勇者という災害
それからというもの、勇者の担当は男性従業員で固められた。私はというと、ケイティさんの取り計らいで勇者一行が出ていくまでは、リネン室で働くよう言われている。
「なんかさあ、あの勇者、見た目は男前なのに中身がかなり嫌な奴なのよ」
シーツを洗濯しながらユキが話しかけてくる。ユキによると、休憩時間にクリスと座って話をしていたら、近くを通りかかった勇者が、突然絡んできたらしい。クリスの給与が低そうだ、自分は勇者で金には困らないだの言ってきたと言う。まるで子どものような言いがかりだ。
「あとさ、私の体を上から下までじっとり見てくるの。で、向こうで2人だけで話したいって言って肩組んで来てさあ。クリスが止めてくれたんだけど相手は勇者だから力が違うじゃない。クリスなんてこう腕をひねられてね」
ユキが手振りを交えながら話を続ける。
「そしたら、たまたま通りかかった聖騎士様と僧侶様が助けてくれたの」
…それって、たまたまなのかしら?勇者を監視して回ってるんじゃないの?
「聖騎士様ってさあ、すごく格好良いのね。勇者なんかより全然上よ♡背も高くて、体も鍛えてて素敵だし。抱きついてお礼を言いたかったんだけど、クリスがいたから、ちょっとねえ」
ユキが残念そうに言う。確かに、聖騎士様は格好いい。勇者に襲われて、助けられた時の聖騎士様の体の感触を思いだし、私は急に胸がドキドキし出した。
「私さあ、聖騎士様にお礼をしたいなあって思ってるのよ」
「え!?そこまで、考えなくていいんじゃない?」
「いやあね、ロゼッタ。お礼は口実に決まってるじゃない。私、聖騎士様とお近づきになりたいのよ」
「でも僧侶様と2人で助けてくれたんでしょ?僧侶様はどうするの?」
「僧侶様はいいのよ。聖騎士様だけでいいの。僧侶様も可愛い顔してるけと、まだ子どもじゃない?私、子どもは興味ないのよ。聖騎士様と何とかお近づきになりたいのよ。あんないい男を逃したくないわ」
ユキの鼻息が荒くなる。
「…夜這いだけはダメよ」
「それはわかってる。聖騎士様に会えるなら、また勇者に襲われてみようかしら」
「やめなさいよ。洒落にならなくなったらどうするの!」
あんな男に関わるだけでも恐ろしい。勇者に襲われかけた時を思いだして、私は身震いした。あんな調子で各地を旅して来たとしたら、魔物よりも勇者自身が災害扱いされていてもおかしくない気がする。




