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おとり

勇者の背中に乗ってかなりの時間は経つはずだが、勇者が息切れする事はなく、他の3人よりも明らかに早い動きで魔物を倒していく姿に私は驚いていた。


中身はアレでも、勇者に選ばれるだけの事はあるんだ。中身はアレなのに。


勇者はどんどん森の中へ進んで行く。

気が付くと、私達は昨日来た泉にたどり着いていた。


「ここで休憩しようぜ。お前はここな。俺たちは向こうの木の影で休憩だ」


勇者が私を背中から下ろし、泉のそばにいるよう指示する。


「え!?私一人ここですか?嫌です。怖いです!」


こんな森に一人なんて嫌だ、勇者達も本当に近くにいてくれるのか信用できないし。


「何言ってんだ。昨日もここに一人いたろ?一角獣のおとりなんだから、ここにいろ」


そう言って、勇者は木に向かい歩いていく。


「ロゼッタ、お腹空いたらこれ食べて」


聖女が携帯食を手に握らせてくれ、小さい声で、ごめんねと言う。聖女が悪いわけでないのに謝らせてしまったことに心が痛む。


私は一人、その場に座り込んで、泉を見つめる。一角獣が来るまで毎日ここに連れてこられるんだろうか?何でこんなことになったんだろう?おばあちゃんの家になんか行かなきゃ良かった。そうしたら、今頃ジェイムスさんと仲良くなってたかしら?私とずっと話したかったって言ってくれたし、脈はあるのかも。ジェイムスさんに会いたい…私は悲しくなってきて涙が出てきた。


ん?


何かが私の顔を舐めている。顔?涙を舐めてる?


ピチャピチャピチャピチャ


目を開けると、そこには一角獣がいた。一角獣は、私の涙を舌で舐めとってくれていたのだ。


勇者達がいる木陰を振り返る。勇者が捕まえろとジェスチャーを送ってくる。捕まえるって言ったって、あの勇者を振り払ったのよ。無理じゃない。でも、これをしないと帰れない。私は仕方なく、一角獣の首に手を回し、抱きつく姿勢になる。その瞬間何かが私の頭にかかった。


「よし!かかったぞ!」


気が付くと、私と一角獣は体全体を網にかけられていた。


「おい僧侶、この魔法網はどのくらいもつ

?」


勇者が僧侶に聞く。


「一時間もてばいいほうですね」

「わかった。とりあえず森から出るぞ」


私は網で前がよく見えない。怖いから一角獣にしがみついたままになる。

ふと、目の前に光が現れる。


「おい、網が破れてるぞ」

「そんなはずは!」


見ると、一角獣の角の先が網を破っていた。

一角獣は、私を背中に乗せる。


「逃がすか!」


私の上に勇者が乗ってくる。


一角獣は、私と勇者を背中に乗せて、走り出していったのだった。

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