休憩
「勇者の匂いが強くなってる。かなりの強さ」
湖から帰って来た私に向かって一角獣が言う。私は恥ずかしくて何も言えずにうつむく。
「まあ、俺達恋人同士だからな」
すっきりした表情で勇者が私の代わりに答えた。
もう恋人同士を否定できない。
「ロゼッタ、ボタン掛け違えてる」
一角獣が私に言う。
「俺が直してやるよ」
勇者が私のシャツのボタンをかけ直してくれる。そして、シャツをズボンの中にきれいに入れ直してもくれた。
「勇者、その服、前後ろ逆」
一角獣が今度は勇者に言っている。
「ああ、さっき着た時から何かおかしいと思ってたら逆だったのか」
勇者が服を脱いで着直している。
「2人共、疲れているのなら、もう少し休むか?」
「俺は大丈夫だけど、ロゼッタにはずいぶん無理をさせたからな。もう少し休んでいいか?」
「ああ、構わない」
そうして、私達は一角獣が休んでいた木陰で休む事にした。
「ここに頭のせな」
広げた布の上に上がると、勇者が木に背中を預けるように座り、自分の膝をポンと叩いて言う。何だか、今日1日でも色んな事がありすぎて、私は疲れていた。そして、勇者の膝に頭を乗せると、いつの間にか寝てしまっていた。
※※※※※※※※
風が頬に当たる。目を開けると勇者の顔が見える。私は起き上がる。
「あれ?一角獣は?」
「一角獣なら、さっき湖に水を飲みに行ったぜ。それより、体は大丈夫か?」
「ええ、休んだから大分楽になったわ」
「そうか、俺に付き合わせ過ぎて悪かったな。楽になったなら良かった。あ、帰って来たようだな」
見ると、一角獣がこちらに向かって歩いて来ている。見ると口に花を咥えていた。
そして、私達の前までくると、咥えていた花を落として言う。
「ロゼッタ、これはお祝いの花」
「綺麗ね。お祝いの花って名前なの?それとも花言葉?」
私は花を拾い、眺めながら聞く。
「名前は知らない。綺麗だから摘んできた。ロゼッタ、勇者の妻になるお祝い」
「え?妻!?」
「お前が寝てる間に一角獣に話したんだ。お前と将来を約束したことを。一角獣のお陰で俺達結ばれたようなもんだしな」
将来っていつ約束したの?湖?ううん、好きだとか可愛いいとかは沢山言われたけど、結婚なんて言ってない。じゃあいつ?勇者の妄想?
…ちょっと待って…一緒にいるとか約束した時?まさかね…
「一角獣は、昔よく見届ける役をしてたらしいぜ」
勇者が私に教えてくれる。
「勇者には話したが、古い話だ。人間達、俺達の前で結婚の誓いしたがる。だからよく行ってた。二股かけているのに一生を誓う奴もいて、その時は少しイタズラしてやった。楽しい思い出だ」
私の肩を抱きながら、勇者がせっかくだから俺達も誓おうぜと言い出す。せっかくって何!?そんな軽いノリでする事?
「ちょっと!急すぎるわ!」
私は勇者を押し返して言う。
「式はまたするんだし、誓いだけだろ」
「式もなにも、結婚なんて急よ!」
「人間達、いつも指輪交換してた」
「指輪かあ…古代人はそんなことしてたのか?指輪なんて仕事の邪魔だから今時つけるやつも珍しいし、貴族くらいしかしてねえぞ。国王様に聞いていみるか…」
「そうでしょ!だから一旦戻りましょ!」
もうこの話は終わりにしたい。急に恋人になって、急に結婚だなんて、頭がついていかない。
「指輪なら心配いらない」
そういうと、一角獣は近くに置いていた草紐を咥え、そのまま器用に私の指と勇者の指にくくりつける。そしてその指に一角獣が角を近づけた。
「きゃ!」
指がパッと光ったかと思うと指の草が固くなって光る指輪になっていた。
「すげえな、こんな事できるのか!?」
勇者は指輪をかざして驚いている。
指輪は草の模様が彫られていて、何か文字が刻んである。
ロ…ビ…ン…
え…ロビン?
「この指輪、ロゼッタって文字が彫ってるけど俺のか?」
「人間達、よく指輪に相手の名前彫ってた。それを真似た。勇者、誓いの口づけするといい。俺が祝福する」
勇者は私を抱き寄せると口づけをする。その時、強い風が吹き、驚いて私は唇を離す。
見ると私達の周囲に一瞬光が降るのが見えた。
「俺の祝福を受けたら別れられない」
一角獣が言った。




