今さら
「───終わったー!!!夏休みだー!!!」
終わった瞬間、永瀬くんがそう言いながら伸びをする。
「本当だね!お疲れさまー!」
「愛奈ちゃん、解答欄全部埋めてたし大丈夫っぽいね!」
「え!?見てたの!?」
「違う違う!!集めるときに見えただけだから!!」
すごく慌てている永瀬くんを見て私は大笑い。
本当に、チャラい見た目からこの純粋さは想像も出来ないよね(笑)
「───はい、それでは解散。」
先生の声で、皆は一斉に立ち上がる。
前方に目をやると文香も立ち上がっていた。
しかし目が合うことは無く、そのまま横を通り過ぎようとする。
その時───
「───文香ちゃん、バイバイ。」
私の後ろで永瀬くんの声がした。
文香は立ち止まる。
「…バ、バイバイ。」
顔をあげること無くそう言った文香は教室を出ていった。
「…うーん、まずかったかな?」
気まずそうに私の顔を見る永瀬くん。
「そんなこと無いよ!…私、声かけられなかったもん…。」
「…そっか。まぁ、良いかー。」
「お疲れ。」
気づけば、隣に柳田くんが立っていた。
「あ、お疲れさま!!」
私たちは他愛もない話をしながら、大学を後にした。
文香がいないと、永瀬くんも寂しそうだな…。
「まあ、いつでも連絡しろよ。
寺岡さんも地元帰るから暇になるしな。」
「何だよー!俺は愛奈ちゃんの代わりってことー!?」
「当たり前だろ(笑)」
「うわー!!俺へこんだわー!(笑)」
楽しそうに話をする二人。
「…もし…。」
私が口を開くと、二人は話すのを止めた。
「…もし、文香に何かあった時は…よろしくね。」
二人はニコッと笑う。
「当たり前!」
永瀬くんは即座にそう答えてくれた。
本当に、素敵な仲間を持って幸せだね?
文香。
[フミカside]
夏休みに入ってから2週間が過ぎた。
誰かと遊ぶということも特に無くバイトに追われる日々を送っていた。
今日は、久々の休みということで服でも買おうと駅前までやって来た。
ボーッと歩きながら、アタシはあることに気づく。
…あれ、永瀬の車?
そう思った瞬間、車から永瀬と柳田が下りてきた。
まわりの音が何も聞こえなくなる。
まるで時間が止まったかのようだった。
二人は、アタシに気づくことは無かった。
安心したような残念なような…。
複雑な想いで胸がいっぱいになる。
永瀬…。
テスト終わりに挨拶をしてくれた、アイツの優しい声がずっと耳から離れない。
アタシは、いつの間にここまで永瀬に溺れてしまっていたんだろう。
今さら気づいても、もう遅いのにね。
そんなことを考えて歩いていた、その時
後ろから誰かに抱きつかれた。
…え?
何っ…?
「…やっと会えた。」
その言葉に、背筋が凍る。
どうして…?
「…ぐすっ…!」
何で、泣いてるの?
「ねぇ、離れてよ。」
アタシの言葉に、更にぎゅうっと抱き締めてくる。
「お願いだから、離して。」
「嫌だ。
相手しろよ。文香───。」
その言葉に、アタシは先程よりも抵抗を強くする。
「調子に乗らないで、純哉っ!!」
「うるせぇな、良いからついて来いよ。」
そのまま、駅の方へと歩いていく。
握られた手を、振りほどくことは出来ない。
グイグイと腕を引っ張られる。
その内に誰かとぶつかってしまった。
「あっ、すみませんっ!!」
その姿を見て、アタシも純哉も思わず足を止めてしまった。
「…文香ちゃん…?」
そこには酷く驚いた表情の、永瀬と柳田がいた。
永瀬の視線は、アタシの手元へ。
純哉と手を繋いでいる状況。
ああ、完全に勘違いされたね。
もうダメだ。
「…ごめんね。」
小さく呟く。
純哉は、チッと舌打ちをするとアタシの手を更に引いた。
アタシはそのまま、トイレに押し込まれた。
中には、ちょうど誰もいなかった。
そのまま、壁に押さえつけられる。
「はあっ…はあっ…!!お前っ、何泣いてんだよっ?」
息をきらしながらそう尋ねる純哉。
アタシは純哉から目をそらしたまま何も答えない。
「チッ。めんどくせぇ。」
純哉はそのまま、アタシの太ももに手を伸ばす。
「っ!?や、やめてよ!!離して!!」
アタシがそう叫ぶと、片手で口を押さえられてしまった。
「んんんんっ!!んーっ!!!!」
「黙ってろよ。乱暴にされてぇのか?」
やめて。やめて。
触らないでよっ…!!
涙が次から次へと流れてくる。
「今の彼女、なかなかヤらしてくれねぇんだよっ…!!
お前、俺の事好きなんだろっ?
諦めきれてねぇんだろ!?
だったら、おとなしく抱かれてろよ!!」
違うっ。
確かに、少し前まではそうだったかもしれない。
でも、もう純哉の事は好きじゃないよ。
あの時は流されてついていってしまった。
抱かれてしまった。
でも、今は違うよっ…!!
最近頭に浮かぶのはいつだってアイツの事で。
アイツの笑顔で。
その瞬間、下着に手がかかる。
アタシは、純哉の手に噛みつく。
「───っ…!?」
純哉の手が少し緩んだ瞬間に、アタシは叫んでいた。
「助けてっ…助けて、永瀬っ!!!!」




