グレン
トリフェインは話し始めた。
「昔は、体格もよく、これでもがっちりとした姿をしていたんだ。
ラージシールドも軽々と持っていたのだがね。今でもアーマーとシールドは森に隠してある。
重すぎて、今となっては邪魔な装備になってしまった。今ごろ、錆びだらけになっていることだろうよ」
十五年前。
トリフェインは意気揚々と、大都市カッサリアにプレートアーマーとラージシールドを身に着けて、傭兵の紹介所へ乗り込んだ。
いきなり重装備の者が紹介所に現れたものだから、クスクスと笑い声がしていた。
「おい、田舎者。街でフルプレートとラージシールドは重くて暑かったろうな。戦闘でもないのに難儀なことだな」
トリフェインは、場違いな格好であることに気づき、紹介所内では皆が軽装なことに驚いていた。
紹介所の職員が笑顔を向けながら言った。
「あんたは、『ディフェンダー』として登録でいいんだな。名前は?」
「トリフェインという。ここの奴らは、皆、似たような格好をしているが、どうやって職を分けているんだ」
「ああ、自分で名乗るのだよ。嘘をつけば、そもそも誰も雇わねえ。この世界も信用が第一なんだよ。
だから、トリフェイン。悪いことは言わねえ。ディフェンダーではなく、アタッカーから始めないか。
ディフェンダーはパーティの要だ。まず信頼がねえと、仕事はねえぞ」
職員がそう言うと、トリフェインは答えた。
「いいや。ディフェンダーをする。アタッカーより報酬が高いと聞いた」
「パーティの要だと言ったろう。だから高いんだ。若造、よく考えろ」
周りから苦笑とともに声が飛んだ。
トリフェインは言った。
「ディフェンダーにならねばならない理由があって、ここまで来た」
トリフェインは、自分の事情を語った。
トリフェインは、魔物が生息する地域に住んでいた。
年に何度かは死人が出ていたが、近年、死人が出る頻度が高くなってきていた。
故郷の街で一番体格がよいのがトリフェインだったから、魔物対策を買って出た。
この街まで来たのは、魔物退治の方法を知っている者を連れて帰ること。
もしくは、魔物を退治する方法を身につけること。
この鎧とシールドは、故郷の街のなけなしの蓄えで買ったものだ。
できれば費用を回収したいというのもある。
「おい、お前の故郷の魔物というのは、魔獣のタイプか」
と、声が聞こえた。
「そだ。ただ、魔獣のタイプというのがよく分からんが、熊だ。熊のような姿をしている」
トリフェインがそう言うと、
「そいつを倒せば、報奨金はいくら出る」
と声が飛んだ。
「報奨金はない。だから、俺が倒す。ディフェンダーとなってな」
笑い声が辺りを包んだ。
「いったい、いつの日になることやら」
トリフェインは言った。
「いつの日になろうともだ」
そのとき、声が飛んだ。
「では、その“いつの日か”を実現させよう。その若造を雇う。ディフェンダーで雇う」
その声を上げたのは、『ワイド』パーティのリーダーであるグレンだった。




