崩壊
「文香ちゃーん!」
名前を呼ばれ振り返ればあのチャラ男…
じゃなくて永瀬。
「どうしたの?」
「テストどうだった?」
「最後の論述だけは不安だけど、まあ良い感じだわ。」
アタシは、鞄に荷物を詰め込みながらそう言う。
テストも残すところあと1日になり、少しだけ気が楽になってきた。
「論述か~。まぁ、俺は大丈夫っぽいな。」
「ちょっと、自慢しに来たわけ?」
「あー、違う違う!!違うんだよ!!」
慌てて否定する永瀬。
「良かったら一緒に昼御飯食べないかな~?って思って…。」
「お昼?…まぁ、ちょうどお腹すいてたし…別に良いわよ。」
あ、まただ。
いつも、こういう言い方になってしまう。
「本当に!?うわ、えっと、二人だけど良い…よね?」
「へ?二人なの?」
二人で過ごすことの多いアタシたちだが、二人で出掛けるというのは実は初めてだ。
「だって、心結は愛奈ちゃんとラブラブしてるし…。」
「そ、そうよねっ。それなら仕方ないわね。」
「良いの!?何食べる!?」
途端に目を輝かせる永瀬。
その素直さに自分が恥ずかしくなる。
「パスタが食べたい。」
「分かった!よし、今すぐ行こう!」
20分ほど車に揺られ、気づけば駅前のパスタ屋さんに着いていた。
「ここ、オススメなんだよね!」
「すごい美味しそう…!」
素直に感想を漏らす。
「やっぱり!?女の子は皆喜んでくれるんだよね♪」
「女の子…。」
女の子と聞いてチクリと痛む心。
アタシって本当に勝手。
過去の女の子に嫉妬してる。
馬鹿みたい。
「入ろっか!」
永瀬に促されてお店に入る。
おしゃれな雰囲気のお店。
うわぁ、店内もすごくかわいい!!
アタシがわくわくしているのが伝わったのか、永瀬もニッコリと笑ってくれた。
「───美味しかった♪」
お腹がいっぱいになった頃にはアタシも上機嫌。
「また連れてきてね♪」
「うん!もちろんだよ!!」
良い雰囲気のままお店を出る。
そう良い雰囲気で。
それは、急に壊されてしまったけどね。
「───文香?」
その声に、私は勢いよく後ろを振り向いた。
隣にいる永瀬も、一緒に振り向く。
そこには、アタシの元カレがいた。
[コハクside]
「やっぱり文香だ!!」
文香ちゃんに声をかけた男は、目を輝かせる。
俺とは違って、落ち着いた雰囲気をもつその男。
瞬時に、文香ちゃんの元カレだということが分かった。
何か…タイミング悪いよなー…。
俺が不満げにその男を見ると、バチッと目が合った。
「…あ、ごめん。もしかして邪魔しちゃった?」
気まずそうに俺たちを見る男。
見たら分かるだろ。
だったら最初から声かけるなよな。
俺がそう思った時
「──そんなことないよ!用事はもう済んだし!」
チクリ。
その言葉が俺に突き刺さる。
用事…か。
「え、でも雰囲気から彼氏かと思ったんだけど…。」
「ち、違うよ!ただの友達!!」
必死で否定する文香ちゃん。
その様子を見ると、胸が締め付けられる。
そうだよ。
確かに俺たちは友達だよ。
でも…。
「純哉はどうしたの?今から仕事?」
「え?あー、俺は適当にブラブラしてただけ。」
俺の心はモヤモヤする。
何だ。
何だ、この気持ち悪い空間は。
「あ、そこの君、名前は?」
そう尋ねられ、俺は思わずその男を睨み付ける。
その男も、俺の態度に少し顔をしかめる。
「永瀬琥珀です。」
「…永瀬くんね。君が、文香のトモダチ。
僕は、廣谷純哉。
いつも仲良くしてやってくれてるみたいでありがとうね。」
"トモダチ"という言葉を強調され、モヤモヤが深くなる。
挑発的な言葉。瞳。口調。
瞬時に思った。
俺はコイツが嫌いだ。
「あ、そういえば文香。俺の家に忘れ物してるよ?」
「え!?そうなの!?」
「時間あるなら、ついでに取りにおいでよ。」
「分かった!…あ、永瀬。」
文香ちゃんは思い出したように俺を見る。
「あー、じゃあ俺帰るね。あと1日テストなんだから、勉強忘れるなよ?」
「あ、当たり前でしょ!!」
文香ちゃんは、いつものように俺に歯向かう。
「じゃあ、また明日。」
俺が帰ろうとした時
「あ、永瀬っ!!」
文香ちゃんに呼び止められ、振り返る。
「た、楽しかった。ありがとう…。」
その言葉に俺はニコッと笑う。
そして、車へと歩き始めた。
車に辿り着いて気づく。
あれ?俺泣いてる?
さっきの文香ちゃんの言葉が、"今まで楽しかった。ありがとう。"に聞こえて
このまま、いなくなっちゃうんじゃないかって思って
文香ちゃんが元カレを忘れられないのは知ってる。
それでもいつか自分を見てくれるだろうって思ってた。
側にいるだけで良かった。
それなのに、俺はいつからこんなにも欲張りになったのだろうか?
文香ちゃんの気持ちが少しずつ自分に動いてるって知ってた。
頑張れば手に入れられるって思った。
でも、アイツの存在はそんなにも大きいのか。
完全に俺の負けだ。
イライラする。
あの男にも、文香ちゃんにも…。
でも、そんな自分が情けなくて、みっともなくて
涙が止まらない───。
暗い話を書いている時はすごくイキイキしてます(笑)
幸せなシーンを増やしたいのですが
うまく表現できなくて…
難しいですね。




