④ 知らんがな
倉庫の扉が開いた。
「こんなところで何をしている」
相棒が立っていた。
ノラが戻らないので、捜しに来たらしい。
「狐様を呼んでた」
「帰るぞ」
判断が速かった。
「待って!」
金髪の少女が叫ぶ。
「まだ帰してない!」
相棒の足が止まる。
「誰をだ」
少女は木箱の狐を指差した。
相棒は紙を見た。
銅貨を見た。
ノラを見る。
「お前が呼んだのか」
「人数合わせ」
「また余計なものへ首を突っ込んだな」
「腕を掴まれて連れてこられた」
相棒の目が二人の少女へ向く。
二人は同時に視線を逸らした。
「それで、何を尋ねた」
「好きな人の気持ち」
「答えは?」
「二人が思ってたのと違ったみたい」
赤毛の少女が顔を赤くした。
「言わないで!」
金髪の少女も慌てる。
「狐様が間違えただけだから!」
「私が動かしたことにもされた」
相棒は吹き出した。
「笑わないでよ!」
「いや、すまん。今回は謎でも何でもなかったな」
ノラは二人を見た。
「三人目に知らない人を呼ぶ時点で、もう答えは決まってるようなものじゃない?」
「何の答えだ」
「気に入らない結果が出たとき、誰のせいにするか」
相棒は笑いを堪えながら頷いた。
「人が濡れ衣を着せる瞬間の心理は、案外いちばん怖い謎だったよ」
「大げさだ」
「ところで」
ノラは少女達へ向き直った。
「レオンとニールの本当の気持ちは、本人に聞けばいいんじゃない?」
二人は同時に首を振った。
「無理!」
「絶対に無理!」
「じゃあ、どうしたいの?」
「狐様に、好きだって言ってほしかったの!」
「そうしたら自信が持てたの!」
ノラは二人を見た。
しばらく考えた。
「知らんがな」
相棒が、とうとう声を上げて笑った。
二人がむくれる。
ノラは出口へ向かった。
「狐様は?」
赤毛の少女が不安そうに尋ねる。
「帰ってもらわなくていいの?」
ノラは振り返り、木箱の上を見る。
「私、呼んでないから」
「そういう問題!?」
倉庫を出たところで、相棒が尋ねた。
「結局、銅貨を動かしたのは誰だ」
「私は動かしてない」
「二人も、動かしていないと言っていたな」
「うん」
「では、残りは?」
ノラは倉庫の扉を見る。
中から、かすかな音がした。
硬いものが、紙の上を擦るような音。
相棒も聞いたらしい。
二人は顔を見合わせた。
「風だな」
「窓、閉まってたよ」
「鼠だ」
「木箱の上まで登ったの?」
「帰るぞ」
相棒は歩き出した。
ノラも後を追う。
倉庫の中から、少女達の悲鳴が聞こえた。
ノラは足を止める。
「助けに戻る?」
「狐様に任せろ」
「判断が速いね」
「今日はもう、知らんがな。だ」




