第15話
お母さんへ
無事、学園にたどり着きました。
これからも、定期的に学園での出来事を送ろうと思います。
ひとまず、明日からの学園生活に備えて、今日は色んな準備をします。
そういえば、部屋は寮の屋根裏で1人部屋です。
1人で使うには少し広く感じますが、今のところは寂しくないです。
ーーー
学園入学当日。
真新しい制服に袖を通し、備え付けの鏡の前に立つ。
この制服を着るのは、これで2度目だ。
1度目は、制服が届いたときに母の前で着て見せたのだ。
その時の母の懐かしそうで嬉しそうな顔と言ったら……。
思い出して、胸がほっこりと暖かくなる。
そして、その時母が私にくれたものがあった。
『娘が同じ学園に通う事になったら、渡したいと思っていたの』
そう言って渡されたのは、母が学生時代に使用していたというネクタイだった。
保管の状態が良かったのであろうネクタイは、新品ほどではないにしろ、何年も経っているとは思えなかった。
そのネクタイを首に巻き、結ぶ。
そうして、再び鏡と向き合う。
新品の制服と合わせても、ネクタイが色あせて浮いているという事は無く、母から譲り受けたとばれる事は無いだろうと思った。
「むふふふふ」
ネクタイが嬉しくて思わずにやける。
このネクタイがあれば、無敵な気がした。
よーし、今日からの学園生活、頑張ろう。
そう強く思ったのだった。
ーーー
入学式当日の席順は、ゲームと同じなら確か自由席だったはず。だったら早めに登校し、隅っこの席を陣取ろう、そう思っていたのだ。
しかし、母から譲り受けたネクタイにはしゃいだ分、完全に出遅れてしまった。
教室についたときには、かなりの生徒が登校済みで、狙っていた隅っこの席は埋まっており、おとなしく余っている席に座るしかなかった。
この学園で平穏に過ごすためには、大人しく目立たず過ごすしかない。そう思っているのだが、第一歩から失敗をした気持ちだ。
とはいえ、まだ初日。しかも、ただ席が隅っこじゃないだけ。
そして、別に目立つ事をしたわけではないのだ。まだいける。
よし、問題なし。大人しく過ごしていくぞ!
「あ、お隣良いですか~?」
心の中で決意を固めていると、そう声をかけられる。
自由席なのだから、聞かなくても良いのに、貴族というのは丁寧なのかな。
そう思い、返事しようと声の主を見る。
良いですよ、なんて返そうと思ったのに、喉で一瞬止まる。
「いっ……い、ですよ」
どうにか、声を出し、そう返せば、相手はニコリと微笑み「ありがとう」と言った。
私も微笑み返しながら、机の下で手の甲をつねる。痛い。
え、じゃあ、夢ではないという事?
私の目の前には、乙女ゲーム《魔法使いへ祝福を》の主人公であり、私を母に預けた人物である《ミア・エルドラード》が座っていた。
あの乙女ゲームと、何ら変わらない、私と同い年ぐらいの見た目のままで。




