【前作も含めた解説】
”それゆけ、孫堅クン! 改”をお読み下さり、ありがとうございます。
最後に本作と前作について、筆者なりの解説をして結びとしたいと思います。
まず本作と、前作の”それゆけ、孫策クン! 改”を比較すると、周辺環境に大きな違いがあります。
それを端的にいえば、”治世”と”乱世”になるでしょう。
まず孫堅が生きた192年ぐらいまでは、漢朝はそれなりに機能していたはずです。
しかし191年に洛陽が破壊されたうえ、翌年には董卓が暗殺されて、漢朝の統治機構が崩壊します。
それまでは反乱を起こしても、
”いずれは中央に鎮圧されちゃうよね?”
という雰囲気だったのが、
”もう鎮圧される心配って、ないんじゃねえ?”
に変わった感じです。
これによって、徐々に武装化の進んでいた地方豪族が、群雄となって土地を奪い合う”乱世”に突入します。
そして”孫策クン”はこの192年から始まっており、すでに”治世なにそれ? おいしいの?”状態になりつつありました。
そんな状況だから、孫策が生き残るには成り上がるしかなく、その結果として中華統一という選択肢があります。
幸いにも華南には、中原ほど厄介な群雄はいませんからね。
中原で群雄たちが殴り合っている間に、華南を制して力を蓄える、そんな戦略を描くことができました。
実際に孫策は、夏口城の攻略さえ成功していれば、その可能性は十分にあったと思われます。
さらに暗殺さえ乗り越え、前世知識チートを合わせれば、中華統一も全くの夢ではないでしょう。
一方の”孫堅クン”ですが、彼はまだ治世の中に生きています。
なので成り上がるのは当然としても、最後は漢朝を建て直して、とっとと隠居したいと考えます。
史実では野心バリバリだったようですが、現代人が転生してだいぶ穏当になってますからね。
実際に漢朝はそれなりに機能してるから、それを倒して新たな国を興すなんて、メッチャ大変でしょう。
その労力は孫策の比ではなく、最初から諦めていても不思議ではないと思います。
まあ、主人公を憑依させた何かのせいで、その目論見は潰えてしまいますが。(苦笑)
ちなみに董卓閥や公孫瓚、劉備や曹操といった名だたる群雄が、おとなしく呉王朝で働くのを、不思議に思う方もいるかもしれません。
しかし漢王朝がその統制を保ったまま持ち直し、さらに円滑に禅譲したような状況なら、そうなってもおかしくないと思います。
漢がそのまま続くならいざ知らず、強力な皇帝によって新たな国が始まるなら、民も期待が持てるでしょう。
そんな状況で反乱を起こすような馬鹿は、そうそういないんじゃないでしょうか。
それから董卓に関してですが、20話の後書きで書いたように、不当に貶められていると考えます。
もちろん彼にも問題はあったでしょうが、客観的に見て本当に悪かったのは、反董卓連合であり、関東士人なんですから。
今後、董卓に対する研究が進んで、少しは見直されればいいと思っています。
そして本作では董卓を生き残らせましたが、政治的には死んだも同然です。
こうでもしないと、孫堅が主導権を握る流れにはならないですからね。
なにしろ孫堅は、とっとと引退してスローライフを目指してます。w
それでも董卓に静かに余生を送らせてやるのもありかと思い、手を加えました。
それから本作でちょくちょく書いた地方豪族の脱税、肥大化については、前作でほとんど出てきません。
なぜならこのシリーズを書きはじめた時は、筆者が兼併という現象を知らなかったからです。
しかしそれはそれで、余計なことを書かずに済んだのかな、とも思っています。
というのも、孫堅は漢朝の体制の中で太守や牧を務めたのに対し、孫策は地方軍閥として華南を統治したという違いがあります。
孫堅が郡や州を建て直すには、徴兵や徴税の仕組みを見直すことが不可欠です。
そのためには豪族と交渉して、溜めこんだ土地や私有民を吐き出させる必要があります。
一方の孫策は太守や牧を務めるものの、国からの束縛は遥かにゆるい状態です。
そんな状況では、
”取れるところから取って、税は納めるけど、そんなに真剣にやらないよ”
となってもおかしくないですよね。
兵や開発資金が必要になれば、豪族や商人と個別交渉して、支援を受ければいいんだから。
だから軍閥としてやってる限りは、豪族の兼併も脱税も、大して問題になりません。
結果的に、孫策のストーリーには関わりが薄いので、改訂版でも手を加えませんでした。
ただし皇帝に即位してからは、それを正さなきゃならないので、その苦労を後日談に書いています。
さて、最後に次回作ですが、久しぶりに新作を準備中です。
タイトルも決まっていて、
”俺は魔王じゃねえ! ~転生董卓の悪名返上記~”
となる予定。
本作を書いてるうちに、董卓の視点でも当時の状況を描いてみたいと思ったからです。
ちなみに本作とは独立したお話(たぶん中編)になります。
ある程度、目途がついたら投稿しますので、気にかけておいてもらえると嬉しいです。
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