後編第一章 リアム(ショーナ視点)
ここからは一章の話でも視点はぐるぐる変わるので読みにくいと思いますが、それでも付き合ってくれれば幸いです。よろしくお願いします。
魔獣キャンベルの襲撃の翌日に私は朝帰りした。一晩中、騎士たちの助力でコンランをずっと探し回っていた。だけど全然見つからなかった。おそらく壁の外の川まで流されたと思う。さすがに私の立場で壁の外に勝手に出るのができないので一旦帰ることにした。でも私は信じている。このくらいでコンランが死ぬはずがないと。
お連れした騎士たちにも帰させるべく騎士団本部によった。王子殿下にも報告しなければならない。話を聞くと王子は昨晩の後処理のために中央騎士団本部にいるらしい。
本部につくと王子殿下は中央騎士団団長の部屋にいた。団長さん、そして見たことない男と一緒に後処理の指揮を執っていた。だけど、
「やはりというか、近衛騎士の人は見当たりませんね」
「現場は中央街ですからね。わざわざ助けに来ませんよ。今残っているのは王子とエームル様の護衛騎士ぐらいです」
「代わりにイーアン、ローカンのケイン兄弟の後処理を頼んでおいた。僕もこちらの処理が一段落したらあっちの方に行かなければならない。そういえばクイーン公女はこちらの方と初めてだったな。こちらはカロル伯爵の養子、ブレンダン・カロルだ。ブレンダン殿、こちら今まで行方不明となっていたクイーン公爵のご令嬢、ショーナ・クイーン公女」
「どうも初めまして。自分は養子と言ってもほとんどは道場を継ぐために育てられたもんで、失礼したら先に謝ります」
「お初お目にかかります。ちなみに、道場というのは?それは伯爵家を継ぐのと違うのですか?」
「ええ。カロル家の方針は剣術道場と伯爵家を別々にしています。伯爵家は貴族の家なので血筋を重んじる一方で、道場は実力主義です。皆伝面鏡を取得した者の中から前当主が選び試験に合格した者が次期当主になります。しかし、今回は試験が行われる前に前当主が亡くなったので、現在王国で皆伝免許を取得したのが自分だけでしたから、ま、今は当主になりやした」
そういったブレンダンは当主になったのがやむを得ないからと言わんばかり肩をすくめて頭を横に振った。まあ、最初の予定はロシェーンさんの恋人、ローカン・ケインが婿入りで剣術道場を継ぐと聞いたから。だけど、彼があんなことになって結局はこの人しか道場を継ぐ者がいないということ。それにしても、道場の評判が地に落ちた時に当主になったとか気の毒としか言えないと思った。
一通り挨拶を交わした後に私は王子にコンラン、剣の道化師の探索結果を報告した。王子はそれとなく私に気遣ってくれたが、コンランなら大丈夫。そう強く念じて王子も分かったのか余計なお節介をやめた。
「では私は一度公爵の家に...」
「いい加減にして!!!」
帰りますという前に部屋の外から大声が聞こえた。あれは、エームル様の声だった。王太子妃の騒ぎを無視することもできずみんので確認に行くことになった。見れば、エームル様はリアムの前に立って腕を広げていた。道を防ぐ姿勢らしい。どうやらリアムは腹に穴が開いても仕事に出ようとしていた。
「貴方は任務に行ける状態ではない!寝ていてください!」
「お言葉ですが、今は手がいくらあっても足りない現状です。市民の生活にも影響が出ています。自分だけが寝ているわけにはまいりません」
「貴方は魔獣を打ちました!十分使命を果たしました!だからもう、自分の身体を大事になさってください!そうしないと、わたしは...」
まだ知り合って短いでしたが、それでも前から聞いた話に相まって冷静なエームル様がリアムに対して感情をむき出しにしていた。昨日薄々感じていたが、エームル様はもしかしてリアムのことを...まあとりあえず今のままでは話は平行線に行くので私が間に入った。
「エームル様、落ち着いてください。外まで声が聞こえています。王太子妃が騒ぎを立てればみんな気になって仕方ありませんから」
「...っ、ごめんなさい」
「いいえ。ご理解いただき感謝します。それで、リアム、あんたは何をするつもりなの?」
「任務です。今日は非番ではないので」
「非番じゃなくても怪我したときは休むべきでしょ?」
「大した怪我ではありません」
「ふーん、じゃあ押しても問題ないってこと、ね!」
そういいながら私は自分の手をリアムのお腹に力を入れて押した。そうすると、リアムは、顔を青くなっても笑顔を保ってまま強がりをやめなかった。
「は、い。大丈夫、でしょうっ」
「...あんたも、バカの一人なのね。やはり類ともなんだね。あんたたちは」
「ショーナ様...」
「もう、何を言っても無理ですわ。エームル様。せめて、私の力で痛みを減らしていくね。リアム」
「お気遣い、感謝します」
私はリアムのお腹を触った手で彼の傷に癒しの力を使った。私の力は思った通りに万能じゃなかった。傷は止血ぐらい、病は気を安らぐぐらい、精神は落ち着かせるぐらいが限度だった。それでも苦しんでいる中で少しでも楽になれたと、みんなに感謝された。だから力以外に彼らを助ける方法をずっと学んできた。だけど、その中には、リアムのように、強い意志で傷だらけでも、病を負っても、やらなければならないことを意地でしようとする者がいることもよく知っていた。コンラン(あのバカ)はそうだったからね。
だから、分かる。リアムにはその強い意志もあった。ま、今回はどちらかというとやけくそな意志でしょう。昨日の戦いで負けたのだから。リアムも、コンランも。そして、たった一人の勝者が今は牢屋の中にいる。悔しい気持ちがぶつけることができなくてとにかく自分のやるべきことにただ没頭したいだけ。だから、止めなかった。
施しが終わりリアムを行かせようとしたが。再びエームル様がリアムの前に立った。
「やっぱり...ダメです。苦しむあなたを、見たくない!」
「エームル様...」
「エームル...」
「...本当に、困ったご令嬢さんだね、エイミちゃんは」
「え...?」
最後にリアムは小声で何か言ったがよく聞こえなかった。でも、近くにいたエームル様はそれを聞いて動揺になってその隙にリアムは彼女を通り越した。
「それでは殿下、団長、お騒がせしてすいません。出動します」
「うむ。まあ、限界だと思った時にはちゃんと休むように」
一言、今まで事の成り行きを見守っていた団長さんと王子に挨拶した後、リアムは出て行った。




