ときめきの定義
気がつくと明るい。もしかして、もう朝かしら?ん?何かに押さえられてる?肌…え?
「ちょっと!どいてよ!」
私の体には勇者が絡まっていて、まるで私を抱き枕みたいにして抱えて寝ていた。
「ん?もう朝か?」
勇者が目を覚ます。
「ちょっと!あなた服は!?何で裸!?」
「裸じゃねえよ。パンツは履いてる。」
「似たようなもんでしょ!」
「暑いから脱いで寝てんだよ。朝からうるせえなあ」
私は勇者から体を離そうとするが、何かに引っ張られ、再び勇者の胸の中へと落ちる。
「えっ?何!?」
「ああ、これ外さねえとな」
見ると、私と勇者の腰が長い草で結ばれていた。
「何で!?」
「お前がどこも行かないようにつけてたんだ」
勇者が草紐を外しながら言う。
「ここを結ぶ必要はないでしょ!他に場所はあるじゃない!手首とか足首とか!」
「ここが一番お前の動きを感じやすいからいいんだ。いなくなったらすぐ分かるからな」
「勇者とロゼッタ、昨日から一晩中抱き合って寝てた」
一角獣の声がして振り向くと私のすぐ後ろに一角獣がねそべっていた。え?私を中心に三人並んで寝てたって事?しかも私は半裸の勇者と抱き合って?
「勇者、寝る前ロゼッタの顔じっと見てた」
「顔色見てただけだ」
「ロゼッタのお尻触った」
「うそ!!最低じゃない!」
「紐結ぶ時に当たっただけだろ!!」
「それからは明かりが消えて暗くて見えなくなった」
「おい!一角獣いい加減にしろ!適当な事ばかり言いやがって!」
「ちょっと!!あなた私に変な事してないでしょうね!!」
「するわけねえだろ!さっさと準備して行くぞ!」
そう言うと、勇者は起き上がり、洗面所に歩いて行った。
「ねえ、勇者は私の体に本当に変な事してなかったの?」
私は一角獣に尋ねる。
「暗くて見えなかった」
「もう、最悪…」
「勇者とロゼッタ、俺の背中に乗るときも抱きあっていた。今さら何の問題ある?」
「ありまくりよ。本来、男女の体の触れあいは、お互い好きな人同士でするものなのよ」
「ロゼッタは勇者が嫌いか?」
「嫌いとまではいかないけど、別に好きとまでは…」
「ジエイムスという人間よりも勇者の方が気になっているようだが」
「うそよ!」
そりゃ色んな意味で勇者の方が気になるわよ。そもそもジエイムスさんと勇者を比べるなんて。ジエイムスさんにはときめくけど、勇者にはときめいた事なんてない。でも、ジエイムスさんと恋人になりたいかというと分からなくなった。昨日はジエイムスさんにときめいたかというと、ときめかなかったし、それよりも戸惑いのほうが大きかった。
「ときめきとは心臓がドキドキしてしんどい事か?それなら勇者からのほうが沢山感じているはずだ」
一角獣が言う。その心臓のドキドキは違う意味なんだけど、と思いながら、私はある事に気づく。
「ときめく?あなた…まさか、私の心が読めるの?」
「人間は面白い。次元が違う場所から見たら丸見えなのに、丸見えの事に気づかず空騒ぎばかりしている」
「おおい、洗面所空いたから使うか?」
身支度を済ませた勇者が洗面所から出て来た。
「洗面してる間に俺がお前の部屋から着替えを取ってきてやる」
勇者が私に言う。
「え?着替え?」
「ああ、その格好でうろうろ出来ないだろう」
勇者が私を見ながら言う。
そういえば、まだ着替えずに宿のルームワンピースを着たままだった。あれ?私昨日、上に羽織物羽織ってなかった?いつ脱いだの?脱げたの?
「勇者、胸当ても忘れるな」
え?胸当てって?
「ああ、探しとく」
そう言うと、勇者は部屋を後にした。
しばらく私は何が起きたのか分からず立ちすくむ。
「ロゼッタ、洗面所に行くんだろ」
一角獣が言う。
「…え?ああ、そうね。ちょっと髪をといたり色々してくるわ」
そして、私は洗面所の大きな鏡を見て気づいた。鏡に映る私の姿。ワンピースは白くて生地が薄めだから体の線が透けてるし、いつも寝る前は胸当てを外して寝るから、胸の先の形までくっきり浮き出ている。
私は慌てて洗面所から出ると、ベッド回りを探して、羽織を見つけ、すぐに羽織る。
あの勇者、さっき私の体見てたわよね。絶対、胸も見てた!私は恥ずかしさで、ベッドにうつぶせになり、顔をうずめたのだった。




