お泊まり②
「───ハッハッハー!!俺の手によればこんな事簡単なんだなー!!!!」
たこ焼きが綺麗に出来たということで、永瀬くんは自慢気にそう叫ぶ。
「はいはーい、冷めない内に食べなよ。」
柳田くんは、淡々とたこ焼きを器に盛っていく。
「ありがとう!」
「永瀬はずっと焼いてれば?(笑)」
「ちょっと、文香ちゃん酷いよ!!(笑)」
二人のやり取りを見ながら、私は複雑な気持ちになる。
早く付き合っちゃえば良いのに…。
「───あ、歯ブラシ忘れたんだけど。」
「「え?」」
突然柳田くんが鞄を漁りながらそう呟く。
「歯ブラシ?ちょっとあるか見てみるわ。」
「あ、悪い。」
永瀬くんがソファーから立ち上がる。
今、文香はお風呂に入っている。
「歯ブラシ無いなぁ…。」
「だよなぁ。ちょっと、コンビニまで行ってくるわ。」
柳田くんは、財布を持って立ち上がる。
「寺岡さん。」
「へ!?」
突然名前を呼ばれ驚く。
「一人じゃ寂しいし、着いて来てくれない?」
「え、あ、はいっ!!」
大きな声で返事をすると、永瀬くんが笑いをこらえているのが見えた。
「フフッ…!!早く、行っておいでっ…!」
「ああ!すごい笑ってる!!!」
「はいはい、良いから行こう。」
そのまま私の手を引く柳田くん。
「へっ!?ちょ、手っ…!?」
「行ってらっしゃーい!」
部屋の中から、楽しそうな永瀬くんの声が聞こえる。
玄関で靴を履くと、扉を開けて待ってくれている。
「ありがとう。」
「はい。」
そのまま、手を差し出してくる柳田くん。
私は戸惑ったまま固まる。
「…戸惑いすぎだから(笑)」
柳田くんは、必死に笑いをこらえている。
皆、私を見て笑いすぎじゃない!?(笑)
私は恐る恐る柳田くんの手の上に手を重ねた。
それを見て満足げに笑うと、ギュッと握り締めて歩き始める。
柳田くんの大きい手が、温もりが私を包み込む。
き、緊張するなぁっ…!!
[フミカside]
「あれ?愛奈たちはどうしたの?」
お風呂から上がって、ソファーに座りテレビを見ていた永瀬に話しかける。
「んー?二人ならイチャイチャしに行ったよ(笑)」
「あー、なるほどね。まぁ付き合いたてだし仕方ないわね。」
髪の毛をふきながら、永瀬の隣に腰かける。
「良いなー。俺も女の子とイチャイチャしたいなー。」
その言葉に、少しドキッとする。
「それなら…。」
「んー?」
「…それなら…
アンタだったら、誰かに頼めば出来るでしょ。」
その言葉に、こちらを向きニッと笑う。
「まあね♪」
ああ、またやってしまった。
素直じゃない、意地っ張りなアタシ。
「じゃあ、文香ちゃんに頼んでも良いの?」
「…え?」
その言葉に、アタシの鼓動は高鳴る。
甘えるような表情でこちらを見る永瀬。
私が口を開こうとした瞬間鳴り響く着信音。
二人の視線は一気に、私の携帯に移る。
「───元カレ?」
その言葉に焦り、携帯を素早く取る。
「…ま、まあね。」
「ふーん?」
永瀬は肩肘をつくと、アタシの携帯を奪い取った。
「ちょっ…!?」
そして、通話拒否のボタンをポチっと押す。
私は、ただただ唖然とするばかり。
はい♪と、携帯を返してくる。
「出なくて良いんじゃない?」
テレビを見ながら、そう言い放つ。
「だって、そいつからフってきたんでしょ?
そんな奴の電話に出たら負けだよ。」
アタシは少しの間固まっていたが、その言葉に少し肩の力が抜けた。
「ハハッ!…それもそうね。」
アタシも髪の毛をふきながらテレビの方に目を移す。
…何か…何だろう…。
すごいドキドキする。
すると、永瀬がアタシの肩にもたれてきた。
「え、ちょっ…!?」
「…良いじゃん。少しだけ。」
そう言われると何も言えなくなる。
アタシは、恐る恐る永瀬の頭を撫でようとした。
その時
「文香ちゃんから俺と同じ香りがする…。」
「…っ!?」
「…何か、すげぇ落ち着くなぁ…。」
や、やばい。
心臓の音、聞こえてるんじゃないの?
鎮まれ…アタシの心臓っ…!!
「ねぇ、文香ちゃん。」
「な、何っ…?」
「早く元カレの事なんて忘れちゃいなよ。」
「…え?」
思わぬ言葉に、アタシは永瀬の方を見た。
永瀬は相変わらず、テレビの方を見ている。
「…な、何で…?」
そう尋ねてしまうのはアタシの悪い癖。
素直に受け取れば良いのに。
「毎日無理して笑ってる。楽しくなさそう。」
そう言われ、アタシは何も言えなかった。
愛奈には強がって、言ったけど正直元カレの事は忘れられない。
フラれたのだって、急に向こうに好きな人が出来たからだ。
確かに、永瀬には気がある。
でも、元カレの方がアタシの中では存在が大きいのだ。
フラれた身だから、何も言えないけど、まだ好きなの。
夕方も電話が来て、最初はどうしようかと思ってたけど、声が聞ければやはり嬉しかった。
でも、永瀬は全部分かってるんだな。
「アンタといるのは楽しい。ちゃんと笑ってる。」
珍しく素直にそう伝えると、永瀬は初めてこちらを向いた。
「何、今の。すげぇ可愛い。」
真顔でそう言う永瀬。
アタシはフッとふき出す。
「チューして良い?」
「はぁ?バーカ(笑)」
私たちはおかしくなって笑い合う。
アタシだって、忘れたい。
永瀬のことを一番に想いたい。
でも、もう少し時間をくれないかな?
アタシにはまだ区切りがついてないの。




