表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それゆけ、孫堅クン! 改 ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~  作者: 青雲あゆむ
第4章 呉王朝創設編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/68

後日談: 孫策クンは愚痴が止まらない

黄凰元年(204年)4月 建業


 俺の名は孫策 伯符。

 呉王朝の第2代皇帝だ。

 つい最近、即位したばかりである。


 いや、即位させられた、と言うべきか。


「クソ親父が!」


 思わず口をついて出た言葉に、すぐ近くにいた周瑜が反応する。


「まだそんなことを言ってるのかい? もう3ヶ月も経つのに」

「知るか! ムカつくものは、ムカつくんだよ!」

「まったく、君ときたら……」


 いらだちを隠せない俺に、周瑜が呆れた目を向ける。

 しかし俺にも言い分がある。


 なにしろ俺の親父は、あの孫堅 文台だ。

 漢王朝を見事な働きで救い、鳳凰ほうおうから瑞兆ずいちょうを受けるような、掛け値なしの英雄である。

 さらには漢の天子から禅譲ぜんじょうを受けて、呉王朝の初代皇帝になった。


 ここまではいい。

 俺も親父の偉業に心酔し、その統治を支えようと思ったものだ。

 実際に華北の統治を任されて、ヒイヒイ言いながらも、役目を果たしていたからな。


 その一方で、親父もバリバリと働いていた。

 洛陽から建業までの通信網や水路を整備し、華北から華南に住民を移住させたり、華南の水路や農地を開発している。

 おかげで中華全土で商業が発展し、人口が増えると共に、農業生産も安定した。


 さらに北辺の警備体制を整え、各地域には親族を王や公として配置して、にらみを利かせている。

 異民族に対しても、硬軟おり交ぜての宥和政策を実行し、反乱を抑えつつも、労働力を確保した。

 ほんの10年前までは、あちこちで反乱が頻発していたというのに、それがすっかり鳴りを潜めているほどだ。


 まったく、見事なもんである。

 ガッタガタになっていた漢王朝を建て直し、呉王朝として鮮やかに生まれ変わらせたのだ。

 あまりに立派すぎて、涙が出そうである。


「だからって、息子に帝位を押しつけて、隠居していいわけじゃねえだろうがっ!」

「「「ッ!!」」」


 おっと、いかんいかん。

 気持ちが高ぶって、声が大きくなってしまった。

 おかげで一緒に仕事をしていた文官たちが、驚いて固まっている。


 すると周瑜がため息をついてから、”少し休憩にしよう”と提案する。

 文官たちは大急ぎで退室し、俺と周瑜だけが残された。

 周瑜はお茶を入れてから、俺の前に座る。


「ふう……ずいぶんと不満が溜まってるようだね?」

「くっ……そりゃあ、そうだろう。こんな真似されたんじゃよう。たまんねえぜっ!」


 また声を荒げると、周瑜はその美麗な顔で苦笑する。


「フフッ、まったく、そんなに先帝陛下がうらやましいのかい?」

「ち、ちげえよ。俺が言いたいのは、あまりに無責任じゃねえかってことだ。まだまだピンピンしてるのに、仕事を放り出したんだぜ」

「それについては、何年も前からおっしゃっていたじゃないか。孫堅さまは十分に、その責任を果たしたと思うけどね」

「だけど親父は、まだ50にもなってねえんだぜ。普通は冗談だと思うじゃねえか」

「いや、君以外は普通に受け止めていたよ。だから張紘さまや張昭さまだって、それほど文句は言わなかったじゃないか」

「そ、それは……ほら、しょせんは他人事ひとごとだからだ」

「他人事、ねぇ」


 俺の苦しい言い分に、また周瑜が呆れた目をする。

 たしかに親父は以前から、早めに隠居するようなことをほのめかしていた。


”俺、この国が安定したら、早めに隠居するんだ。その時はよろしく頼むぞ、策”


 とか言ってな。

 だけどそんなの、冗談だと思うじゃねえか。

 だから俺も冗談っぽく返してたんだ。


”何いってんだよ、親父。体が動く間は、しっかり働いてもらうからな”


 なんていうふうに。

 それが去年の暮れになって、いきなり言いだしやがったんだ。


”よし、譲位するぞ。策、来年からお前が、皇帝な”


 だってよ。

 俺は最初、何を言われたのか、分からなかったね。

 それで少し遅れて


”はあっ、何いってんだよ、親父。つまらねえ冗談はやめてくれよ”


 って返したんだ。

 そしたら親父が呆れた顔で、


”お前なあ、何年も前から言ってるじゃないか。以前はすさみきってたこの国が、今は平和になりつつあるんだ。だから俺はもう、辞めるぞ。そして田舎に帰って、のんびりするんだ。スローライフだ、スローライフ”


 だってよ。

 信じられるか?

 この大呉帝国の皇帝が、まるで服を脱ぎ捨てるみたいに、帝位を放り出すんだぜ。

 それになんだよ? ”すろーらいふ”って。

 意味わからん。

 頭にきた俺は、


”ざけんじゃねえ、このクソ親父!”


 って殴りかかったんだ。

 そしたらあのジジイ、ヒラリと身をかわして、俺を羽交い締めにしやがった。

 そして俺の耳元でささやいたんだ。


”フッ、まだまだ甘いな。むしろ皇太子になってから、なまってんじゃねえか? 孫家は尚武の家柄だぞ”


 もうブチ切れたね。

 それで親父をぶっ殺すつもりで暴れたんだが、結局一発も殴れなかった。

 くそっ、すげえムカつく。


 結局、あれよあれよという間に譲位が決まり、俺は皇帝に即位した。

 そして当の親父は、本当に母上を連れて、故郷の富春に帰っちまったんだ。

 今は2人で質素な屋敷に住み、農作業をしたり、狩りをしているらしい。

 あり得ねえだろうっ!


 そんな胸の内を察したのか、周瑜が口を開く。


「まあさ、孫堅さまは呉王朝を打ち立てるという、偉業を成し遂げたんだ。その道は険しくも、厳しいものだっただろう? なら早めに隠居させてあげても、いいんじゃないかな」

「だからってよぅ……自分だけ田舎に引っこむなんて、ずるいじゃねえか。今この国は、瑞兆を受けた親父のおかげで、まとまってる部分もあるんだぜ」

「う~ん、それも一理あるけど、わりと近所で隠居してるからね。それなりに後見してるとも、言えるんじゃないかい?」

「なんだよ、周瑜。親父の肩ばかり持ちやがって。少しは俺の味方してくれても、いいじゃねえか」


 俺が情けない声を上げると、周瑜が楽しそうに笑った。


「ハハハ、だからこうやって、一緒に仕事をしてるんじゃないか。それになんだかんだ言って、孫堅さまは君のことを信頼してるんだ。だから大丈夫。なんとかなるよ」

「いや、そういう意味じゃなくてだな」

「ほら、あまりさぼっていると、仕事が片づかないよ。文官を呼んで、再開しよう」

「いや、だからな」

「さあ、みんな。仕事を始めるよ」

「「「ははっ」」」

「だから聞けって!」


 結局その日も、夜おそくまで仕事をさせられた。

 ちくしょう、あのクソ親父。

 いつか殴ってやる。

後ほど、解説を投稿して完結とします。

本作を楽しんでいただけたなら、ブクマや評価で応援をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前作の”それゆけ、孫策クン! 改”はこちらから。

それゆけ、孫策クン! 改

孫策が暗殺を回避して、新たな歴史を作ります。

劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ