↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/25

プロローグ 青い町の入り口

「着いた! ここが水運の町、ミナトスだよ!」


ノラが両手を広げて胸を張った。


頭上には初夏の風が吹き抜け、川の匂いと、どこかの屋台から漂う香ばしいタレの匂いが混ざり合っている。


相棒は地図から目を上げ、静かに周囲を見回した。


「……ノラ」


「何? 探偵の勘に感動した?」


「あそこに見える門の看板、何て書いてある」


「え? 『ようこそ、ミナトスへ』」


「裏側だろ」


「え?」


「俺たちは今、町から出ようとしている」


ノラの笑顔がぴたりと止まった。


「……町を出ることで、外からの防犯意識を高める高度な現場検証だよ」


「駅から歩いて五分で町を出るな。引き返すぞ」


相棒がノラの首根っこを掴んで回れ右をさせる。


運河沿いの石畳には、青い布があちこちに結ばれ、魚をかたどった銀色の飾りが涼しげな音を立てていた。年に一度の水運祭を控え、町全体が浮き足立っている。


「でも、今回の依頼って何だっけ? 美味しい川魚を食べる仕事?」


「祭りの警備補助と、古い未解決事件の資料整理だ。河川警備隊から正式に来た依頼だぞ」


「資料整理かあ……文字がいっぱいあるやつだ」


「読むのは俺の仕事だ。お前は余計なものに引っかからずに歩いてくれ」


「失礼だなあ。私、怪しいものを見つけるのは得意だよ」


「お前が引っかかるのは、大抵美味そうな匂いと、同じ形の角と、干物屋の親父だ」


二人が運河に架かる小さなアーチ橋を渡ると、賑やかな広場が見えてきた。


色とりどりの屋台が並び、青い旗が翻るその中央に、人だかりのできた大きな掲示板がある。


「ほら、見て相棒! 広場があったよ。私の勘、当たってたでしょ!」


「俺が案内したからだ」


ノラは相棒の小言を聞き流し、吸い寄せられるように広場の掲示板へと駆け寄っていった。


祭りのお祝いムードで埋め尽くされたその板の真ん中に、ひときわ異質な、色褪せた青い紙が貼られているのを見上げるために。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。