決戦
「ごめん、遅くなった!!」
私はその人を見ると、ニッコリと微笑む。
「ううん!こっちこそ急に呼び出してごめんね?」
私の言葉に蓮斗は切なそうに笑った。
きっと、蓮斗の事だから全て分かってるんだろうな…。
「あ、俺アイスコーヒーで。」
蓮斗は注文を済ませると、真剣な目で私を見る。
「…それで、話って何?」
私は、ミルクティーを口に含み気持ちを落ち着かせる。
…ちゃんと伝えなきゃ。
「…蓮斗。…私ね、蓮斗の事すごく好きだよ。」
予想外だったのか、蓮斗は大きく目を見開いた。
「…でもね、その気持ちはきっと一人の男の人としてじゃなくて…親友のような、家族のような…簡単には表せない気持ちだと私は思ってるの。」
蓮斗は小さく何度も頷いてくれた。
「…それが今の…いや高校生の時からの私の気持ち。」
「うん。」
少しの沈黙。
そこに、アイスコーヒーが運ばれてきた。
蓮斗は、そのまま口に運ぶ。
「それとね、蓮斗に幸せになってほしい。」
「え?」
「蓮斗は、私の事をいつでも一番に思ってくれて、行動してくれた。自分を犠牲にしてまで。
だからね、今度は自分の為に動いてほしいの。」
私の言葉に渋い顔をする。
「…一生をかけて償ってくれるって言ってくれたよね…?
そんなことしなくても良いよ。」
「何で?俺、愛奈の人生をめちゃくちゃに…。」
「めちゃくちゃになったなんて思ってない。」
「──!?」
「いや、思ってないって言ったら嘘になるかもしれないけど、あの出来事があったからこそ、今の時間を大切に出来てると思ってるんだ。
それに…蓮斗にはもう十分償ってもらったよ?」
「償えてねぇよ!!」
「そんなことない。私、蓮斗にたくさん守ってもらって、支えてもらって…もう十分過ぎるほど愛をもらったよ?」
蓮斗は表情を歪める。
「…なのに、私は何一つ蓮斗にしてあげられない。
きっとこれから一緒にいたとしても、蓮斗にしてもらうばかりなんだろうな…って思う。」
「…俺は、愛奈には何か返して貰おうなんて思ってないよ。」
「それじゃダメなの!!…私が納得できない。私の中で重荷になる。」
蓮斗の方を見ると、俯いていて表情は伺えなかった。
私も震える自分の手を握りしめる。
「…蓮斗の中でも、"償い"は重荷になってると思うよ?」
「なっ…!?」
顔を上げ、驚きの表情で私を見る。
「愛奈の幸せを奪ったのは俺。人生を壊したのは俺。
あんな目に遭ったのは俺のせい。
全ての重荷を蓮斗は背負ってるよね?」
蓮斗は苦しそうに唇を噛み締める。
「蓮斗のせいなんかじゃない。蓮斗は全く悪くない。
…ずっと伝えたかった。
私は、蓮斗がいてくれたお陰で学校楽しかったよ?
いじめられても、学校にも来ようって思ったよ?
蓮斗がいてくれたから…今の私があるんだよっ…?
私、感謝しかしてないっ…!!
蓮斗と仲良くなれたこと。
蓮斗に好きになってもらったこと。
蓮斗に出会えたこと。
全てに感謝してる。…感謝しても…しきれない。
だから蓮斗…。
もう解放されてっ?
その罪の意識から抜け出してっ…!?
私も、もう前に進むから。
いや、進んでるから…!!
蓮斗っ…大好きだよ?
だからこそ、さようなら。」
蓮斗の方を見るが、涙で前がよく見えない。
蓮斗は、片手で目を覆っている。
「…はぁ。俺にしか幸せに出来ないって思ってたんだ。
めちゃくちゃにした分、俺が絶対に幸せにするって、一生かけて償うって決めてたんだ。
でも、愛奈はすでに幸せなんだな?
…無理矢理奪おうとしてごめん。」
「…そんなことないっ…。」
「愛奈が幸せになることが目的だったんだ。
俺しかいないって思ってた。
だからこそ、側にいたかった。
…そっか。
愛奈。大好きだ。いや、愛してる。
だからこそ、幸せになれよ。」
「蓮斗もっ…幸せになってっ…!?絶対だよ!!」
「任せろ絶対に愛奈より幸せになってやる。」
そう言って、頭をグシャグシャと撫でる。
蓮斗はコーヒーを飲み干すと、席を立つ。
「それじゃあ、俺帰るわ。」
「…あ、うん…。」
「…元気でな。」
そのまま頬にキスをして、出ていく。
ブワッと溢れ出す涙。
蓮斗っ、ありがとうっ…!!
本当に
本気で
大好きだったよ───!!!!
[レントside]
店の外に出ると、あの時の男が立っていてた。
「…あれ?…柳田…だっけ?」
俺がそう尋ねると、絵に描いたように驚く。
ずっと待ってたのか。
何かあった時の為に…。
俺が近づいていくと、少し身構える。
そして、そのまま頭を下げた。
「…愛奈の事、幸せにしてやってください。」
頭を上げると、先程とは違って真剣な表情をしていた。
「必ず幸せにしますよ。」
そう言ってニコッと笑う。
ああ。何だろうな?
この人なら大丈夫。
そんな気がしてならない。
さてと、言われた通り俺も幸せ探すかなぁ…?
「───おっと!?」
「あ、ごめんなさいっ!!怪我とかしてないですか!?」
「大丈夫だよ。君こそ怪我ない?」
「あ、大丈夫です!!失礼しました!」
[アイナside]
一通り泣き終わり、レジに向かう。
「──あ、お会計でしたら先程のお客様が済まされましたよ?」
「…え?」
私は固まる。
はぁ…最後までお世話になってばかりだ…。
「──ありがとうございましたー!!」
店員さんの声を聞きながらお店を出る。
すると、そこには柳田くんの姿があった。
「…寺岡さん。」
柳田くんは、すっかり腫れ上がった目に、冷たいハンカチを押し当ててくれた。
「…これでハンカチ借りるの3回目だね。」
「毎回泣いてるしね(笑)」
柳田くんはポンポンと頭を撫でてくれる。
「さっきさ、木崎に言われたんだ。
愛奈の事、幸せにしてやってくださいって。」
蓮斗…そんなこと…。
「…約束もしたし、絶対に幸せにするよ。」
「…柳田くんっ…。」
「よく頑張ったね。」
その言葉に再び涙が溢れ出す。
私、本当に幸せ者だね───?




