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第230話 骨

【テイクンシティー 南東ブロック】


【ハンビン通り】



「シャアアアア!!」



「早い!!」



ビキビキビキ!!



皮膚から突き出す骨、大きな羽根で空をガッと切り裂く。


またも急降下し、脅かすように歯を剥き出す。


どこにしまわれていたのか、骨は待ち切れない様子で次々と体の中から飛び出し、そして形となっていく。



「羽が……」



無くした筈、いや無かった筈の片側の羽が出来上がった。


皮膚も羽毛も、体温も無い。ゴツゴツして無機質な、隙間が多く空いた骨だけの翼。



「シャアアアア!!」



「危ない!!」



再び急降下して爪、いや骨を突きたててくるのを、エリーナとヨースラは素早く交わした。


地面にザクッと穴が開く。


飛ぶ見えざる者というのは、やはり厄介だ。狙いが定まらない。


先程から、執拗にこちらを狙っている。こちらに意識を向けられているせいで、隙をつくことが出来ない。



「困ったわ、なかなか目を逸らしてくれないわね」



「その方がいいですけどね」



民に被害が出なくて済む。しかし、あらゆる人間を狙う見えざる者が、何故こちらに執着するのか。



「いっくよおお!! ウフッ」



カリンが助走をつけると、側で転がっていた空っぽの鳥籠を片手で掴み、空高くに放り投げる。



「あ、あなた、それお婆さまの」



「それえええ!!」



鉄で出来た軽い軽い鳥籠は、カリンにとっては弾丸の代わりだ。


矢のように刺すように、飛ぶ見えざる者に向かって飛んでいく。



「シャアアアア!!」



ガラララン!!



「あ、外した!」



やはり、飛び回る敵に上手く当てるのは難しい。鳥籠は地面を派手に転がり、錆びた鉄がパリパリ剥がれた。



「シャア……シャアアアア!!」



上手く交わしたかと思えば、見えざる者は今度はガクガクと全身から震えだす。呼吸も荒い。



「動き回って、狙えないよお!」



「エリーナさん、上から狙いますか?」



「そうしたいけれど……。この辺りの建物、背が低いわ。やりにくいわね」



バキバキボキ!!



「え!?」



「また姿が変わりますよ!」



今度は顎が骨ごとどんどん下がっていく。骨と骨がぶつかり合う音に、三人とも顔を引きつらせた。



「シャジャアアアアアア!!!」



顔の形が変化していき、見えざる者は絶叫を上げ、地面までも震えさせる。


顔から骨が突き出し、無理矢理に縦長く口が開く。薄くなった皮膚が、今にも破れてしまいそうに横に引っ張られる。



「……!!」



ぞわぞわした毛が逆立ち、その身を包んでいた背中の毛が全て鋭い棘に変わる。刃物がびっしりと並ぶ。


ここまで身体が変化する見えざる者など、今までいただろうか。



「ひゃああ!!」



そして、これ以上ない程口が開かれた。


狙いは、エリーナ。



「くる!!」



口が大きく開かれ、見えざる者の周りの空気が歪む。ぼやけた空気が、波動となる。



「シャアアアア!!」



オリバル!(向かい風!)



凛とした声。



ゴオオオオ!!



鳥に向かって激しい向かい風が吹き、見えざる者は飛びにくそうに、その場で必死に翼をはためかす。


三人は、驚いて振り向いた。



「リュウちゃん!」



「あなた」



「ショウリュウさん、どうしてここに!?」



そこにいたのはショウリュウだった。



「間に合ったな」



「怪我は……」



まだ痛みはあるのか、顔を歪ませ、少しよろめいている。


驚いたのは、それだけではない。その胸元には、小さくても美しく輝く勾玉。



「見つかったのね」



どうやって探したのかは分からない。


しかし、いつもの場所に戻ってきた首かざりに、三人はホッとした表情を浮かべた。


そんな三人を他所に、ショウリュウは前に進み出る。姿は変わったが、間違いなく今朝のアイツ。



「……狙いを定める必要は無い、俺が落とす」



そう告げると、もう一度札を取り出す。今度は五枚。



「オールブライトなめんじゃねーよ」



見えざる者が体勢を立て直し、再び空気が歪む瞬間。


ショウリュウが札を放った瞬間が、重なった。


ショウリュウの頭上に輝く、美しい円。



「シャジャアアアアアア!!!」



チェバル!!(突風!!)



ドン!!!!



見えざる者が放った空気の渦。



風の大砲が吹き飛ばし、渦ごと見えざる者の翼を貫く。


風を食らった体が、大きく傾いた。



「シャアア!!」



「今度はあんたが落ちな!」



片側の翼だけに風の大砲を食らった見えざる者は、空の上でバランスを崩し、一気に地上に落ちていく。



「カリンちゃん!」



カリンは素早く落ちる位置に移動し、鳥を待ち構えた。


巨大な塊が、真っ逆さまにこちらに向かって落ちてくる。


カリンの持つ手には、庭を囲んでいた木の柵。



「シャアアアアア!!」



「はい、笑って〜。ウフッ」



2、


1、



ザクッ!!



「シャア……」



身体に裂け目が入る。頭蓋骨の、すぐ下。



柵をつたうように流れる、黒い雫。



「アアアア……」



見えざる者は、黒い血を流しながらガクガクと震えだす。



ささあ……。



しかし、それは一瞬だった。どんどん身体が薄くなり、ぺしゃんこになったそれはそよ風と共に、流れて消えてしまった。



「……」



付近の木陰。その光景を遠くから眺めていたシキは、被っていた帽子のつばをクイッと指で上げた。



荒れた風はやみ、心地よい爽やかな風が吹く。



「ふうん、坊やもやるねぇ」


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