第6話
『聖魔法を使えるのは選ばれた人間のみ』
『ミアは、その選ばれた人間だったんだね』
『聖魔法は他と何が違うの?』
『聖魔法は、他の魔法と違って』
『他人の魔力で魔法が使えるんだ』
『その力で、人を内側から治癒したりするんだよ』
《魔法使いへ祝福を》のワンシーンだ。
たしか、フレドと放課後の図書室で勉強をしていた時の2人の会話だ。
ここで主人公は、自分の使える魔法が、他とは違う事を知ったんだ。
ーーー
「本当は、もう少し居たいけどね……」
フレドは、ここにやって来た時と同じく深くフードを被っている。
ここにきて数日、長い様で短かったが、フレドが帰る日がやってきた。
母はそんな事を言うフレドを少し睨んでいる。
けど、フレドはそんな母の態度を気にする様子はなく、寂しそうに微笑んでいた。
「サラ、元気でね」
そう言って、私の頭を優しく撫でてくれた。
母に撫でられるのとは別の心地よさがあり、これが無くなるのは少し寂しく思った。
「ほら、早く帰らないと」
母は急かす様にそう言った。
「そうだね。ソフィも元気でね。何かあったら、いつでも頼って」
「ふん。貴方の助けなんてなくとも、問題ないですわ」
本日の悪役令嬢。ノルマ達成。なんて、いつもなら思ったが、今日ばかりはそう思えなかった。
そっぽを向く母も、どこか寂しそうな顔をしていたからだ。
フレドもそれに気が付いたのか、いつもなら悲しそうな顔をする所を、今回ばかりは少し嬉しそうに微笑んでいた。
「フレド様、そろそろ」
そんな空気を壊す声が1つ。
いつの間にか、フレドの後ろには2人の男性が立っていた。
「ソフィ様、貴女様でもなれなれしい態度は謹んでいただきたい」
悪人面という言葉がピッタリな顔で、ソフィを睨むのはノッテ・フィドゥーチャ。
「まぁまぁ、ノッテ。い、ま、ぐ、ら、い、はいいじゃないですか」
そう言いつつも、トゲが隠れていないのは、アルバ・フィドゥーチャ。
彼らも《魔法使いへ祝福を》の攻略キャラではあるが、一番最初はそうでは無かった。
ただ、二人の性格と、何より双子である事で人気を集め、後々攻略キャラクターとして追加されたのだ。
ただ、追加されたキャラクターをプレイするには、既存キャラをクリアする必要があり、私は二人については攻略をする前に死んでしまった。
つまり、詳しくは知らないのだ。これなら、重課金廃人である友人に聞いておけばよかったと、少しばかり後悔をする。
知っている事としては、こうしてフレドとセットで居た事。
「こら2人とも、ソフィに失礼だろう」
そして、いつもなら自前の無鉄砲さで周りを困らせるフレドを、逆に困らせる数少ないキャラクターである事というぐらいだろうか。
「「申し訳ありません、フレド様」」
果たして反省しているのだろうか。
そう聞きたくなるような笑顔で双子は声をそろえて言う。
しかし、フレドもソフィも慣れている様で、双子に対して文句の一つも言わない。
「それじゃあ、行くね。2人とも、またね」
フレドはそう告げると、今度こそこちらに背を向けて、双子と歩き出した。
そして、振り返る事は無いままに背中は小さくなっていった。
チラリと母を盗み見ると、その顔には先ほどよりも、より一層濃く寂しさが映っていた。
なんだかんだ、フレドに冷たく接していたが、ソフィはやはりフレドの事が……?なんて邪推をしてしまう。
しかし、フレドの態度から見て、少なくとも私はフレドの子ではないだろう。
そうなると、私の父親は誰なんだろうか?
そもそも、私はソフィの子どもなのだろうか?
それは、最近少し気になりだした、新たな疑問だった。




