第7話
フレドが帰ってから早数日がたった。
母は以前の様に薬を作っては売りさばいていた。
その姿は以前と変わりなく、フレドが居たなんて嘘の様だ。
そう思っていた。
「魔法の特訓をはじめてはいかがでしょうか?」
母が大量の本を私の目の前に重ねてそう言った。
どうやら、母はしっかりちゃっかりフレドの影響を受けていた様だ。
「こちら、魔法に関するお勉強の本になります」
この本はこういう内容で、こっちの本は……なんて楽しそうに話す母に圧倒されつつも、少し笑いそうになる。こんな楽しそうな母の姿を見たのは初めてかもしれない。
「フレドに影響受けたの?」
思わずそう言葉にしてみる。
すると、母は驚いた顔をしたのち、首を振った。
「い、いいえ!あと、フレド″様″と呼ばないと駄目ですわよ」
いつもならただの敬語なのに、少しだけお嬢様言葉が出ているあたり、動揺が見受けられる。
それが面白くて嬉しくて、私の口からはとうとう笑い声が出てしまった。
ーーー
フレドに少し教わったとは言え、魔法はまだまだ奥深い様だ。
母が幼少期に読んでいたと勧めてくれた本を読んでみるが、書いてある事があまりに難しくて挫折した←イマココ。そんな気分である。
これは、幼少期から英才教育を受けていたソフィ・エーデルだからこそ、幼くとも読めた内容であり、文字の読み書き、簡単な計算ぐらいしかやってこなかった私には、到底無理な内容だった。
因みに、前世の記憶というアドバンテージがあるじゃん?というのは禁句である。
「サラさん……」
完全敗北をした娘を憐れむ目で見るのはやめていただきたい。
これでも、一応貴女の娘なので、そこの所を理解して頂きたい。
母は腕を組んで、どうしたものか……と分かりやすく考え始めた。
前から思っていたけど、この悪役令嬢、態度に出すぎなのである。本当に悪役令嬢?とまたもや聞きたくなってしまった。
というか、フレドが居た数日の間、悪役令嬢をしてはいたが、思い返せば発言は全て正論だったのだ。
悪役令嬢ソフィはもう少し理不尽な言葉が多かった気がするが、これは大人になったからという事で良いのだろうか?
なんて、現実逃避をしていると、母は両の手をパンと叩いた。
「決めました。私がサラさんに教育をしますわ」
「……え?」
母の決意したようなその言葉に、思わず間抜けな言葉が出た。
「え?じゃありませんわ。時間はありませんもの。ここは、私自ら教育をしますわ」
こぶしを作ってやる気満々なその様子に、呆気にとられる。
店はどうするのかとか、お嬢様言葉出てますわよ、とか色々と思ったが、今の母には言葉が届く様子はなかった。




