迫る勇者
「おい、どうした?眠たいのか?」
ベッドにうつぶせになる私に、いつの間にか戻って来た勇者が声を掛ける。
「ロゼッタは今、心臓がドキドキして苦しいらしい」
一角獣が私の代わりに答える。
「心臓?おい!大丈夫か?医者呼ぶか!?」
勇者が驚いた声を出し、私の近くに寄ってくる。
「そんなんじゃないわ」
私は起き上がる。そして近くの勇者を見て驚いた。
「あなた、何持ってるの!!」
「何って、お前の着替えだろ?取りに行ってやったんじゃねえか」
「だって胸当てまで!」
「ん?ああこれか?これもいるんだろ?」
そう言いながら、勇者は私の胸当てを摘まんで見せる。
「触らないでよ!」
私は慌てて勇者から服を取り返した。
「本当に信じらんない!」
「勇者、その胸当ては、ロゼッタが寝る前までつけていたものだ」
「何だ、そんな事か。洗濯してないくらい、俺は気にしないぜ」
「そんな事じゃなくて、恋人でもない女性の下着を触ったり見たりするのがおかしいって思わないのがおかしいって言ってるの!」
「そうは言ってもなあ…俺はお前の下着姿も見たことあるし、胸も触ったことある。今さら胸当てを見て怒る意味がわかんねえよ。しかも俺の前でずっと胸が透けた服着てるし」
ダメだわ、この勇者には話が通じない…
「勇者、勇者はロゼッタの事どう思う?」
突然、一角獣が勇者に問いかける。
「何だよ急に」
「ロゼッタは勇者の事を嫌いではないらしい」
ちょっと待って!嫌いではないとは言ったけど、好きでもないわ!そう言おうとした瞬間、私の口が動かなくなる。何?何で!?口だけ動かない!
「勇者が洗面所にいる時、ロゼッタと話をした。ロゼッタは勇者に対して胸がときめくらしい。」
言ってない!そう言おうとしたのに口が動かない。
「お前、本当か…」
あの勇者が顔を真っ赤にして動揺している。違うと言いたいのに口が動かない。私は首を左右に振り、違うと伝えたが…
「勇者、ロゼッタは恥ずかしがりやだ」
何言ってんの…恥ずかしい目に合わされ続けてるだけなのに。
「ずっと気づかなくて悪かった。恋人でない事が不満だったんだな」
勇者の体が一歩近づく。後ろに下がろとしたが、さらに勇者が近づく。そして、私を抱きしめながら言う。
「俺はなぜか女に嫌われる事が昔から多くて、お前を初めて見た時、ものすごくタイプだったけど、好かれるなんて思っていなかった。こんな事、俺にはもう一生こないと思っていたから信じられない」
信じなくていいのよ!そう言いたいのに声が出ない。
「俺のアプローチがないから、ずっとお前を不安にさせてたんだな。お前は純潔の乙女だから俺も我慢してた部分もあった。悪かった。お前も我慢してたんだな。恋人にはなれるが、今はこれで我慢してくれ」
無駄に力強く勇者にきつく抱きしめられ苦しくて涙が出る。私は息をするため、顔だけ出した瞬間、勇者と目が合う。私はやめてほしいと再び首を左右に振り、訴える。
「……抱きしめるだけじゃ嫌なんだな…」
そう言った瞬間、勇者は片手を私の後頭部に回して掴むと、私の頭を引き寄せ、おもいっきり口づけをしてきた。
角度を変えて何度も吸われ、初めての口づけにどうやって息をしたらいいのか分からず、私は気を失った。




