第11話
結論から言えば、母は過労が原因で倒れたとの事だった。
アルバが呼んでくれたお医者さんがそういうのだから、間違いは無いだろう。
ここ数日、薬屋と並行して私へ勉強を教えていた事で、満足に睡眠時間が取れていなかったらしい。
そう言われると、罪悪感に苛まれる。
とはいえ、母が隠していた事については、未だに怒っているのだ。
因みにアルバがすぐに気が付いたのは、伝言魔法の鳥が、伝言を届けた後も母の側に居たからとの事だった。
母の急変に気が付くなり、異変を知らせに帰ってきたらしい。鳥さん優秀。
ーーー
「お母さん」
母が目を覚ましたと聞いて、母の部屋の扉越しにそう声をかける。
私の後ろでアルバは何も言わず、見守っている。
「……どうぞ」
しばらくして、そう返ってきた。
母の部屋は、立ち入り禁止。それが我が家のルールのひとつだった。
だから、母の部屋に入るのは、これがはじめてだった。
ギィと少し年季の入った扉を開く。
室内はもっと貴族時代の物で溢れているか、なんて思っていたが、とても簡素な部屋だった。
ただ、学生時代の制服が飾ってあったり、壁にいくつか写真が飾ってあるだけで、それ以外に目立つ所は無さそうだった。
しいて言えば、本棚からごっそり本が消えている箇所があり、その本たちは恐らく、私の部屋にあるものだろうと、推測ができる。
「初めて入ったわよね」
あまりに私がキョロキョロとするからか、母はふふと笑った。
そんな母はベッドの上に座っていて、少しばかり弱弱しく感じた。
「少し散らかっていてごめんなさい。こちらに座って」
そう言って、ベッド脇の椅子を指す。
私は素直にそれに従い、椅子へと腰を掛ける。
「いつか話そうと思いながら、ずっと悩んでいたわ」
そう切り出したその口調は、母でも悪役令嬢でも無くて、1人の人間として話している様に感じた。
「何から話しましょうか……」
「……聖魔法」
母が悩んでいる様に装うので、喧嘩した原因を口にする。
ここでも曖昧に答えたら、次こそ家出をしてやるぞ。なんて思いながら。
母は解っていたかの様に、目を細めて微笑んだ。
「……そうね。聖魔法からよね」
ここから母の話したことをまとめると、こういう事だった。
・聖魔法については、自分も詳しくは知らない
・授業では、選ばれた人間しか使えない尊い魔法だという事だけ教わる
・けれど、他国では実際にはそう思われていないらしい
「そして、サラさん。貴女が、聖魔法を使えるのは知っていたわ」
「デショウネ」
口をタコの様にして、そう返せば、母はまた笑った。
「……サラさん、そこの写真見て欲しいの」
そう言って、サイドテーブルの写真立てを指さす。
言われるがままに手に取り、その写真を眺めれば、驚きで固まった。
「それ、私の学生時代の写真」
確かに、ソフィ・エーデルがそこには映っていた。
「そして、隣が私の親友の」
隣の人物と仲良さそうに、肩を並べている。
問題は、その人物なのだ。
「ミア・エルドラードよ」
乙女ゲームの主人公である《ミア・エルドラード》がそこには居た。




