表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/36

淡い期待





「───もう!!いい加減にしてよね!?」





ああ。まただ。またこの時間が始まる。




「どこまでアタシを困らせれば気がすむの!?」




これでもかと、頬を打ち付ける。




痛い…痛いよ…。



「アンタもよ!!波奈!!」



頬を何度も何度も叩かれた波奈は、大声で泣きわめく。




「うわああああん!!うわあああああ!!」




その声に、その人は更に逆上する。






「ちょっとは黙ってられないの!?もう、本当に…



         ───産まなきゃ良かったっ…!!!」







「…波奈。大丈夫。お兄ちゃんがついてるからな?だから、もう泣くんじゃないぞ?」




「…大丈夫だよ、お兄ちゃん。



            波奈…泣かない…もん…!!」











「───ろ?心結!?」




気づけば、男子トイレの中。

酷く汗をかいていた。


「…琥珀?あれ…俺…?」


「また昔の事思い出してたんだろ?落ち着いたら、また教室戻ろうぜ!」


琥珀はニッと笑顔を浮かべる。



ああ。俺は、その笑顔に何度救われただろう。



「ありがとう。助かる。」




[アイナside]


ボーッとしたまま、授業を受けていると、後ろで椅子に座る音がした。

驚いて振り返ると、永瀬くんが座っていた。

帰ってきたんだ…。


「あ、愛奈ちゃん。今どこやってる?」


教科書を持ちながら、そう尋ねてくる永瀬くん。


「えっと、今78ページ…。」


「オッケー!ありがとう♪」


その笑顔に世の女性はイチコロなんだろうな…と思いながら前を向く。

本当は、さっきの事が聞きたくてしょうがないのだが、私にそんな勇気もなく、諦めて授業を聞いていた。



左前方に目を移すと、柳田くんも帰ってきて、授業を受けている所だった。



柳田くんのこと…私何も知らないんだよね…。


知りたいな。もっと。


知りたいって思うことは…良くないことなのかな…?


もっと、もっと…話がしたい。


柳田くんと、仲良くなりたいな…。






「───柳田くん!!」


昼休憩になり、授業終わりの柳田くんに直ぐ様声をかけた。


柳田くんは、酷く驚いていた。

しかし、すぐに普通通りに戻る。


「あ…さっきはごめん。急に出て行って…。」


「え、いや!全然!!…顔色悪かったけど…大丈夫?」


「うん。心配かけたんならごめん。」


「あ、良いの良いの!…えっと、柳田くん。」


「ん?」


「…これ、ハンカチありがとう。」


私は、昨日のハンカチを取り出すと柳田くんに手渡す。

その時に指が触れ、私は慌てて手を離す。

柳田くんは、いたって冷静だ。



「あー、わざわざ洗濯してくれたんだ?ありがとう。」


「ううん!こちらこそ!」


「…それと、あんまり泣くなよ?」





「…え?」





「…泣いたってろくな事ねぇから。」





そう言って俯いた柳田くんは、悲しそうな顔をしていた。


「…うん!分かった!!」


そう言って笑うと、柳田くんも少し笑ってくれた。


「…あの…もし良かったら…放課後、遊びませんか?」


「…へ?あ、もちろん!」


「え!?本当に!?」


「うん。どうせ暇だし。」


「そ、そっか!!楽しみにしてるね!!」


にやける顔を手で隠し、私は文香の元へ走っていった。



[ココロside]




「───付き合えば良かったのに。」




食堂でご飯を食べている時に、琥珀がそう投げかけてきた。


「…え?」


ズルズルとうどんをすすると、俺は箸を置く。


「愛奈ちゃん、良い子じゃん。」


そう言うと琥珀はペットボトルの水を喉に流し込んだ。


「確かに良い子なんだろうな…。」


「だろ!?俺なら即オッケーだったのになぁ。」


悔しそうに呟く琥珀。

そんな琥珀を見て、俺はフッと笑う。


「俺は琥珀とは違うからな。それに、いまいち好きって気持ちが分かんねぇし。」


俺がそう言うと、琥珀は黙り込んだ。


それを機に、俺は再び箸を持つ。




「───今まで付き合った女は?」




「…そうだな…。結局よく分かんなかったよ。好かれるって感じも分かんなかったし。」


「勿体ないな。お前、顔も性格も良いのに。」


「そう言ってくれるの琥珀だけじゃん。」


そのまま、再びうどんをすする。





「…まぁ、1度だけ人を愛したって言うなら、それが妹になるのかな?」





その言葉に、琥珀は固まった。

そして、辛そうな顔をする。




「…そうだな。お前、本当に大事にしてたよな…。」




黙って、ご飯を口に運び続ける。



「…さっきも、寺岡さんと妹が重なったんだ…。それで、色々思い出してさ…。」


「…あー、確かに似てるかもな。愛奈ちゃん。」


「だよな。俺も、今日それに気づいてさ…何か放っておけないって思ったんだよな。」


琥珀は、少し考えて呟く。




「…好きになるのは…逆に難しいのかもな。」




俺も、その言葉に、箸が止まる。

しかし、ゆっくりと続けた。



「…でも、俺は寺岡さんに賭けてみるよ。」


「賭ける?」


「昨日彼女が言ったんだ。好きにしてみせるって。」





『───じゃあ、好きにしてみせます!!!』





昨日の寺岡さんの様子を思い出し、俺は笑みを浮かべる。




「…好きに…ならせてよ───。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ