どうして?
「・・・・え?」
目の前には寺岡さん。
「…何回も言いたくない…。」
寺岡さんは、気まずそうに下を向き、そして───
「───私と別れてください。」
ガバッ!!!!
気づけば、ベッドの上。
時計に目をやると、午前3時。
…夢か…。
そう思って寝ようとするが、全く眠れない。
違う。
夢なんかじゃない。
俺は昨日実際に
寺岡さんにフラれたんだ────。
「───柳田っ!!!!」
朝イチで、思いきり名前を叫ばれる。
「…あ、近藤さん。」
「ちょっと、どういうことなの!?」
近藤さんは、怒り狂っているようだ。
その声に、注目が集まる。
ヒソヒソと話し声が聞こえる。
「…近藤さん、ちょっと外出ようか。」
俺は、近藤さんの手を引き、外に出た。
「アンタ、愛奈に何したの?」
第一声がそれで、俺は酷く驚いた。
「何って…何もしてないけど…。」
「嘘でしょ!?何もしないのに愛奈がアンタと別れる訳が無いじゃない!!」
「───文香ちゃん!!ちょっと落ち着けって!!」
近藤さんの叫び声に、琥珀もやって来た。
「じゃあ、永瀬!!アンタが何かしたのね!?」
「はぁ!?何で俺になるんだよ!!!!」
琥珀はキッと近藤さんを睨み付ける。
「二人とも落ち着けって。」
「うるせぇ、黙ってろ。」
「逆にアンタは何で落ち着いていられるのよ!?」
「───落ち着いていられる訳ねぇだろうが!!!!」
俺が叫んだことで、二人は固まった。
「…俺が一番分かんねぇんだよ。…何でなんだよっ…?」
俺は頭を抱えて、その場に座り込む。
「フラれてこんなにも動揺すんの初めてだ…。」
力なく呟いた俺に、二人はそれ以上何も言わなかった。
[アイナside]
朝、大学に来てみると、いつもの3人がいた。
文香も、永瀬くんも思い詰めた顔をしており、柳田くんは座り込んでいた。
きっと、全ては私のあの言葉のせいだろう。
すると、永瀬くんと目が合った。
「…あ、愛奈ちゃ…。」
永瀬くんから逃げるように、私は教室に入った。
心臓の音がうるさい。
ああ、もうダメだ。
わたしたちは、壊れてしまったね。
一昨日の夜…
ピコン♪
その音に、私は何気なく携帯を開いた。
でも、それが間違っていた。
『愛奈。今から会える?』
蓮斗からの連絡だった。
私の手は一気に震え始める。
何で連絡先を知ってるの…!?
どこで手に入れた…!?
『大学前で良いかな?』
震える手で、返信すると私は荷物を持って外に出た。
ひんやりとした空気が私を包み込む。
階段を下り、一息ついたその時───
「───愛奈。」
私は、目を丸くした。
声なんて全く出なかった。
「夜道は危ないから迎えに来たよ。」
「…な、な…んで…!?」
絞り出した声は、掠れて震えていた。
「とりあえず、座ろうよ。立ち話もなんだしね。」
蓮斗に言われるがまま、近くの公園までやって来た。
座りなよ、と促されベンチに腰かける。
蓮斗も、隣に静かに座った。
「何か、こうやって二人で会うの懐かしいね。」
「…何で知ってるの?」
「愛奈、本当に前より綺麗になったよ。」
「誰から聞いたの?」
噛み合わない会話に、蓮斗は私の顔を掴み自分の方へ向かせた。
私は、キッと蓮斗を睨み付ける。
「愛奈。そんな態度で良いと思ってんの…?」
先程までの笑顔とはうって変わり、その瞳に光は無く恐怖を感じた。
「…俺の事だから、どうやってでも愛奈の事は知ろうとするって分かりきってただろ?今さら過ぎるよ。愛奈。」
私の目にじんわりと涙がたまっていく。
「泣かないでよ。泣かせるのは好きじゃない。」
そう言って、パッと手を離す。
やっと解放され、私は目をそらし下を向く。
「…彼氏…憎いなぁ。」
その言葉に、私はすぐに顔をあげた。
「絶対に俺の方が愛奈には合ってると思うんだけどね。」
笑顔でそう言い放つ蓮斗。
私は、恐怖と悔しさで唇を噛み締める。
蓮斗は立ち上がると、私の正面に来てしゃがんだ。
「ねぇ愛奈?前みたいにしちゃっても───」
「───止めて!!」
全てを言い終わる前に私は声をあげた。
蓮斗は、優しく私の手を握った。
その手から嫌というほど温もりが伝わってくる。
「じゃあ愛奈。君がやることは1つしかないよね?」
その言葉に絶望した。
ああ、もうダメだ。
わたしたちは、壊されてしまうね。
気づけば、蓮斗の顔がすぐそこにある。
唇が重なっていた。
「愛奈。愛してるよ───」




