第2章 第18話「次の荷を考える」
第2章 第18話「次の荷を考える」
次の店には、干した果物のほかに、茸の袋も並んでいた。
俺は干し葡萄の見本を見てもらい、買い取りを考えてもらえる量と条件を尋ねた。店主の話を書き留めてから、奥の棚へ目を向ける。
「そちらの干し茸も、行商人から買うことはありますか?」
「品を見てからだな。何でも同じ値段で取るわけにはいかん」
店主は口を開けた袋を寄せ、見てもいいと言ってくれた。
俺が手を伸ばすと、乾いた茸が軽く触れ合った。形を残したものと、端の欠けたものがある。店主は使うところによって欲しい品が違うと話し、状態を確かめるために袋の中も見せた。
「細かくなったものでも使い道はある。ただ、それを形の揃ったものと同じ値で持ってこられても困る」
「分けて見た方がいいんですね」
「そうだ。湿ったものが交じっていないかも見ておけ。持ってきてから、この袋は引き取れませんとなると、お前も困るだろう」
俺は頷き、扱っている茸の種類と、買い取る量の目安を聞いた。まだ村へ行く日も決めていないので、取り置きや注文の話にはしない。
それでも、店主が何を見て値段を付けるのかは聞けた。品を運んでから相談するより、先に知っておけることがある。
店を出るときには、干し葡萄の条件の下へ、茸についても書き加えていた。
*
その日のうちに、魔石と牙を買い取る店も探した。
魔導具を扱う店では、買い付ける魔石の条件を教えてもらえた。牙は別の素材店で扱っていると分かり、それぞれへ品を持ってくる話を付ける。
家へ戻ると、納屋の箱を開けた。
ロイが回収し、三人から買い取った魔石が包みの中にある。その隣には牙の包みを置いていた。朝まで帳面の仕入れ欄にあったものを、明日は実際に店へ見せることになる。
包みを別々に確かめ、持っていく鞄へ収めた。仕入額を書いた紙も忘れずに入れる。
残った布と針と糸は、棚へ戻しておいた。これも次に売れる品だが、同じものを買い足すかどうかは、行き先を決めてから考えよう。
戸締まりをして振り返ると、庭には荷馬車があった。次に積むものは、まだ決まっていない。それでも、どこへ何を持ち込めるのかを聞いた分だけ、空の荷台を見る気持ちは変わっていた。
*
翌朝、魔導具の店へ行くと、昨日話した男が奥から出てきた。
俺は魔石を包みから出し、どこで手に入ったものかを伝える。男は品を確かめてから、こちらへ目を向けて、
「これなら買える。うちの買い取りは、この額だ」
示された値段は、三人から買い取った額を上回っていた。
俺は仕入れの控えを確かめ、店で聞いた条件とも見比べる。品を見せれば必ず話が付くと決まっていたわけではないが、今日は引き取ってもらえるものだった。
「その値段で、お願いします」
代金を受け取り、硬貨を数えた。品を渡して帳面へ書くと、仕入れの欄にだけあった魔石に、売却の記録が並ぶ。
「また扱うことがあれば、先に話を聞きに来てもいいですか?」
「ああ。そのときも品を見せてくれ。いつでも同じ値で全部買うとは言えんからな」
「はい。自分も、仕入れる前に条件を確かめます」
店を出てから、受け取った代金と仕入額の差を確かめた。
三人には、ギルドへ売る場合と同額を渡している。俺には、ここまで品を持ってきて売った分の利益が残った。
あの魔物を倒してくれた三人の顔を思い出した。道で手に入れたものが、町の中で次に使う人へ渡る。その間を俺がつなぐ商売もできるのだと、硬貨をしまいながら考える。
牙も素材店で見てもらい、引き取るという値段を聞いてから売った。魔石とは別に代金と仕入額を記し、二つの取引を終える。
昨日まとめた港の売上とは、分けて残しておいた。これで、納屋にあった品の一部が、次の仕入れに使える金へ戻った。
*
商業ギルドへ寄ると、ヒルデが相談机へ資料を運んでいた。
声を掛け、魔石と牙を売れたことを話す。彼女は帳面を見て、品ごとに書いた仕入額と売却額を確かめてから、
「持ち込めるところが分かったのね」
「ああ。ただ、次も同じ値段で買うとは限らないって。品を見て決めるそうだ」
「なら、その条件も一緒に残しておきましょう」
俺は頷き、干し葡萄と干し茸について聞いた紙も出した。店によって欲しい量や状態が違い、今ある在庫でも買い方が変わることを話す。
ヒルデは紙へ目を通し、茸についてのところで顔を上げて、
「ハッセの品も、見てみたい?」
「気になってる。店で話を聞いてから、余計に」
彼女は村の資料を開いた。先に渡してもらった紙と見比べられるよう、俺も鞄から出して机へ置く。
「今は、ハッセから出す乾燥済みの薬草や茸が増える時期なの。普段から来ている商人も買い付けているけれど、追加で引き取り手を探している品があるわ」
「それなら、買えるものがあるかもしれないな」
「ええ。村から届いている情報だから、現地で品と残っている量を確かめる必要はあるけれど」
俺は公開されている買い付けの案内を読んだ。いつまでも同じ量が残っているわけではないし、ほかの商人が先に買うこともある。それでも、何を探して行けばいいかは分かる。
「薬草の方も、こっちで扱う店に聞いておきたい」
「そうね。種類や状態によって扱いが違うから、先に持ち込みの条件を聞きましょう。相談できる店はこちらにあるわ」
ヒルデが示した情報を控え、帰りに立ち寄る先を決めた。茸は昨日の店で話を聞いたが、実物を持ち込む前提で、もう少し確かめたいところもある。
初めて港へ行ったときは、向こうへ着けば帰りの荷を選べると思っていた。今回は、戻ってきた品をどこへ持っていくかも、行く前から紙へ書けている。
*
「行きには、何を持っていこうか」
俺が言うと、ヒルデは生活物資についての情報を寄せてくれた。
村へ入っている商人がいるので、何を運んでも不足を埋められるわけではない。必要とされている品と、自分が仕入れられるものを合わせて考える。
針と糸は、残っている分も使える。布については港で売れたからと同じ量を持つより、村で使うものと、売る時間を考えたい。
「品を絞れば、帰りに買ったものを置く場所も残せるな」
「ええ。行きの荷を全部売れなかった場合も、考えておいてね」
売れ残った品と買い付けた品の両方を積んでも、馬に無理をさせない量にする。俺は荷台で使った箱の大きさを思い出し、紙の端へ置き方を書いてみた。
次に、道と日数を確かめる。
ハッセまでは荷車で丸一日。後半には山道がある。行って売り、買って帰るなら、港へ行った一日とは違う支度が必要だった。
「三人にも、この道を見てもらう。泊まる場所と馬を休ませるところも、決めてから仕入れたい」
「その順で進めましょう。道の新しい情報も、冒険者ギルドで確かめてね」
「ああ。商売になる量と、運べる量の両方を見ないとな」
費用の欄には、まだ確かめてから書くところが残る。村で何をどれだけ買えるかも、現地へ行くまで決まらない。
それでも、昨日より考える順番は見えていた。帰りの品を買う金を残し、買う条件と売る条件を比べる。そのうえで、道と三人の支度に合う計画にする。
俺は紙の上へ、次の行き先としてハッセの名を書いた。
「次は、ここを考えたい」
ヒルデは文字を見てから、俺へ目を向け、
「分かった。品の情報をもう少し見て、三人にも相談しましょう」
*
ギルドを出たあと、薬草を扱う店へ向かった。
買い取りについて聞くと、店主は扱っている種類を教え、乾燥や選別の状態によって値段が違うと話した。俺は村の資料にある品と照らし合わせ、今の自分が見分けられないものは、見本を見せてもらって確かめる。
話が済んで店を出ると、鞄の中には、村で買うときに見るところと、戻ってから持ち込む条件が揃っていた。
通りの向こうを、荷を積んだ馬車が通った。どこへ運ぶ品だろうと目で追いかけ、今度はその荷を下ろしたあとのことまで考える。
俺の荷馬車にも、次は往復の品を載せたい。
家へ戻ったら、残りの商品と箱をもう一度確かめよう。それからロイたちへ、道と日数を相談する。
俺は鞄へ手を添え、納屋に残っている品を思い浮かべながら歩き出した。




