モヤモヤ
「──えーと、それじゃどこ行く??」
授業が終わり、永瀬くんの車に乗り込んだ私たち。
助手席には柳田くんが座り、隣にはニヤニヤしている文香。
何か、すごい状況になってる。
「愛奈ちゃんは、やりたいこととか無いの?」
「えっ…!?私は…うーん…どっちかというと、皆と話がしたいなって…。」
「なるほどね!じゃあ、公園でスポーツしたり、食べたりするのはどうかな!?」
「お!永瀬!!それは名案よ!!」
「おし!じゃあ決定!まずは買い物行くぞー!!」
ホームセンターで、バドミントンセットや、フリスビーを買い、コンビニでも、サンドイッチやおにぎりを購入して、公園に辿り着く。
「おおっ!!結構広いじゃん!!」
「わああ!!久しぶりに開放的だわー!!」
永瀬くんと文香は、先に走って行ってしまう。
「え、ちょ、待ってよー!!!」
私の叫び声もむなしく、二人はどんどん小さくなっていく。
「…寺岡さん、重くない?持とうか?」
突然、柳田くんに手を差し出され、
私はものすごい勢いで首を横に振る。
「大丈夫!!柳田くんの方が重いもん!飲み物もあるし。」
「いや、俺男だから。重かったら言いなよ?」
「…ありがとう。」
柳田くんの隣を歩いているだけでも緊張するのに、そんな優しい声かけをされたら…。
私の顔は、みるみるうちに真っ赤に染まってしまった。
「あいつら、どこまで行っちゃったの?」
柳田くんの言葉に、あたりを見回すと確かに二人の姿が見当たらない。
「あ、あれじゃないかな?」
「え?どれ?全然見えないんだけど。」
「もしかして、柳田くんって視力悪い?授業中、いつも眼鏡かけてるよね?」
「そーなんだよ。両目0.2ぐらいしかなくてさ、今正直見えてないんだよね。」
「ええ!?それなのに、スポーツできるの!?」
「まぁ、何とかなるんじゃない?(笑)」
そう言いながら、笑う柳田くんに私は思わず見とれていた。
じゃあ…こうやって見てても…バレないのかな…?
そう思っても、こっちを向かれると視線をそらしてしまう。
「おーい!!早くバドミントンやろうぜー!!!」
楽しそうにラケットを振り回す永瀬くん。
その様子はまさに…子ども。
「…ガキだな(笑)」
思っていることがシンクロし、私はさらに舞い上がる。
それから、バドミントンやサッカー、フリスビーを使って思いきり体を動かしたんだけど…
私だけ、運動が出来ないって事を見せつけられた…!!
必然的に、柳田くんとペアになる訳で、迷惑ばかりかけてしまい、完全にへこんでいた。
柳田くんは、特に気にする様子もなく、楽しそうにしていたけど…申し訳なさ過ぎる!!!!
その後、芝生の上にシートを敷き、皆でご飯を食べることに。
文香と永瀬くんは、おやつを買ってくると言って、どこかへ行ってしまった。
「…寺岡さん、元気ないね?」
「…へっ…!?」
「もしかして、あんまり楽しくなかった?」
「そ、そんなことない!!!!」
私は思わず立ち上がる。
その様子に、柳田くんも少し驚いていた。
「…いや、私スポーツ出来ないから…迷惑かけちゃったなって…思って…。」
「え?迷惑?誰も思ってないと思うけど。」
柳田くんは、座りなよと促してくれる。
「寺岡さんは、まわりの目を気にしすぎだね。」
「…え?」
「もっと、しっかり自分の意見言ってさ、自分の思うままに行動しても良いと思うよ?俺は。
俺は、少なからずそうしてるし。」
「…自分の…思うままに…。」
柳田くんの言葉が、胸に染み渡る。
「…じゃあ、1つだけ。」
「ん?」
「…私、もっと柳田くんの事知りたい。教えてほしい。」
私の言葉に、柳田くんは優しく笑ってくれた。
「もちろん。どんどん聞いてよ。
その代わり、俺にも寺岡さんの事教えてほしい。」
「え!?え、も、もちろんです!!!!」
私の慌て様が面白かったのか、柳田くんは、お腹を抱えて笑い始めた。
柳田くんが、ここまで笑っているところを初めて見たので、私は唖然としていた。
「アハハハ!…あー、疲れた。」
そう言って、飲み物を紙コップに注ぐ。
一気にゴクゴクっと飲み干すと、私にも差し出してくれた。
私は、大丈夫!と断る。
「…はぁ。寺岡さんといると、何か落ち着くよ。」
「…えっ…!?」
昨日、フラれたばかりだというのに、一気に期待してしまう。
「…何か、柳田くんは、ずるいよ…。」
「…へ?」
「…私、諦めないから。」
芝を触りながら、私はボソボソと呟く。
「…寺岡さ───」
「───ただいまー!!!!おやつタイムにするよー!!」
ナイスタイミングといえばそうだが、二人が帰って来た。
「───え、柳田一人暮らしなの?」
文香もだが、私も当然驚いた。
「うん。まぁ大学生だし、珍しくは無いだろ。」
「へー!じゃあ、愛奈と同じじゃん。」
「「え?そうなの?」」
二人の声が重なり、私はふき出しそうになる。
「うん。実家遠いから。」
「へー!文香ちゃんは?」
「アタシは実家暮らしよ。一人暮らしとか面倒だし。」
「じゃあ、文香ちゃん以外全員一人暮らしじゃん。」
「「そうなの!?」」
永瀬くん=一人暮らしというイメージが無い私たちは、驚きの声をあげる。
「一人暮らしで車持ってるって…お金あるのね。」
その言葉に、永瀬くんは少し悲しそうに笑う。
「まぁ、父親が社長だからな。」
そうポツリと呟いた永瀬くんに誰も声をかけられなかった。
「よし!暗くなってきたし、そろそろ帰るか!!
文香ちゃんは、駅まで送れば良いかな?」
「え?あ、うん。よろしく。」
「心結と、愛奈ちゃんは家まで送るから。愛奈ちゃん、後で道案内してな!」
「あ、はい!」
文香と駅で別れ、私は今日の事を思い出していた。
二人には感謝しないとな…。
それにしても、色んな事があったな…。
今日の事を思い出しながら、前に座る二人を見る。
そして、そのまま私は意識を手放した。




