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【病を喰らう酒呑童子と、病を祓えない陰陽師の怪異譚】  作者: 白瘡
一章 清浄編

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第3話 夢咲病【枯れた花をまとう子供達】

 「慈眼!」


 俺を呼ぶ声。

  炎が迫る。

 焼ける匂い。


 だが、俺の手は届かない。


 ――これはただの病だ。


 目の前がぐにゃりと歪む。

 ――また、この夢か。

 あぁ、朝が来る。


「うふ、うふふ」


 俺は不快な気持ちで目を覚ました。

 顔に生暖かい空気が何度も当たると思ったら、蘇芳の鼻息だった。

 寝覚めは最悪である。


 鬱陶しい……本当に鬱陶しい。


「何してんだ?」


 俺は、何やら自分の陶器の体を触りながらうっとりしている蘇芳へ言った。


「いや、この美しいお顔と陶器の体のコラボレーションを見れなくなるなと思いまして」


 と言いながら蘇芳はいそいそと陰陽師の白衣を渡してくる。


「師匠から、体が人形とバレないような服を着せて、調査に行きなさいと言われてしまいました」


 蘇芳がすごく残念そうに告げる。

 陶器の体をそわそわと触りながら


「そ、そうか」


 俺は蘇芳の手付きにぞわりと、体に寒気が走る。

 俺は蘇芳の手を無理やり押し退けた。


「も、もう少しだけ、触らせて下さい!」


 蘇芳が抗議するように声を上げた。


「やだね!」


 俺は耐えきれなくなって、蘇芳から少し離れて服を着る。

 服を着ている姿を、蘇芳がじっくりと目を逸らさず見ている姿が目に入る。


「はぁ…」


 ――これからはちゃんと服を着ようと心に決めた。





 都からずいぶん離れた山を歩いていた。

 歩くと土に水分がないのかすぐ砂が舞い、ひび割れる。


 痩せた土地だ。


 あぁ、腹が減った。


「で?どんな調査なんだよ」


 俺は、慣れない陰陽師の白衣が鬱陶しいと思いながら、蘇芳に聞いた。


「子供がよく寝るそうです」


 ――何を当たり前のことを。

 俺は蘇芳を、こいつは馬鹿なんだなと思いながら見る。


「いや、別に子供はよく寝るだろうが、いいじゃねえか健康的で」


 俺は欠伸をしながら答えた。

 面倒くさいという態度に気が付いたのか蘇芳は困ったように笑った。


「そういうことでなくてですね……問題なのがそのあと、子供が寝ると子供から花が咲くようで」


「花が咲く?」


「はい、そうすると、寝たまま子供たちは仕事をしてくれるようで村で喜んでいたので、病が出てから私たちに調査を依頼しなかったようなんです。ですが――」


 俺は村に近づくと、風に乗って、荒れ果てた村から子供の歌声が聞こえることに気が付いた。

 蘇芳も横で同じく気が付いて呟いた。


「これは、歌?」


 俺たちは、耳を澄ませる。


『――夢を見ると花が咲く。


 周りは喜んだ。


 花が咲くとこれで飢えとおさらばできる。


 夢を見ると花が咲く。


 花が咲くと、飢えとおさらばできる――』


 枯れた土地の向こうには岩山が立ち並び、その岩山に並ぶように、集落があった。

 集落の近くには田畑があるが、何も育っていない。

 その田畑で子供は無邪気に歌っていやがる。


 俺は子供の無邪気な歌声を聞きながら、気が付いた。

 体が、小枝のように細い。

 歌っている子供の体中に蔓が巻き付き、薄紅色の花が咲き乱れていた。


 子供が動くたび、その花は揺れる。

 子供たちの中には、花が枯れている奴もいたが、花が枯れている代わりに青く鈍く光る月長石ムーンストーンが、水ぶくれのように膨らんでいた。

 どの子供達も、眠っている。


「――これ、は」


 思わず、俺は言葉を失う。


 蘇芳は人形のような顔をして俺へ言う。


「夢咲病に罹ったものは、花が咲き、寝ながら働きます。ずっと目覚めないまま。

 数日すると花は枯れて体に月長石ムーンストーンが水ぶくれのようにでき、高熱を出して死んでしまうようです」


 蘇芳の言葉を聞いて、あたりを見渡す。

 明らかにおかしい状態だが村の大人のあきらめたような顔だ。

 よく見ると村の大人は痩せ細っていねぇ。

 顔色もいい。


 ――なぜだ?


 明らかにこの村の土地は痩せている。

 次の瞬間、子供の腕に絡みつく蔓を、大人が無造作に引き抜いていた。

 皮膚ごと裂ける音がした。


  それでも子供は、目を覚まさない。


 引き抜かれた蔓の先には、葛の根が膨らんでいる。

 白く、栄養をたっぷり含んだそれを、大人たちは黙々と削り、口に運んでいた。

 俺の喉が、ひくりと鳴った。


 ――あぁ、こいつらはクズだ。


 気が付けば俺は、村人の胸ぐらを掴んでいた。


「子供があんな状態になっているのに――

 なんで放っておいた!」


「ひぃ」


 村人は、俺を見て怯える。

 すぐに、蘇芳は止めに入るが、

 俺は歯を剥き出しにしながら怒鳴りつける。


「蘇芳、おまえは! あれを見てなんとも思わねぇのか!」


 子供達を指し示したが、蘇芳は少し表情を歪めて言った。


「しょうがないんです。

 子供達をこの村は養えない。

 養えず、飢えて苦しむより、夢の中で幸せなまま死んだ方が幸せでしょう?


 私は、この病が都に及ばないように、調査を命じられました。

 村の方針に口出し出来る権利は、陰陽師にはありません」


 なに言ってんだ、こいつ。


 俺は村人の胸ぐらから思わず、手を離す。

 村人は、面倒そうに顔をしかめた。


「都の方々には、私達の苦しみも生き方もわからないだろうよ」


 村人はそういいながら、また子供の元へ向かう。

 身震いを覚えた。

 自分の体の制御が利かない。

 地面を叩きつけるように踏み鳴らす音が耳に入る。


 ――俺の足音だった。


 俺の瞳に、その醜悪な大人の顔を映す。


「おい」


 俺は拳を握りしめ力いっぱいその拳を醜悪な大人の顔へぶつけようとした。

 だが、その手を止める蘇芳。


「止めるな蘇芳、殴られたいか?」


 俺は、目の前の汚ねぇ顔の村人を見つめ続けた。

 俺を止める蘇芳の手の震えを感じる。

 だがそれよりも目の前のこいつらを八つ裂きにしたい。


「彼らは生きるために、仕方なく選んだだけです。」


「仕方がないことなんですよ」


 目の前が真っ赤に染まる。

 お前ら陰陽師はいつも、なぜ!!


 ゴキ――。


 鈍い音が響いた。

 蘇芳の体が、横に揺れる。

 頬が赤く腫れあがるのが見えた。


「仕方がないだと? ふざけるな!」


 ◆

 慈眼の荒い息が私の近くで聞こえる。

 頬が焼けるように熱い。

 自分の思いを真っ直ぐ動ける事がうらやましい。

 口を切ったのか、鉄の味がする。


 ――あぁ、痛いなぁ。


 私は、思わず笑みを浮かべた。

 自分の無力さに、ゆっくり顔を上げて慈眼を見た。


「あなたは、優しいですね」


 慈眼は狼狽え、目を反らす。

 その手は少し震えていた。

 視線の先には子供達。


「くそったれが!」


 小さく慈眼は震える拳を強く握り直していた。

 ――優しくて美しい鬼。


 私の代わりに怒ってくれる。

 だから私は正しくやるべきことをやるのだ。

 詳しく話を聞いて解決しなければ。

 私は村人の方へ歩き出した。

 きっと、人形のような表情を浮かべて聞いているであろう私。


「すでに、病が進行して妖化している子がいると聞きました。

 詳しく教えてくれますか?」



 まるで繭のようだった。

 ゴツゴツした灰色の岩山にその空間だけ色彩があった。

 村から少し離れて上った先に岩山で出来た洞窟。

 太陽の光を浴びて見る方向によっては鈍い青色の光をたたえた、まあるい月長石がある。


 その中に枯れた蔓を体に纏わせながら、フクロウのように目だけが青く光っている子供の姿があった。

 女か男か慈眼にも私にも判別がつかない。

 岩肌に、歌が反響していて不協和音のように聞こえる。周りには眠っている子供達。


 ここにいる子供は花がまだ生えておらず、ふくふくとした艶やかな頬をしていた。

 村で踊っていた子よりさらに幼い。


 私は、まるで揺り籠のようだと感じた。


 かなり妖化が進んでいる。

 繭は封印か抹消、寝ている子は今すぐ保護して浄化をして祓わなければ――。


 どうしたら良いか私が思案していると、繭が喋りだす。

 男とも女ともとれない声だった。


「ダレ? オトナはハイレナイヨ。

 ココハ コドモシカハ イレナインダ」


 少し舌足らずな喋り方に聞こえる。


 慈眼が私の一歩前に出た。


「おまえ、何故病を広げる?」


 と聞くと、繭がさきほどと違う声で返事をする。


「夢をみている方が幸せだよ」


 慈眼の聞いている内容と、ズレた答えをする。


 私は、妖怪が慈眼に意識をむけているうちに、指先を動かし木偶人形をまだ寝ている子を抱えさせようと向かわせた。


「触ルな!」


 地面からたくさんの蔓が生え、寝ている子供達を隠していく、妖怪が低い声で言う。


「僕達が守ると決めたんだ!」


「弟をおこすな!」


 その瞬間、繭のような月長石は割れ、中心にいた子供の腹が、ふわりと膨らんだ。

 皮膚の下で何かが羽ばたく。

 骨の隙間を押し広げるような、湿った音。


 ――ばきり。


 胸が割れた。血ではなく、あふれ出たのは蔓だった。

 その中心から、白い面をしたフクロウが這い出た。

 眼だけが落ち窪んでいる。

 やけに静かな目だった。



 ◆

 太陽の光を背にして翼が空を切る音。

 夢を見る子供の頬に、笑みが浮かぶ。

 だが、笑顔の下で夢咲病は進行している。


 俺の奥歯が鳴る。

 いつも犠牲になるのは弱い奴ばかりだ。


「……ふざけるな」


 フクロウが鳴いた。

 その声は、子供の声と重なっている。

 憤りに似た感情が突き出てくる。

 内臓が燃えるような熱い怒り。


 ――次の瞬間、俺はもう踏み込んでいた。

 考えるより先に体が動いていた。


 狙ったのは羽ではない。

 夢を見させる、その喉だ。

 牙を突き立て、噛みちぎる。

 羽が散る。

 黒い瞳が、初めて揺らぐ。


 それでも、子供の頬の笑みは消えない。

 ――なんで笑ってやがる。


 さらに飛びかかり、喉元に噛みつく。

 フクロウが身を回転させ俺は弾かれる。


「ぐっ!」


 岩肌に頭をぶつけた。

 頭がズキズキと痛む。

 血が出たせいか、視界が開けた。


 そういやあいつはどこだ?


 俺は蘇芳の姿を探す。



 ◆

 太陽の光を背にしたそのフクロウは神の遣いのようだった。

 私は思わず息を呑み、呟く。


「なんて、美しい」


 あぁ、これは必ず保存しなければ、消されてしまう前に――壊れる前に、残さなければ。


 ――せめて封印を。


 蘇芳は糸を操り、数体の木偶人形に札を貼りフクロウへと襲いかかるが、優雅に羽ばたきしただけで飛ばされてしまう 。


 あまりの暴風に煽られ、木偶人形ごと吹っ飛ばされる。あっ、と思った時には、近くに岩肌があった。


 痛みを想像して、私は思わず目をつぶったが、想像した痛みは来なかった。

 ひんやりとした陶器の手が私へ触れる。


「あぶねぇな!後先考えて行動しろ!」


 慈眼は私へ怒鳴った。


「え?」


 岩肌と私の間に、慈眼が身体を滑り込ませていた。

 陶器で作られた身体は所々にヒビが入っている。

 ――なぜ助けてくれたの?

 なんだか私は、慈眼に申し訳なくなった。


「ごめん」


 私が謝ると、慈眼は私の頬を見る。


「俺も悪かったよ、あとで傷見せろ」


 ぶっきらぼうに言って目をそらした。

 慈眼は、拳を握り直し、目の前のフクロウへ飛び付く。

 羽を掴み力任せに裂く。


 翼をもぐのは、自由を奪うためじゃない。

 その地に足をつけて歩くため。

 私は、慈眼のフクロウへの攻撃を見て

 なんとなくそう感じた。

 慈眼が、フクロウと墜落しながら


「夢の時間はもう、おしまいだ!起きろ!」


 と子供に叱るように言う。

 フクロウは羽を失い、墜落した。

 フクロウが叫ぶ!


「イヤだ!」


 慈眼は墜落したフクロウの腹を、今までの激しい攻撃が嘘だったかのように、優しい手付きで裂いた。


「あぁ、腹が減った」


 裂いたところへ手を突っ込み、

 何かを掴んだのか、笑った。

 私も、中身に目を向けた。

 子供だ。

 のっぺらぼうの子供達の形を象った大きな宝石がある。

 慈眼は、その子供達の形の宝石が怯えるように震える中、まるで迷子の子供へ手を差し出すかのように宝石を掴んだ。


 ――ゴリ、バリ。


 石が砕ける音がする。


「やだ! やだ!」


 フクロウからいろんな声が混ざりあうように響き、


「マモルんだ!」


 とうわ言のようにフクロウが呟く。


 慈眼が宝石をかみ砕きながらいう。


「子供が大人になるんじゃねぇよ」


 子供たちの形をした宝石は氷が割れるように割れて白い砂となる。

 白い砂に混じって、何か光輝く小さいものが、ポトリと落ちる。

 それは月長石でできた胎児のような石だった。


 よくみると白い砂の中に細く頼りない骨が混じっている。

 それを見た私は理解をした。

 ――あぁ、きっと村が餓えてここにおいて行かれたんだ。


 私は思わずその石を拾い、藁人形に入れた。

 藁人形はカタカタと震える


【クロウサセナイ】


 蘇芳は慈眼をみる。

 ただ自分の大事な人に苦労してほしくなかった。

 その気持ちが欲だなんて、

 病になるだなんて、なんて悲しくて――

 なんて、美しい病。


 フクロウがいなくなったことで子供達を隠していた蔓も消えたせいか、子供達が次々と目を覚ました。 起きた子供達は口々に言う。


「ねいさまは?」


「にいや、どこ」


「遊ぶ約束してたの」


 と口々に言っている。

 私はその場から動けない。

 何を伝えたらいいのかわからない。

 私が悩んでいると、慈眼は自然に声をかけて子供たちを捕まえる。


「しってっか」


 地面に何やら書いて教えている。

 私は何をしているのか気になり声をかけた。


「何を教えているの?」


 慈眼は答える。


「食える雑草、生きる術だ」


 慈眼は、私の藁人形を見ながらいう。


「知ってっか?フクロウはな不苦労って書くんだぜ、知識があれば、自分をいつか助けるさ」


 慈眼が美しい顔で無邪気に笑った。

 私はこんなに無邪気に笑う慈眼を初めて見たから

 ――見惚れてしまった。


 だからかすぐ気づけなかった。


「どうしてくれるんだ!」


 村の大人が、岩山の入り口を塞ぐように、ぞろぞろ集まってくる。


「たべるものがないじゃないか!?」


「冬を越せる蓄えはないぞ」


 口々に好き放題言う、大人達。

 ――なんて醜い。

 隣にいる慈眼の歯軋りの音が聞こえる。


「胸糞わりぃ」


 ドスの聞いた声で呟く。

 今にも怒りだしそうだ。


 私は慈眼を止めなきゃと思い、声をかけようとした。

 だが、好き放題言う大人達の顔が急に醜く歪む。

 変化する。


 ――妖化。


「欲が溜まりすぎたのですね……」

 今すぐどうにかしないと、私は、指を動かし木偶人形を自分の側に引き寄せた瞬間。銀色が煌き、風を斬る音がした。


 目の前に広がる赤色。


 生暖かいものが、顔にかかる。



 大人達が真っ二つに裂かれた。


 私は、子供達を思わず引き寄せる。

 飛び散る血潮。

 何が起きてるのかわからず、頭が混乱する。


  ただ、子供達にこれ以上、見せてはいけないと思ったから、私は出来る限り子供達を抱え込んだ。


 真っ二つに裂けた空間からお師匠様と、目の下に、いつも隈がある武士――頼光殿の姿が見える。


 洞窟の奥にはいる私と慈眼を、塞ぐように師匠と頼光は立っている。


 頼光の刀が赤く濡れていた。

 なぜ、病を切る専門の検非違使の頼光殿がいるのか。


「蘇芳、慈眼、また一つ善行をつみましたね!」

 前方にいる師匠が明るい声で私に声をかけ、

 頼光が刀を持ったまま歩きだした。


 迷いのない足取りだった。

 目の前に一瞬銀色が見えた。


 キン。


 慈眼が、頼光殿の刃を受け止めていた。

 慈眼の体が、震えている。


 刃が落ちれば子供達を引き裂いていた。

 途端に、状況がわかったのか、私が引き寄せていた子供達が泣き始めた。


「うぁぁ、なに」


 私は、小さく子供達に声をかける。


「…大丈夫ですよ」言った言葉は、自分にも向けた言葉だった。

 慈眼は、泣き出した子供達に視線を移した。


「なんのつもりだ!」

 慈眼が目を見開き叫ぶ。


「抹消だ」

 血濡れの頼光は、一切の迷いなく真顔のまま答える。


「それは病の元になります」


 後ろにいたお師匠様は、いつもと変わらない笑みを浮かべて言う。

 血の中で、師匠だけが白かった。


「なにいってんだ!」


 慈眼は頼光の刀を弾きながら、師匠を血走った目でみる。

 師匠は優しい声で私に問う。


「蘇芳、貴方、その子供達、全員面倒みれますか?

 大人が妖になって子供だけの村で暮らしていけると思いますか?」


 私は乾いた唇をただ震わせる。

 喉が、ひゅっと鳴った。


 師匠は今にも牙を向いてきそうな慈眼を見て、優しい笑みを浮かべ、首を触る仕草を見せる。


 慈眼はその仕草を見たあと力なく項垂れる。

 私があげた陶器の体の拳が、慈眼の力に耐えきれず音をたてて崩れる。


 私は、心配になって慈眼の表情を見ると、唇から血が出るくらい噛んでいるのが見えた。


 慈眼は、じっと黙り込んで師匠を見ている。


 その目を見た瞬間、私は背筋が冷えた。


 慈眼は、今すぐ師匠を殺してもおかしくない目をしていた。


  じっと慈眼は、師匠を睨み付ける。

 師匠は慈眼の目に気圧されることなく、微笑んだ。


 師匠は場を変えるように手を打ち鳴らす。


 ――パン!


 この場に似つかわしくない軽い音だった。


「冗談ですよー、皆さん。

 本気にしないでください。

 子供達だけで暮らしていけないので、私達が連れ帰り面倒みますよ♪ささ子供達はこちらに」


 師匠が出した乗り物に子供達が乗り込んでいく。


「じゃ、蘇芳、この場の浄化は頼みましたよ」



 木偶人形から青い炎を出す。

 青い炎から目をそらしたいと思いながら燃やした。

 燃やしつくしたあと、病の欠片は見つからなかった。




 ーーーーーーーーーーーーー

 暗闇の中、蘇芳と同じように陰陽師の装束を着て青い炎で何かを燃やす人がいた。


「あぁ、ひだるしい」


 

 それは慈眼の声ではなかった。

 ――もっと飢えた、別の“何か”の声だった。






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― 新着の感想 ―
Xから来ました。 語彙力がなくて、大変申し訳ないのですが、とても読みやすくて引き込まれてしまいました。 続きも読ませて頂きます。 ありがとうございました! 巳ノ星 壱果
なろうではあまりない特殊な設定で面白かったです! 夜にじっくり読みたい
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