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昔昔の物語(最終話)

「こうして、一角獣のお陰で魔物が消滅し、国に平安が訪れました。勇者と乙女はいつまでもいつまでも幸せに暮らしたそうです」


ママがパタンと本を閉じる。


「そういえば、今度町に来る劇団は一角獣の芝居するって言ってたな」


パパが言う。


「本当?私観に行きたいわ!」

「また考えとくわ。それより、もう寝なさい。明日も学校よ」

「はあい」


私は渋々、二階の自分の部屋に行く。私は一角獣の出てくるこの話が大好きで、毎日の様にママに読み聞かせしてもらっている。勇者と乙女が2人で協力して一角獣を探しに行ったり、魔物の場所へ行ったりする冒険の場面がとっても面白いもの。

このお話に出てくる勇者と乙女と一角獣が、本当にいたというのもすごく不思議。

魔物が本当に存在したっていうのも信じられないわ。

あとね、ここが一番好きなんだけど、2人が惹かれ合って結婚したっていうのがロマンチックだわ。2人の若い日の結婚式の絵姿が有名だけど、勇者は格好いいし、乙女はとっても可愛いかった。


舞台も見に行きたいな…



◇◇◇◇◇◇◇



「あなた、舞台の事は話しちゃダメよ」

「どうして?有名な劇団なんだろ?」

「そうだけど、話が大人向きなのよ。隣の奥さんが、先月隣町まで見に行ったらしいから聞いたのよ。勇者と乙女と聖女の三角関係があったり、乙女が純潔を失う場面もあるらしいから、あの娘にはまだ刺激が強すぎて見せられないわ」

「悪かったよ。そこまでは知らなかったんだ」

「まあいいわ。それはそうと、その舞台観に行きたいのよ。隣の奥さんがまた観たいって言うから一緒に行こうと思ってるの。ねええ、いいでしょ」

「行ったらいいけど、あの娘に言ったら観たがるから、あの娘には内緒にするんだよ」



◇◇◇◇◇◇



「本当に?羨ましいわ!」


友達の家に行ってお喋りしていると、友達のお姉さんが帰って来て、あの舞台を観に行ったって教えてくれた。お姉さんは私達より一回りも上なんだけど、恋人と観に行って来たんだって。


「うそ!?聖女って、勇者の事好きだったの?」

「あくまでお芝居の中の話よ。でもね、勇者と乙女の結婚に、聖女がとても反対したって史実が残っているみたい。勇者に直接話をしにも行ったりしたみたいよ。反対の理由がわからないから色々な憶測がとぶのよね。まあ、舞台は脚色が入るしね」


お姉さんが、舞台のあらすじを簡単に教えてくれたけど、私の持っている本の内容と違うからびっくり。


「勇者様、格好いいものね」


本の中では、勇者の姿に一目惚れした乙女が、一角獣を探そうとする勇者に自分から協力したいって言うのよね。あの絵姿なら無理もないわ。聖女も勇者の格好良さにときめいたりしたのかしら?


お姉さんは、劇場の売店で恋人とお揃いで買ったという指輪も見せてくれた。指輪も、昔は身に付ける人も少なかったのが、勇者と乙女がつけ始めてから爆発的に流行したのは有名な話だものね。


あーあ、私も舞台観に行きたい。

もう一度、ママにお願いしてみようかしら?




◇◇◇◇◇◇



長い時間お喋りしてたから、少し遅くなっちゃった。私は早足で家に向かう。

日が暮れるのが早くなったから、公園に誰もいない。少し前まではこの時間でもまだ人がいたのに。


あれ?今、公園の木のところに何かいた?

私は公園に近づく。


ガサッ


「きゃあ!」


音にびっくりして、私は後ずさる。

飛び出してきたのは猫だった。


「あーびっくりした」


猫にびっくりした私だけど、この数年後に角の生えている動物と出会って、さらにびっくりする事になるのはまた別のお話。

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