表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/30

前編第三章 騎士の剣4(エームル視点)

“騎士の(つるぎ)”の話を聞いてから時間が去った。あれ以来、わたしはリアムと会っていない。どんな顔で会えばいいかわからなかった。お父さんを国外に追い出し、お母さんを死に追い詰めたのはもともと貴族の陰謀だからだ。わたしもその貴族の一員。いいえ、将来は王太子妃になる人、いわば貴族の上層部の一人である。彼を不幸にする親玉の一人として彼に向ける顔は持っていない。それなのに彼は、偽装の男爵令嬢であったエイミ(わたし)を笑顔で接してくれた。貴族全てを憎んでもおかしくないのに。そう思った時パトリック様の言葉を思い出した。


「人は負の感情を心の奥底に潜ませている。今は騎士として励んでいるが、彼が実際にどう思うか、今後どう動くかわからない。もし、彼と会う時があったら気を付けることだ」


リアムの心、彼の本当の感情は確かにわたしには分からない。なぜ彼はわざわざ“騎士の(つるぎ)”わたしに教えたのでしょう。それにあの時のリアムの様子。

と、色々あってわたしはリアムに会う勇気を絞ることが出来なかった。その間、周りには色々な事が起きた。カロル伯爵令嬢、ロシェーンはわたしの専属侍女になった。例の事件でまだ正式に伯爵の位を継いでいない彼女は伯爵家を国に預けて自分で生きる力を身に着けるために宮で侍女を務めたいそうだ。剣豪の家の者は規律に厳しいと聞いていますが、礼儀正しいではあるがロシェーンはとても気さくな女性で侍女と主でありながらも彼女は友達だとわたしは思った。

そして、議会の税金担当、キャンベル侯爵が裏で権力を使って人攫いと人身売買を行ったことが発覚して彼と数人の貴族の身柄が逮捕された。その現場にリアムがいたらしい。


また、彼に貴族の闇を見せてしまった。


驚いたことに、あの現場に十数年前に攫われたクイーン公爵の娘、癒しの力を引き継いだ公爵の姫君が見つかった。これは貴族、王族たちが大いに喜び王家主催のパーティーまでも開催しようと思ったのですが、公爵家はそれを断った。一度攫われた彼女はどうやら今まで下町で育ったようで、まだ貴族の風習を全然知らない。一応、公爵はその令嬢を王宮に連れてきて王家紹介したが、その時に見た彼女、名前はショーナ・クイーン、とてもギラギラな眼をしていて、言葉遣いや作法に雑に見えるがその中の強い芯を感じた。下町育ちの公爵の姫君、彼女の価値観は王国を大きく変えることになるのはその場にいた者たちはまだ知らない。


そのままわたしは王宮での業務と勉強に身を捧げ、リアムの事を考えないようにした。わたしは逃げた。もし本当はリアムがわたしの事を嫌ったらと思うととても怖かった。だけど、せれでも、やっぱり寂しい。我慢の限界で思わずため息を出してしまった。


「「はあ〜」」

「あ、どうされましたか?エームル様」

「い、いいえ。ロシェーンこそため息なんて珍しいですね」

「申し訳ありません。以後気を引き締めます」

「いいんですのよ。ただ、最近友達と会えなくて寂しいだけですの」

「そうでございますか。エームル様もそうなんですね…」

「あらあら。ロシェーンも同じですの?もしかして噂のケイン子爵のことですの?見たことあるけど確かに良い感じな男性ですのね」

「い、いいえ。あの方とはそういう関係では、」

「うふふ。慌てているロシェーンも可愛いですのね。でもねロシェーン、貴女は望めばその方と結ばれるから、自分の心に素直になってもいいと思いますよ。わたしと違ってね…」

「…エームル様の友達はどんな方ですか?」

「それはね……秘密☆」


わたしはロシェーンの質問を誤魔化し、彼女もわたしの心境を知っているからかそれ以上聞かなかった。小さい声で「ありがとう」と言ってわたしは立って街の方面に向く窓の外を見渡した。やっぱり寂しい気持ちを抑えられなくて口を出してしまった。


「リアム、また会いたいよ」

「…り、あむ…?」

「ロシェーン...?」

「あ、あああ…あああああああああ!」

「ロシェーン!ちょっとどうしたの!?誰か!医師を呼んでちょうだい!早く!!!」


ロシェーンがいきなり頭を抱いて苦しそうにしていてわたしは焦った。外の護衛騎士に医師を呼んでもらって、ロシェーンをベッドに寝かせた。どうするかも分からず、わたしはただ彼女の手を取ってずっと彼女の名前を呼びながら大丈夫と繰り返すだけだった。その時のわたしは結構混乱していて、誰かが部屋に入って近づいていたことも気づかなかった。


「勝手に入ってごめんなさい」

「あなたは…クイーン公爵令嬢…」

「少し退いてくれませんか?彼女に癒しを施します」

「え、ええ…」


わたしはまだ追いつけなくて、とりあえず彼女の言われた通りに身を引いた。そして彼女はしばらくロシェーンの様子を診ていたら、


「これは…どうやら原因は精神によるものだな…ちょっと失礼」


そう呟いて、ロシェーンの上半身を起こして彼女の頭を自分の胸に包み込んだ。そっと頭を優しくなでながら、彼女たちは光りだした。強い光じゃない。薄くて、でもどこか優しいと感じた。そして見る見るうちに、ロシェーンの表情に安らぎが戻った。


「…ありがとうございます。クイーン公爵令嬢様」

「偶然通りかかったから気にしないで。それよりどうしたの?ずいぶんと恐怖を感じたようだけど。いや、不信感といえばいいかな…」

「それは…」

「ロシェーン!!」


はたまたいきなり人が入ってきた。入ってきたのは、確かロシェーンの幼馴染のケイン子爵、とその隣になぜかパトリック様も一緒に来た。わたしの疑問を気づいたのか、パトリック様はすぐに説明してくれた。


「事情は君の護衛騎士から聞いた。ちょうどその時にケイン子爵と打合せしたので場所が場所でわたしが彼と一緒についていくことになった。もうすぐ医師が来る」

「そうですか。お心遣いありがとうございます」

「ご無礼をお許しください。王太子妃殿下。どうか、ロシェーンの様子を確認させてください」

「ええ。あなたがいればきっとロシェーンも落ち着くでしょう。どうぞベッドの傍に」


わたしがそう言ったらケイン子爵は礼を言ってすぐにロシェーンの傍に駆け付けた。本当に仲がよさそうに見えて少しうらやましいと思った。


「ロシェーン。大丈夫か?まだ痛いところがあるか?」

「ええ。大丈夫よ。イーアン。ごめんね。心配をおかけして」

「いいんだ。一体何があったんだ?」

「思い出したの…あの日の記憶を…」

「あの日…?」

「お父上が亡くなられた日、ローカンがいなくなった日」

「…!!」


カロル伯爵の事件の被害者であり当日の唯一の目撃者。今まで彼女はその日の事よく覚えていないと言って、それ仕方ないと我々が思った。自分の父親が切りかかってきて、それを自分の恋人がかばってくれたのにもその父親が死亡して、恋人が不明な理由で姿を消した。その真実を今知ることが出来ると思って全員の顔に緊張感が下りかかった。


「あの日、とても普通の日でした。道場で稽古が行われて、そのあとにローカンはうちに泊まる予定だったのでローカンとお父上の打合せの時間までは私たちは二人で時間を過ごしていました。その時、夕日を眺めていた時に、何の前振れもなくお父上は私を斬りかかったんです。その場にローカンがいなかったら今頃…うう」

「ロシェーン!無理をしないでくれ。しかし、あのカロル伯爵め!やはりあいつは狂っていたのか!?」

「ちょっと静かにしてくれる?それで、まだ続きがあるでしょ」

「は、はい。ローカンは私をかばってくれてお父上と打ち合うことになりましたが、ローカンも戸惑っていました。普通でしたら、ローカンももう斬り捨てられたはずが、お父上はローカンを斬れませんでした」

「それは…情があったからという理由ではないんだな」

「左様でございます。殿下。ローカンによると、お父上は誰かに毒されたのようです」

「毒!?」


その言葉を聞いて部屋にいる全員が驚いた。毒。つまりは誰かが意図的にカロル伯爵を殺そうとしていた。でもそれは誰だ?それに、


「ねえ、ロシェーン。もしかして、カロル伯爵をあなたを斬りかかったのもその毒のせいなのですか?」

「…いいえ。お父上が私を襲ったのはローカンへの当てつけです」

「ローカンへの?どういうこと?」

「お父上は自分の死を悟って、最後にローカンと真剣勝負したかったんです。それで、彼を本気にさせるために私を襲いました」

「ただそれだけのために…」

「はい。私も、今でも理解できていません。お父上や、ローカンが言うには剣士としての本望、誇りだそうです。ローカンにも自分の誇りをもってお父上の考えを否定しました。なぜならローカンは毒で弱ったお父上ではなく、元気で強いお父上と勝負したいと。だからダメ元でも医者に連れて行くと言いました。その意見がぶつかり合い、二人はまた打ち合うことになった。ローカンは殺さずにお父上を医者の所に連れて行きたいから致命傷を避けて、お父上は弱った身体でローカンを完全に討つことはできませんでした。結局決着は付けずにお父上の身体の中の毒が回ってお父上は亡くなりました」

「なんて、愚かな…」


ロシェーンの話を聞いてパトリック様はそう呟いた。愚か。プライドの為に死んでゆくのは確かに馬鹿な事。わたしもパトリック様と同じ意見でロシェーンに対して何も言葉を発せなかった。その代わりに冷静なクイーン公爵令嬢は聞き込みを続けた。


「それで、肝心の犯人は?誰がカロル伯爵に毒を盛らしたの?」

「そこまでは…お父上も何も言いませんでしたので…」

「そう…」

「それより、ローカン。ローカンはどうなんだ?ロシェーン」

「ローカンは…自分の非力さに後悔していました」

「なぜだ?あいつは何も悪くなったはずだ!?なぜいなくなる必要がある!?」

「私も分からなかった…あまりの出来事に心も頭も追いつけなくて、いつの間にかローカンはもういなくなったの」

「ちょっとアンタ。彼女もつらいんだからそんな大声でしゃべるなよ」

「ご、ごめん」

「…ううん。私の方こそすみません。ただ、いなくなる前にローカンは私に言いました」

「それは…何を言われたんだ?」

「…『自分は犯人捜しに行く。何かあれば騎士のリアムを訪ねてくれ。』とだけです」


リアムの名前が出て私は今日最大の衝撃を受けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ