お泊まり④
目を覚ました時には、あたりは暗くなっていた。
私は一人、リビングのソファーで眠っていた。
「…んんっ…?あー…お風呂入らなきゃ…。」
私は眠い目を擦りながら、ボーッとしたままお風呂場へと向かった。
ガチャリ。
「…あ。」
「…え?」
一気に目が覚めた。
目の前には、ドライヤーを手に持っている柳田くん。
上半身裸の状態で、バスタオルを頭から被っている。
濡れた髪の中から覗く瞳や、引き締まった体は妙に色っぽくて・・・・じゃなくて!!!!
「し、し、失礼しましたっ!!!!」
そう言って思いきりドアを閉める。
そして、リビングに逃げ込んだ。
私、最悪じゃん!!
変態じゃん!!
嫌だああああああ!!!!
大人しく寝てれば良かった!!!!
頭をソファーに打ち付けていると、グイッと頭を後ろに引き寄せられた。
そのまま上を見ると柳田くんと目が合う。
待って待って待って待って!!!!
「落ち着けって。」
柳田くんがあまりにも冷静にそう言ったので、少しずつ心臓の音も落ち着いてきた。
「うん、大丈夫だね。お風呂入っておいで。」
そう言ってパッと手を離される。
しかし、私はそのままの体勢で柳田くんの事をジーっと見つめていた。
「…え、どうしたの?」
柳田くんは、そう尋ねながらあぐらをかいて座る。
私はその上にポスッと倒れ込んだ。
「…!?」
少し動揺した様子の柳田くんだったが、そのままにしてくれた。
スマホを手に取っていじり始める柳田くん。
その姿さえも様になっている。
「…柳田くんは…何でそんなに大人なの?」
「…大人じゃないってば。」
「ううん。大人だよ。私なんかよりもずっと…。」
スマホから目を離すと、私の目を見つめる。
「寺岡さんは子どもで良いんだよ。」
「…え?」
そう言うと再びスマホに視線を戻す。
「寺岡さんが大人だと逆に困るかなぁ?」
「…どうして?」
「…俺は寺岡さんに恋を教えてもらっただろ?
だから、これからの事は、俺が教えてあげたいんだ。」
「…柳田くん…。」
スマホをソファーの上に置くと、私の脇の下に手を入れて、グイッと体を持ち上げる。
そのまま、後ろからギュウッと抱き締めてくれた。
ボディーソープの甘い香り。
首筋にあたる濡れた髪の毛。
伝わる心音と温もり。
柳田くんの全てが、私の心を掻き乱す。
「…余裕なんて全く無いんだよ。
寺岡さんの前では、大人でいたいって思うけど、会えば触れたくなる。
ずっと抱き締めていたいし、何回もキスしたい。
今だって、少しでも気を抜けば押し倒しちゃいそうで…。」
柳田くんが話す言葉の一つ一つが、私の心に染み渡る。
そして、心音をどんどん早めていく。
「…でも、大切にしたいんだ。
そんな俺の欲でめちゃくちゃになんてしたくない。
それぐらい、本気だし魅力的だよ。寺岡さんは。」
「…や…なぎだ…く、ん。」
声が掠れる。うまく出ない。
私だって、初めて人を好きになった。
柳田くんのことは本当に大切にしたいんだ。
私は、柳田くんの頭にそっと触れる。
「…私も…本当に好きだよっ…?」
そう言った瞬間、視界は反転。
気づけば、床に押し倒されていた。
ポタポタッと雫が顔に落ちる。
柳田くんの潤んだ瞳が、怪しく光る。
そして、その姿はひどく妖艶だった。
「…寺岡さんっ…。」
そう言って、優しく唇を落とす。
角度を変えて何度も、何度も。
そして、顔に落ちた雫をペロッと舐めとる。
ビクッと反応する体。
ダメ…。
おかしくなりそうっ…。
「…口開けて?」
そう言われ、うっすらと口を開く。
突然入ってきた舌に私は驚くが、そのまま受け入れる。
「…んっ…!ふぅっ…!!」
離れる唇。
絡み合う視線。
荒くなる息。
その全てが私たちを狂わせていた。
もう、このままされてもいい…。
そう思って、柳田くんの首に手を回そうとした時───
「───これでおしまい。」
突然、柳田くんに終わりを告げられる。
私から体を離す柳田くん。
私は呆然とするばかり。
「アハハッ!…残念そうな顔してるよ?」
そう指摘され、私はバッと顔を隠す。
「…流石に琥珀の家でやるのはなぁ…。」
は!!
そうだった!!
今、お泊まり勉強会してたんだった!!!!
「続きはまた今度ね。ほら、お風呂入っておいで。」
何気に続き宣言をされた私は、逃げるようにお風呂場へと向かった。
…き、き、緊張したああああ…!!!!
そして、思い出す
柳田くんの瞳。
唇。
舌。
吐息。
再び真っ赤に染まる私の顔。
はぁ…。
お風呂入ろう。
思い出さないようにするためにも、私はお風呂に入ることにした。




