↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第二部】クロエの美しい思い出の断片  作者: Sakusaku


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/10

第4章 : あの建物の中、何があるの?

「ねえ、ねえ…聞いた?」


「どんな話?」


「東江戸郊外の廃病院で人を殺す幽霊の噂があるんだけど…」


「えっ?…この辺りじゃないの…?夜にしか現れないらしい…夜に行かなければ殺されないって…」


「怖い…」


「その幽霊は、犠牲者をずっと『お母さん』と呼びながら殺すらしい…」


「うわぁ…気味が悪い…」


「男の人なら『お母さん』と呼びながら殺すらしいけど…女の人なら…お腹が異常に膨らんで…ドスン…」


「気持ち悪い…見たくない…」


「私も…遭遇しないことを祈るばかり…」


 ◆◇◆


「おいおい…遊ぼうぜ!」



「正気なの?…もうこんな時間よ!」


 暗闇の中、坊主頭の少年が少女の寝室の窓を叩いていた。


 少女はベッドに横たわり、彼を追い払おうとしたが、少年はしつこく話しかけてきた。


「あの…あの『廃病院』に行きたいんだけど、一緒に行ってくれない?」


「えっ!?…正気なの?絶対行かないわよ!」


 少女はきっぱりと拒否したが、少年は両手を合わせて頭を下げ、懇願するように言った。


「お願い、一緒に行って!他の誰も来てくれないんだ。君しか行けないんだよ。」


 本当は…一人で行けばいいのに、と言いたかったのだが、頷いて同意した。


「わかった…行くなら…私からあまり離れないでね。」


 少女は身をよじりながら言った。それはただ一つのことを意味していた。


「私を信じて。」


 青年が手を差し伸べると、若い女性はそれに応えて手を握った。


 若い女性の心臓は激しく鼓動した。ただ触れ合っただけで、こんなにも胸が高鳴るのだ。


 これが、好きな人と二人きりになった時の感覚だった。


 夜になると警備員が巡回するため、二人は暗闇の中を歩いた。それでも、若い女性は怖くなかった。


 彼の温かく、少し荒々しい手の感触が、彼女に安心感を与えてくれた。


 江戸の東地区では、殺人事件が相次いで発生していた。中でも、人気アイドル、エミリタンの殺害事件は特に注目を集めていた。彼女は自宅で凄惨な死体となって発見された。


 こうした犯罪はジェポンネ各地で起きていたが、東地区では特に多発していた。


 新聞報道によると、東地区の住民は他地域へ移住しており、空き家が増え続けていた。建物は値下がりして売りに出され、中には10歳の子どもでも買えるほどの大きな建物もあった。


「着いた…」


「恐ろしい…」


 この建物もそうだ。ここは開院してまだ10年も経っていない病院だ。「天国の門」の出現は、この異世界からの知識のおかげで、世界中の多くの国々の様々な発展を導く技術と知識をもたらした。


 魔法の世界とはいえ、誰もが魔法を使えるわけではない。


 以前にも言ったように…この世界では、一般人は生まれながらにして魔法の力を持たない。


 生まれながらにして魔法を使えるのは上流階級だけで、一般人でもごく少数だ。


 魔法は誰もが憧れる特別なものだと誰もが考えている。


 しかし、この異世界からの技術の到来によって…人々は自らの「魔法」を手に入れ始めた。


 最近、魔法に希望を持てなかった者たちが、突如として希望の光を見出した。


「こちらだ!」


「あまり遠くへ行かないで!」


 以前は、危険が迫ると、彼らにできることは逃げることだけだった。しかし、銃器や電子機器といった技術の発達により、彼らは突如として魔法使いと肩を並べる存在へと近づいた。


「……あらゆるものが至る所に散らばっている。」


 平凡な村人たちから多くのことを学び始め、その多くが真の知識人となった。


 世界各地で数々の文化や芸術が誕生した。


「ねえ…戻ろうよ…お願い。」


「どうしたの?着いたばかりじゃない。」


「真っ暗で…怖い。」


 二人は恐る恐る廃病院に入った。いや、怖がっていたのは少女だけだったのかもしれない。


「ここで魔法の実験を受けて悪魔にされた人がいるって聞いたよ」少年は少女をからかうように言った。少女は彼の腕にしっかりと抱きついていたが、さらに強くしがみついた。


「怖がらせないでよ、いい?」


 カチッ…カチッ…カチッ…木靴の音が建物の木製の床に響く。少女は耳を澄ませ、四つ以上の足音が聞こえないことを祈った。


「……患者の部屋?」


 二人は引き戸を開け、個室らしき部屋に入った。中には、いつものように持ち物が散乱していた。


「……」


 二人が歩いた部屋には、ただ静寂と、絶えず吐き気を催すような空気が漂っていた。


 少女は少年に近づき、ノートを見つけた。


 それはごく普通のスケッチブックだった。


 ノートの状態は怪しかった。埃まみれだったが、不思議なことに紙自体は驚くほどきれいで、傷みは見られなかった。


 彼女はノートを開いた。そこには絵と子供の筆跡があった。


 最初の絵には、おそらく母親と思われる女性の手を握る少年が描かれていた。


「これは僕と母の記録です。母はいつも寝たきりでしたが、僕はいつも母のそばにいました。」


「これは……何?」


 彼女はページをめくると、少年と母親の似たような絵が現れた。


 いくつかの会話は、二人が食べた食べ物についてだった。


 他の会話は、母親に寝る前に絵本を読んであげたことについてだった。


 他の会話は、母親のために花を替えたことについてだった。


 そして……最後の絵で、それは途切れていた。


 異物が混ざっていたのは、そのページだけだった…。


「……あら。」


 それが何なのかは分からなかったが、ページは血で覆われていた…。


 絵からはひどい悪臭が漂っていた。埃まみれだったにもかかわらず、その臭いは消えなかった。


 しかし…


「生理の血の匂いがする…」


 彼女は振り返って青年を探したが…


 彼は跡形もなく消えていた。


「ケイ…だめ…からかわないで、ケイ?」


 少女は何度も青年に呼びかけたが…返事はなく、テーブルの上の油ランプだけが灯っていた。


「お願い…そんなふざけた真似はやめて。」


 彼女は油ランプを患者の部屋から持ち出し、暗い廊下をゆっくりと歩いた。


 木がカチャカチャと音を立てていたのが、四回から二回に変わった…


 親友であり、片思いの相手だった彼が、この呪われた場所で姿を消してしまった…これはまずい。


 彼女はすぐに家に帰りたかったが…彼に何かあったのではないかと心配になり、探しに行くことにした。


 夜を照らしていた月明かりが次第に薄れ…そして、パタパタという音が聞こえた。シューッ…雨の音。


「………………」


 彼女は廊下を歩き続けた。


「ふふっ」


「え?」


 今のは……笑い声?


 その声を聞いて、少女の足はさらに震え始めた。もうこれ以上歩けない。


「ケイ……あなただったの?……お願い、出てきて。」


 少女は暗闇に向かって懇願し始めた。親友の名前を叫んだ。きっといたずらをしているのだろうと思っていたが。


「すすり泣き……すすり泣き……お母さん」


 目の前で泣き声が大きくなり……彼女の恐怖は募った。


 手が震える…足が震える…何もかもが震えている。


(へへっ)


 そして――


「…………」


 目の前に赤ちゃんが座って、微笑んでいる。


 微笑む…微笑む…微笑む…


「ママ、ママ?」


 これは…これは一体…?


 だめ!怖い!逃げなきゃ!ケイくんはどこ?逃げて!早く逃げて!逃げて!


 ギシギシ…ギシギシ…何十、何百、何千もの足音が、廃病院に響き渡る。


 赤ちゃんはゆっくりと、少しずつ、彼女の方へ這ってくる。


「だめ…だめ…お願い…」


 少女は赤ちゃんに懇願したが…無駄だった。


 だから彼女は走った…


 ここから逃げるために。


 ギシギシ、ギシギシ、ギシギシ…少女のすぐ後ろから足音が聞こえ、そして…


 何百もの赤ん坊が…少女を縛り付け…さらに何千もの赤ん坊が彼女の口の中に押し寄せた。


「えずき…見つめる…」


 彼女の口は伝説の裂口女よりも大きく開いた。目は飛び出し、体は動かない。


 彼女の腹は膨らみ始めた…伝説の通り。


 どんどん大きくなっていく…


「ああ!ああ!!」


 彼女の子宮から赤ん坊の泣き声が聞こえた…少女はこれまで経験したことのない激痛に襲われ、膣の中に小さな手が現れ始めた。


 赤ん坊の頭が現れた。


 赤ん坊の体は魂のように透明だった…そして生まれた瞬間…


「あれは私のママじゃない!」


 そして…


 轟音とともに…かつて一体だった体は粉々に砕け散った。


 病院全体が血で染まった。床、壁、カウンター、椅子、書類、そして病院の壁そのものまでが、少女の血で覆われていた。


 彼女の腹部は破裂し、内臓が飛び散った。


 ただ一つ、無傷で残った臓器があった。


 それは…子宮だった。


 そして、腹部が爆発したまさにその瞬間…オイルランプが彼女の体の上に落ちた。


 炎が彼女の全身を包み込んだ。


 頭からつま先まで。


 しかし…病院の床は木製だったにもかかわらず、火は全く燃え広がらなかった。


 彼女の遺体だけが…いや…


 ドスン


 少女の腹部が破裂した遺体と、腹部を切り裂かれ、頭部を切断され、性器を摘出された青年の遺体だけが焼かれていた。


 彼らがどこへ行ったのか、誰も知らない。


 この場所で何が起こったのか、誰も知らない。


 この場所に本当に子供の霊がいるのかどうか、誰も知らない。実際に見た者は皆姿を消してしまったからだ。


 だから、それは子供たちの間のただの噂話に過ぎない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。