第223話 探し物
【テイクンシティー 中央通り】
「何を企んでるの、姫」
足早に先を行くアイリに、シキは追いつこうと足の速度を上げる。アイリの足は早く、自然と息が少し上がった。
目の前のアイリの背中が、何故かいつもより大きい。
「おーい、どうしたんたってよ」
「……巡回行くんじゃないの?」
ナエカとレオナルドも、どこか急いでいる様子のアイリに首をかしげる。
アイリはようやく足を止めると、パッと振り返った。子供のように、目がキラキラと輝く。
「ねぇ、探そうよ」
「探すって」
「え、まさか」
アイリが答えるまでもない。
三人はアイリの企みに気付き、困惑する。
「探そ、ネックレス」
アイリの瞳は、揺らぐことなく。
「巡回は?」
「巡回しながら、だよ。見えざる者だって探すんだから」
口ではそう言っても、気持ちはネックレスに傾いている。
いつになく強気なアイリに、ナエカとレオナルドは目を見合わせた。
「街に落ちたのなら、誰か拾っているかもしれないし。見えざる者にとられちゃったなら、取り返せばいい」
──勾玉、きっと割れちゃってるかな。直せるのだろうか。海で落としたなら、海に流されていなければいいけれど。
胸をかすめる心配を、そっと押し殺す。
「本当に探すの? どこに落としたかも分からないのに」
「うん!」
アイリの気合いは充分だ。
本気で探すつもりなのだ。そんなアイリに、シキはすっと目の色を冷やす。
「探す必要がある? 坊やの物なのだから、坊やが探せばいいんじゃないかな」
「ショウリュウの大事なものだもん。今ならもしかしたら見つけられるかもしれないけど、時間が経ったら」
二度と見つけられない。おじいさんの、大事な形見。
それに、ショウリュウは怪我をしている。ショウリュウが動けないのなら、私達が。
「取り返したいよ。ショウリュウの大事な宝物、なくしたら嫌だよ」
「……」
アイリの言葉に、ナエカとレオナルドも決意を固めたのか、ニコッと笑顔になった。
「うん、分かる」
「よっしゃあ! オレもやる、さっさと見つけようじゃん!」
こちらも気合いは充分、レオナルドはグルグルと腕を振り回す。
二人の反応に、アイリもホッとした様子で頷いた。唯一、シキだけは浮かない表情だ。
「そうと決まれば、どこ探すよ?」
「とりあえず、ショウリュウの家のある通りに行こうかなと思うんだけど」
「……そこから、海岸に向かって探せばいいんだね。結構遠いな」
「待って」
足を踏み出そうとした彼等を止めたのは、シキだった。
冷たく強い口調に、三人はビクッと振り返る。
振り返ると、シキがどこか張り詰めたような顔でアイリ達から目を逸らしていた。
「巡回はどうしたのかな、今やることじゃないと思うけど。仕事しないとだよね?」
「……え?」
三人は思わずポカン、としてしまった。
シキが、いつも飄々としたシキが、まるでショウリュウが言うような事を口にする。
「どうしたの、シキ」
「おかしな事言ってるかな?」
「いや、おかしくはないけどさ……」
それを、シキが言うのか。シキらしくはないと、三人揃って首を傾げる。どこかおかしい。
シキは、くっと顔を上げてこちらを見た。
「それに、ナエちゃん。君は坊やの事、あれだけ苦手じゃないか。なんで坊やの肩を持つの?」
「……」
名指しされたナエカは、ゆっくりと口を開く。
「……うん、ショウリュウは苦手だよ。でも、関係無い」
ナエカはピリッとした尖らせた声で言い放つと、再び足を踏み出す。
「大事にしてる物なくした時の気持ちくらいは、同じだと思うから」
そう告げると、アイリの横をすり抜けて先に行ってしまう。
突き放したような顔を残して。
「ナエカ、オレも!」
「レオくん、君もかい?」
「とーぜん!」
レオナルドも、元気にナエカの後についていく。
アイリも、止まったままではいられない。
「二人とも、置いてかないで〜」
足を弾ませ、ナエカとレオナルドの後を追う。気持ちは晴れやかだ。
「待ってってば、姫!!」
シキの言葉は、重ねても最早届かず。
もどかしさが、胸にじわじわと溜まっていく。
一人取り残されたシキは、頭をかきむしると、深くため息をついた。




