番外編②
プルルルル、プルルルル、プルルルル~♪
お風呂から上がると、着信音が鳴り響いていた。
慌てて手に取るが、ちょうど切れてしまった。
ディスプレイには"愛奈"と記されている。
その文字を見て、俺は深くため息をついた。
「…何だよ。別れ話か?」
スマホをソファーに投げ捨てると、俺は台所へと向かう。
冷蔵庫を開けて、酒を取り出すと缶を開ける。
プシュッ!と良い音が響き、そのまま、喉に流し込む。
最近は、お酒に頼ってばかりだ。
愛奈の事は、ずっと気にかかっていた。
連絡が取れなくなってから、何度連絡しようと思ったか。
でも、毎回連絡をするのは俺からだ。
だから、今回は向こうから連絡が来るのを待っていた。
でも、いざ連絡が来てみると怖くて出ることが出来ない。
別れるなんて考えられない。
愛奈のおかげで俺の人生は変わったんだ…。
愛奈がいなくなったら、俺は生きていける気がしない。
そんな事を思っていると、再び着信音が鳴り響く。
少しの間考えて、スマホを手に取る。
「…もしもし?」
[アイナside ]
『…もしもし?』
久しぶりに聞いた心結の声。
それだけで、私の鼓動は早くなる。
「あ、もしもし…?愛奈です…。」
『ハハハッ!知ってますー。』
その話し方。笑い声。
全てが久しぶりで、私の心に染み渡っていく。
『どうしたの?何か用事?』
「あ、用事って程じゃ無いんだけど…。
何かね、文香たち結婚するらしいの。」
「え!?あの二人が結婚!?」
私の報告に驚きの声をあげる心結。
『友達が結婚するとか信じられないな。』
「もうそんな年になったんだねー。」
二人でしみじみと話をしながら、私はある話題を提供する。
「…あ、ねえ心結?」
「…ん?どうしたの?」
「…あの…24日か25日って暇かな?」
「24か25?…大学だなー。」
あー、やっぱり忙しいのか…。
私が黙っていると、心結が口を開く。
「…何か用事だった?」
「え?あ、ううん!何でもないの!!頑張ってね!」
「うん。愛奈も仕事頑張って。」
「ありがとう。あ、じゃあ明日早いからもう寝るね。」
「うん。おやすみ。」
「おやすみなさい!」
電話を切って、私はベッドに倒れ込む。
私、本当に馬鹿だな。
素直に会いたいって伝えれば良いじゃん。
別にクリスマスじゃなくても、いつでも会えたらそれで良いんだって。
それに、大学があるんならその後でも会おうって言えば良かったじゃん。
何で言えないんだろう?
何でその一言が出てこないんだろう?
自分が情けなくて、目に涙がジワジワとたまってくる。
はあ、何してるんだろう。
ねえ、心結。
会いたいよ───。
[ココロside]
「柳田くん。これどうぞ~♪」
授業前に意味もなく教科書を見つめていると、前の席の女の子が話しかけてきた。
目の前には、チョコレート。
「へ?あ、ありがとう。」
「よいクリスマスを~♪」
そう言って前を向いてしまった。
そのチョコレートを見つめながら、今日がクリスマスだった事に気づいた。
日々の忙しさにそんなことは完全に忘れてしまっていた。
手帳を取り出して、日にちを確認すると12月25日。
行事の所にもクリスマスと書いてある。
クリスマスか~。
まあ、授業のある俺たちには関係ないことか。
授業が終われば、すぐに家に帰りバイトへと向かう。
そういえば、今日のバイトもクリスマスケーキの売り出しだったな。
サンタの格好をして、店頭でケーキを売り続ける。
外の寒い空気が身にしみる。
家族、友達、カップル、色々な客が訪れては
幸せそうな顔をしてケーキを買っていく。
そんな人の笑顔を見ていると、俺も自然と笑顔になっていた。
そんな中、一人の女性客が現れた。
「すみません、このケーキひとつください。」
その女性が愛奈に似ていて、俺は思わず見とれてしまっていた。
「…あの…私の顔何かついてます?」
「え?あ、いやすみません!ケーキひとつですね!
3400円になります。」
お金を貰い、ケーキを袋につめる。
「今日は恋人と過ごすんですか?」
俺は思わず尋ねていた。
「…え?」
「あ、すみません!僕の彼女に似ていたので、気になってしまいまして…。」
「あー、そうなんですか!…ええ、久しぶりに彼が帰ってくるものだから、奮発して買っちゃおうかな?ってね。」
その人の笑顔は本当に幸せそうで、とても温かい。
「あなたは?その彼女さんと過ごすのかしら?」
「僕は…。」
その時に、愛奈の言葉を思い出した。
「…あ、ねえ心結?」
「…ん?どうしたの?」
「…あの…24日か25日って暇かな?」
「…あ、もしかして聞いちゃいけなかったのかしら?」
「あ、そんことないですよ!」
「そう。お互いに素敵なクリスマスを過ごしましょうね。」
そう言って去っていった女性。
しばらくの間後ろ姿を見つめていると、突然動きがピタリと止まった。
そして、そのまま凄い勢いで走り出し男性に飛び付く。
その光景を見ながら、微笑ましいと思うのと同時に、申し訳ない気持ちになる。
愛奈は、クリスマスを一緒に過ごそうとしてくれてたのか…。
普段自分から連絡をしない愛奈が、一生懸命誘ってくれようとしたのに、簡単に断っちゃって…。
俺、何してるんだろう?
はあ、とため息をつく。
「そんな顔してたら幸せが逃げますよ。」
「あ、も、申し訳ございません!いらっしゃいま…せ。」
顔をあげて驚く。




