんじゃない?(笑)」
イタズラっぽく笑う柳田くん。
その笑顔が普段とは違って可愛くて、見とれてしまう。
「──すみません。落としましたよ。」
肩をポンと叩かれて振り返ると、目の前に柳田くんの連絡先が書かれている紙が差し出されていた。
「あ、すみません!!!ありがとうございま……す。」
「───愛奈…?」
[ココロside]
目の前には、どちらかといえば琥珀寄りの、爽やかな顔のイケメンが立っていた。
愛奈って呼んでるって事は知り合いか?
でも、二人ともなんか様子が変だ。
「心結?どーした?」
俺たちがついて来ていないことに気づき、琥珀に声をかけられる。
近藤さんの方を見て目で会話をするが、近藤さんにもあの男の事は分からないようだ。
すると、男は、寺岡さんの手を掴み紙を手渡した。
「───まさか、こんなところで会うとはね…。」
寺岡さんは何も言わない。
…いや、言えないのか…?
「やっぱり愛奈は俺からは逃げられないんだよ。」
ゾクリ…!!
そう言って、その場を去る男。
今までに感じたことの無い狂気。
近藤さんが、寺岡さんに駆け寄る。
「愛奈?…愛奈っ?ねぇ、聞こえる!?」
俺たちも慌てて駆け寄ると、真っ青な顔をして震えていた。
「保健室に行こう。俺、先生に相談してくる。」
琥珀はそう言うと、走り出す。
俺と、近藤さんで寺岡さんの肩を支えると、歩き始めた。
…あの男…一体何者だ…?
[アイナside]
目が覚めた時には、私はベッドの中にいた。
真っ白い天井。あたりは薄暗くなっている。
「あ、寺岡さん!目、覚めたんだ!良かったぁ…!!」
視線を移すと、そこには柳田くんがいた。
「えっ!?柳田くん!?も、もしかして…寝顔見られた…?」
「あ、大丈夫。前も見てるから。」
冷静にそう言う柳田くん。
うわあああああ!!!!恥ずかしいよおおおおお!!!
「え、今何時…?」
「今、19時半かな?」
「そんなに寝てたの!?」
「近藤さんと、琥珀も一緒にいたかったらしいけど、どうしてもバイトのシフト変わって貰えなかったみたいで。」
「あ、そうなんだ…。ごめんね…。」
「気にしなくて良いよ。動ける?帰ろう?」
二人並んで歩くが、特に会話は無い。
柳田くん、わざと何も聞いてこないんだろうな…。
申し訳ないな…。
結局、私の家に着くまで一言も話さなかった。
「えっと…じゃあ、ここで。」
「う、うん!今日はありがとう!」
「気にしなくて良いよ。」
そう言うと、私の手を引き、ギュッと抱き締めた。
「や、や、柳田くっ…!?」
「今は詳しくは聞かない。」
「…え。」
「…でも、誰よりも気にしてるし心配してるから。
いつでも連絡してきて。本当に。」
そう言われ、目に涙がじんわりとたまる。
「…ありがとうっ…。」
「…困ったなぁ。」
「…へ?」
「俺、思ってるよりも寺岡さんに溺れてるみたいだ。」
「…ええっ!?」
私はバッと、柳田くんから離れる。
まさかの一言に、動揺が隠せない。
「…まぁ、気長に待ってるよ。」
そう言って、私の頭を撫でる。
私の顔は一気に赤く染まる。
「じゃ、また明日。」
そう言って、帰って行った柳田くん。
私はしばらくの間、その場を動けなかった。




