② 狐の答え
三人は木箱を囲んだ。
銅貨の上へ、それぞれ人差し指を置く。
「力を入れないで」
「絶対に動かさないで」
「目も開けないで」
注文が多い。
ノラは言われたとおり目を閉じた。
見えなくなっても、耳は塞がれていない。
赤毛の少女が、低い声で呼びかける。
「狐様、狐様。おいでください」
金髪の少女も続けた。
「いらっしゃいましたら、『はい』へお進みください」
指先の下で、銅貨が震えた。
ゆっくりと動き出す。
ノラは指を置いたまま、その動きについていった。
やがて止まる。
「来た」
赤毛の少女が息を呑んだ。
「目、開けないでよ」
「閉じてる」
「じゃあ聞くね」
赤毛の少女は一度、咳払いをした。
「同じ組のレオンは、私のことが好きですか?」
銅貨が動いた。
さっきより速い。
右へ滑り、少し迷うように揺れ、止まった。
沈黙が落ちる。
「……違う」
赤毛の少女の声が低くなった。
「何が?」
ノラは目を閉じたまま尋ねる。
「何でもない!」
今度は金髪の少女が身を乗り出した。
「狐様。食堂で働いているニールは、私を将来のお嫁さんにしたいと思っていますか?」
ノラは心の中で首を傾げた。
ずいぶん具体的だ。
銅貨が再び動く。
円の中を横切り、ある文字の上で止まったらしい。
金髪の少女が声を上げた。
「友達!?」
答えを読み上げてくれたので、目を閉じていても分かった。
「友達なんだ」
「黙ってて!」
「質問したのはそっちなのに」
二人が何やら小声で相談している。
ノラには、ところどころ聞こえた。
おかしい。
そんなはずはない。
もう一度。
今度こそ。
「狐様」
赤毛の少女が尋ねる。
「レオンには、ほかに好きな人がいますか?」
銅貨が動いた。
止まった瞬間、二人が叫んだ。
「あんたでしょ!」
ノラは目を開けた。
少女達が、揃ってこちらを睨んでいる。
「何が?」
「動かしたの!」
「私じゃないよ」
「嘘!」
「私達は動かしてないもの!」
「私も動かしてない」
「じゃあ、誰が動かしたのよ!」
ノラは紙の中央に描かれた狐を見た。
「狐様?」
二人の顔色が変わった。




