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前編第三章 騎士の剣 3(エームル視点)

キリアンに会った次の日、わたしはすぐに”騎士の(つるぎ)“についていろいろと調べた。”騎士の(つるぎ)“とはとある騎士のあだ名だった。実の名はアレックス。平民出身で家名がいない。ただし、彼の剣技はかのカロル流剣道の当主であったクレーグ・カロルに比敵すると言われ、実際昔の隣領とその先にある諸部族との小競り合いで歩兵として最先端に立ち誰よりも戦果を挙げた。味方の道を切り開いたその姿は剣の如く。そして彼は”騎士の剣“と呼ばれ国民的な英雄(ヒーロー)になった。


「凄いお方なんですね…」

「ああ。彼の全盛時代では平民たちが情熱になって、貴族や王族ではない彼の活躍は国民たちの注目と感心を集中させた。正に英雄だ」

「ぱ、パトリック様…気づけなくて申し訳ありません」


いきなり声をしたらそれはパトリック様と気づき慌てて淑女の礼をした。


「良い。僕の方こそ驚かせてすまなかった。ずいぶん騎士団の記録に熱心だな。軍事に興味があるか?」

「い、いいえ。軍事というより…」


リアムの事が気になっています。なんて口を裂けても言えるはずがない。瞬時に頭を動かしてそれなりの理由を述べた。


「英雄という現象に学ぼうと思いました。英雄と貴族も平民もみんなが認める人。それに呼ばれた人はどのようなお方なのか知りたいと思います。王族として正しい振る舞いをするためにも」

「なるほど…確かに平民も認める英雄の生き様を学ぶのはいいことだ。アレックスはその身と剣を国に捧げ、貴族も平民も関係なくすべての国民を守った。その行いは正しい」

「やはり、英雄に呼ばれるだけに立派な人ですね」

「ところが、王国のために振るったその剣はやがて王国をも傷つくことになった」

「え?」

「“騎士の(つるぎ)”が諸刃だったってわけだ。平民出身の彼が活躍すればするほど貴族たちの立場が危うくなる。王国の体制が崩れかけないんだ」

「そんなことが…」


本当に正しいでしょうか?という言葉を飲み込んだ。それを言うと、今までの王国の成り立ちや伝統を否定することになるからだ。


「それゆえに、実力を持っても彼は中央街騎士団の隊長で留まりになったが、それでも国民の彼への信頼が厚く、我々はそんな彼らを恐れた。アレックスを中心に王族、貴族への反逆を」


平民たちの反逆。昔から、この国の貴族と平民の関係が最悪だった。国を立ち上がりした人たちの血を継ぐ王族と貴族、そして外から流れてくる平民。昔は伝統を重んじるためにわたしたちは貴族と名乗って平民たちをまとめた。それが貴族議会の始まりだった。しかし、いつしか貴族がより権力と富を得て、管理していた民が格下と見下すことになり、守ったはずの民からより多く富を得るため理不尽な税金を取ることになった。

平民たちも、最初は守ってくれた貴族たちには感謝して一緒にこの土地を豊にしていてくれたが、結局全部貴族たちがすべての収穫を独り占めして、不満が芽生えてそして王族、貴族への不信になり、今は貴族と平民、特に下町の人たちの間には大きな溝ができていた。


「しかし、かつて移住民だった下町の人たちにも国のために益をもたらせ、平民の生活を豊にして貴族との関係を改善してくれた。それが中央街であって、アレックスが所属していたのはその騎士団のはずなのでは?」

「確かに彼は中央街の騎士団に所属していたが、彼は中央街の家の生まれではない。アレックスは下町育ちだ。しかも孤児だった。どこの馬の骨が知らずの人間が人気になったのは貴族たちも面白くとは思ってないだろうか、国境線や隣領への任務が多く授けた。その間、彼の噂がどこからか流れ始めた」

「噂、ですか?」

「アレックスは民を含めて王国を裏切ったという噂だ。最初は民たちはそれがでたらめだと信じようともしないが、アレックスが隣領に頻繁に出ていくのが事実だった。国民に疑惑が残ったまま、4年前、アレックスは本当に王国を裏切ることになった」

「まさか、4年前の東の隣領で起きた事件が…?」

「そうだ。あれはアレックスが主犯になって行った事件だ。彼の実力を知った王国すぐに彼に唯一対抗できる人、カロル伯爵とその門下たちを送り出した。結果、カロル伯爵はアレックスを討ち取って事件が解決した。英雄であった“騎士の(つるぎ)”アレックスはその生涯を裏切り者として幕を閉じることになった」


悲劇の英雄。それが“騎士の(つるぎ)”アレックスの物語だった。彼はなぜ王国を裏切ったのdでしょう。そして、なぜリアムは彼の名前を教えたのでしょうか。話が聞けば聞くほど分からなくなってきた。そして、パトリック様はまだ、話を続けた。


「…ここからはただの余談だ。そんなアレックスにも騎士で在られたときには妻を娶って子供も預けた。中央街に家を買って家庭を持った。だが、彼の裏切りによって当然その家族にも風当りが悪くなる。裏切りの一族と呼ばれた」

「そんな…」

「まあ、これは貴族にもよくある話だ。家の一員の失態はその一族が責任を持たなければならない。だが、国を裏切った罪はとても大きい。特に民たちは誰よりもアレックスを信じたから、その分だけに失望感と怒り大きかった。カロル伯爵に討たれたから直接アレックスにぶつけなかったその感情を彼の妻と息子に当たった。いわば八つ当たりだ」

「…」

「妻の方は元々体が弱くて、それからはまた悪化して間もなくアレックスを追うよう亡くなった。幸いにも息子の方はもう成人していて当時15歳で騎士の見習いをしていた。その息子は周囲から責められても、それを耐え騎士として今も国のために働いている」


ここまで来て、わたしは何となく話がつながった気がした。正直とても不安だったが、どうしても確かめなければならなかった。だから、パトリック様に質問した。


「その騎士の名前は…?」

「リアムだ」

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