まさか
「───何泣いてんのよ。泣きたいのはこっち!!」
やめて…。やめてよ…。
「アンタなんかじゃ釣り合わないのにっ!!」
「何でお前なんだよ!!」
嫌だ。もう殴らないで…。
「アンタなんか───消えれば良いのよ!!!」
拳がふりかざされる。
「───っ!!!!」
ガバッと起き上がる。
…え?毛布…?
なんだ…夢か…。
夢だったということに安心しながら、私は辺りを見回す。
え?ここ、どこですか?
自分の家で無いことは分かる。
明らかに高級そうな家具。
柔らかいベッド。動くたびに体が下に大きく沈む。
そして、次の瞬間カチャリと、ドアが開き光が入り込んできた。
眩しさに目を細めていると、
「あ、目覚めたんだ!!」
と、男の人の声がした。
パチッと電気がつけられる。
そこで、その人に気がついた。
「…あれ?永瀬くん?」
永瀬くんは、私の側に来て座り込む。
「ごめんね?実は、愛奈ちゃんを家まで送り届けようと思ったらさ、愛奈ちゃん爆睡してたんだよね(笑)」
「───え!?(笑)」
「家の場所全然分かんないからさ、俺の家に連れてきちゃった。ごめんな?」
「いやいや!こっちこそ、迷惑かけちゃってごめんね…。」
「良いの良いの!」
あぁ。また迷惑かけちゃった…。
やっぱり、私どうしようもないな…。
「───愛奈ちゃん。」
そんなことを考えていると、突然永瀬くんの手が伸びてきた。
そのまま、頬に手が添えられる。
私は、驚きで全く動けなかった。
「…勿体ないね。こんなに可愛いのに。」
「…永瀬…くん…?」
「俺と付き合っちゃえば?…アイツの心の闇は深いよ。」
心の闇…。
「アイツを振り向かせようとするのは、至難の技だね。」
私は、何も言えなかった。
確かに、好きって気持ちが分からないというのは、なかなか厳しいとは思う。
でも、私は柳田くんが好きなの。
「愛奈ちゃん…。」
永瀬くんの顔が近づいてくる。
私は、顔を背け、永瀬くんの手を振り払う。
「…永瀬くん。私、柳田くんが好きだよ。」
「いつ振り向いてくれるかなんて分かんないけど…
柳田くんじゃないと…嫌なの。」
私がそう言うと、永瀬くんはニコッと笑った。
「安心した!」
「…え?」
「やっぱ愛奈ちゃんは、他の子とは違うみたい。」
「…他の子…。」
他の子って…
「───何してんの?」
扉の方から突然聞こえた声に、私たちは驚く。
そこには、柳田くんが立っていた。
私たちは、ベッドの上で密着しており、完全に勘違いされる状況だ。
「や、や、柳田くんっ…!!」
違うの!!と言おうとした瞬間、柳田くんに手を引かれる。
あっという間に、永瀬くんから引き離される。
え!? え!? えええっ!?
そのまま、リビングに連れていかれてしまった。
え、怒ってる?怒ってるんですかあああああ!?
「アイツはチャラ男だから、寺岡さんみたいな子は厳重警戒しといた方が良いよ。すぐに襲われるから。」
柳田くんは早口でそう伝えてきた。
「ご…ごめんなさい…。」
私はその場でしょぼんとする。
そういう子だって…思われちゃったかな…。
柳田くんが家にいるなんて知らなかったし…。
ああああ!!!!嫌われちゃったよおおおお!!!
私が軽くパニックになっていると、永瀬くんもリビングに入ってきた。
「心結~!!怒っちゃった~!?」
永瀬くんが甘えるような声を出しながら、柳田くんに近づいていく。
「別に怒ってない。」
「えー、怒ってるよー!!ごめんってばー!」
柳田くんは、買ってきたであろう食べ物や飲み物を、袋から出し乱雑に机に並べていく。
え、何か…こわいよ…。
ドサッとソファーに座ると、缶を空け喉に流し込む。
「──っはぁっ…!!
…何?早く座れば?」
今はとりあえず、逆らわないようにしようと永瀬くんは、柳田くんの向かい側に座った。
私は、空いている柳田くんの隣にそっと腰をおろした。
何か…どーしよおおおおおおおお!?




