赤い光
走り続ける一角獣の背の上で、私は勇者と抱き合う。段々と辺りが暗くなり、奇妙な鳴き声や叫び声が遠くから聞こえだしている。
やがて、森へ入ったようで、黒い物体が左右の上空から私達の前を次々と横切っていく。
さらに奥へ向かって入って行くと、切り立った崖の先についた。
崖の下には、魔物達がウジャウジャいるのが見える。
「あそこあたりに次元が重なる場所があるようだ」
一角獣が言う。
「魔物の数が多すぎる。どうやって行く?」
勇者が聞いた。
「かまわない。俺からしたら相手にならない」
そう言うと、一角獣はそのまま崖を下っていく。
「アアアアア!!」
崖を直角に降りて行くので、さすがの勇者も声を出して叫んでいる。私はと言うと、口は開けるのに声が出ない。とにかく、必死に勇者にしがみついていた。
地面に着くと、私達に気づいた魔物達が次々と襲いかかってくるが、どういうわけか、私達に近づくと、勝手に跳ね返っている。一角獣の力なんだろうか…
さらに進むと赤色の光が見える。いや、よく見ると光ではなく炎だ。地面に不自然に空いている窪み。そこからグツグツと炎が出ているのがあちらこちらで見える。熱風が全身に来る。熱い…それに嫌な匂いもする。
「この中に入る」
一角獣が言う。この中に!?…怖い…嫌だ…そう言いたいのに声の出ない私は、勇者にしがみつく力を強める。勇者も、私を抱く手に力を入れる。
「ロゼッタ、怖い?無理に行く必要ない。待つなら、腰に巻いてある草紐を地面に輪っかにして置いたらいい。その中にいたら魔物から守られて安心。これだけ長いと、ロゼッタ一人くらいなら横になっても入れる」
待つ?ここで一人で?守られるといっても、すぐ近くに魔物がウジャウジャいるじゃない。…どうしよう。でも、あの炎の中に入るのも怖い…でも…行きたくない…
「残るなら、俺も残るぞ」
勇者の声がする。見上げると、私を見て微笑んでいる。
「お前があの中に行くなら俺も行くし、お前が残るなら俺も残る」
勇者が優しく言う。
勇者も残る?でも、あの草の紐の中に2人で入れるの?長さは?それに勇者と2人きりよ。いつまで待つのかわからないし…でも、勇者と2人なら…
「ロゼッタ、声に出して答えて」
一角獣が言う。
私…
「……私…勇者様と2人で残りたい」
「わかった。2人が輪に入るのを見たら行く」
「ああ。わかった」
勇者は、私を一角獣から降ろすと、すぐに腰に巻いて草紐を外し、地面に輪になるように置いた。
「行ってくる」
そう言うと、一角獣は炎の中へと飛び込んで行ったのだった。




