表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/10

治癒

傷に触れて治癒するのは、ヒーラーにとって一般的な傷の治し方だ。


 ディフェンダーをしているときは、何度も世話になった。


 触れるということ自体に意味があるのではなく、傷との距離の問題らしかった。


 トリフェインはヘレンに言った。


「信じられないだろうが、私はこの細い体になる前はディフェンダーだった。ヒーラーではない。魔法の出し惜しみをしているのではないよ」


 ヘレンはトリフェインに強い眼差しを向けた。


「それでも、頼む。傷の場所が分かるのは、ヒーラーの才能があるからだ。


 真似事でよい。やってくれないか。傷からの高熱だ。この子はこのままではまずいんだ。


 腕を切り落とすこともありえる。頼む」


 ヘレンの必死さに押され、気休めになるならばと、トリフェインはアヤカの膿が出て腫れ上がった左腕の傷に触れた。


 何も起こらなかった。


「あんたが、今までで一番安らいだイメージを思い浮かべてくれ……頼む」


 トリフェインは、その必死さに気圧された。


 そして、ヘレンは剣の柄をぐっと掴んでいる。


 トリフェインは、目を閉じた。


 大樹を思い出す。


 目覚めた時の穏やかさと、大樹の後に続く、様々な大きさの獣たち。


 そこには食う食われる関係すらなく、ただ大樹の後ろをついていく穏やかな風景があった。


 トリフェインは、いつまでそうしていたか覚えていない。


 目を開けた時、ヘレンがアヤカを抱きしめていた。


 アヤカはまだ顔色が悪かったが、穏やかな表情になってヘレンを見ている。


 幸せな風景だった。


 ヘレンが言った。


「ありがとう。あんたに、ここまでヒーラーの才能があったとはね。助かった」


 アヤカの左腕を見ると、膿も腫れもなくなっていた。


 傷跡すらない。


 トリフェインは、本当に自分がやったのかと、アヤカの左腕と自分の手のひらを何度も見返した。


「あんた、本当に自分にヒーラーの才があることを知らなかったのかい」


 トリフェインは肩をすくめた。


「世話になったことは、数えられないぐらいあるが、自分にヒーラーの才があるなど考えもしなかったよ」


 トリフェインは、この才が大樹に出会ったことで与えられたものなのだと自覚した。


 ヘレンはトリフェインの両手を取った。


「何にせよ、あんたには感謝する。名前を教えてくれないか。恩人をあんた呼ばわりするのはやめたいのだ」


「私はトリフェインという」


 ヘレンは言った。


「トリフェイン殿。娘を助けてくれてありがとう。この恩は忘れない」


 アヤカもそれに続いて、


「忘れません」


 と言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ