過去1
ここから愛奈の高校生時代の話に入ります。
大分暗くなってしまうのでご注意ください。
「───愛奈!今年も同じクラスだ~!よろしくね!!」
クラス分けの表を見ていると、後ろから抱きつかれた。
「わあっ!びっくりしたぁ…!!」
エヘヘと、笑みを浮かべるのは私の親友、大倉みのり。
2年生の教室へと移動しながら、自然と会話が弾む。
「あ、そういえば聞いた!?」
今日一番のハイテンションでみのりが尋ねてくる。
「何を?」
「私たちのクラス、あの王子がいるんだって!!
超幸せなんだけど~♪♪」
「…王子?」
私がそう尋ねると、みのりは一気に真顔になる。
「…あー、そういえば愛奈はこういうの疎かったよね?
学校で一番のイケメン!王子こと木崎蓮斗くん!!」
「名前は聞いたことあるかも!」
私の反応に、みのりは頭をベシッと叩く。
「ちょっ、痛いじゃん!!」
「何か知らなすぎてイラッとしたから。」
「酷くないですか!?」
「イライラするー!!!もっとまわりに興味持ちなよ!!」
そう言って、私の肩をドンと押す。
思ったよりも力が強く、私はよろける。
「───おっと!?」
そのまま、私は後ろの人にぶつかった。
「あ、ごめんなさいっ!!怪我とかしてないですか!?」
「大丈夫だよ。君こそ怪我ない?」
「私は大丈夫です!本当に失礼しました。」
「他に言うことは?」
「…え?」
目の前の男の人は、にっこりと笑顔を浮かべている。
気がつけば、まわりはザワザワと騒がしくなっていた。
「あれ?いつもの女の子の反応が来ないんだけど?」
訳の分からない展開に私はついて行けない。
「…あの…?」
「王子!!本当にごめんなさい!!
この子、ちょっと疎い子なので…!!」
私が困っていると、後ろからみのりが声を出した。
…王子?
え、待って。この人が、あの王子?
そう思って目の前を見ると、王子は私を見てニヤリと笑う。
「…ふーん?俺もまだまだみたいだね。
僕は木崎蓮斗。よろしくね。」
「あ、えっと…お願いします。」
差し出された手を握ると、まわりから悲鳴があがった。
その後、教室に入ると、案の定王子がいた。
王子も驚いていたが、それからというもの私の所に来ることが多くなった。
王子…いや、蓮斗くんは話してみると案外楽しく、私も楽しい日々を過ごしていた。
最初の内は、みのりも一緒に過ごしていたのだが、最近は蓮斗くんと二人でいることの方が増えた。
そして、そんなある日のこと。
「…え?」
私は体育館裏に呼び出されていた。
目の前には、蓮斗くん。
「…自分から好きになるなんて初めてで、正直戸惑ってる。
でも、迷惑じゃなかったら俺と付き合ってほしい。」
私は固まることしか出来ない。
正直、蓮斗くんは私の中で良い友達で、恋愛対象として見ることは無かった。
「…ごめんなさい。私、蓮斗くんは良い友達だと思ってる。
だからそれ以上には見れない。」
私の言葉に、蓮斗くんは少し切なそうに笑った。
「ハハッ!さすが、愛奈だ。」
蓮斗くんは、私の方に手を伸ばすと頭をグシャグシャと撫でる。
「これだから諦められないんだよ。
絶対に好きにさせるから。」
「アハハッ!分かった!楽しみにしてるね♪」
私たちは、それからいつも通りに家に帰った。
そう、いつも通りに。
翌朝。
下駄箱の所に、みのりがいた。
「あ、みのり!おはよう!!」
私の声にビクッとするみのり。
靴を脱ぎながら、みのりに話しかける。
「何か、こうやって二人で話すの久しぶりだね!」
そう言いながら、下駄箱を開ける。
「…え?」
私の目に飛び込んで来たのは、ズタズタに切り裂かれた
自分のシューズだった。
「…何これ…?」
みのりに助けを求めようと思って横を向くと、既にみのりはいなかった。
「…みのり…?」
とりあえず、そのシューズをそのままにしておき
職員室でシューズを借りた。
ガララララ───。
私が教室に入ると、次々と刺さる視線。
その瞳はひどく冷たかった。
何…?
もしかして、さっきのもクラスの誰かが…?
私は、席に座って宿題をしているみのりを見つけた。
私はすぐにそこに駆け寄る。
「みのり、置いていくなんて酷いよー!!あ、それ宿題?
私もやらな───」
「───気安く話しかけないでよ。」
え……?
「…みの…り…?」
みのりは、私の方を見ることなくそう言うと教室を出て行ってしまった。
クスクスと笑い声が聞こえる。
『ハハッ!ざまぁみろ。』
『見た?あの顔(笑)』
皆の言葉が、視線が、グサグサと突き刺さる。
私は、とりあえず席に着くことにした。
荷物を机の中にいれようとすると、何かが手に当たった。
そこには、折り畳んだ紙が入っていた。
恐る恐る紙を開くと
『調子に乗んなよ。ブス。』
あぁ、そういうことか。
私が蓮斗くんと一緒にいるから。
いや、でもそれならもっと前からいじめられても良い筈。
私が蓮斗くんをフッたから?
誰かが見てた?
そんな事を考えていると
「おはよー!」
目の前で満面の笑みを浮かべる蓮斗くん。
その顔を見ると、そんな悩みなんてぶっ飛んだ。
先程までの雰囲気は無くなり、皆普通に過ごしている。
なるほどね。
蓮斗くんの前では下手な行動はしないんだ。
「愛奈?どうしたの?」
前に座る蓮斗くんが、私の顔を覗き込む。
「え?あ、ごめんごめん。考え事してた!」
「分かった!今日の小テストの事だろ?」
得意気にそう言われる。
「えええっ!?小テストあるの!?」
朝の出来事を忘れるには、蓮斗くんに頼るしかなかった。
ここまでは、まだ良かったね?
私は、あなたは、どこで狂ったんだろう?
ごめんね。
全ては私がいるから悪いんだよ───。




